Vertical-Wheel は、縦向きに置いた大きな羽根をゆっくり回して液全体を動かすバイオリアクターです。単回使用の容器で揃っていて、実容量は60mL から 80L まであります。
一般的な撹拌槽は、底のほうに付いた小さな羽根を速く回します。Vertical-Wheel はその逆で、槽の断面いっぱいの羽根を低速で回します。
速く小さく回すか、ゆっくり大きく回すか
培養で撹拌が要るのは2つの理由からです。酸素と栄養を行き渡らせること、そして細胞や担体を沈ませないことです。
小さな羽根を速く回す方式では、羽根の先端付近で流れが速くなります。液を混ぜる力はそこから出ますが、同じ場所でせん断も強くなります。細胞は槽の中を巡るあいだに、その強い領域を何度も通ることになります。
大きな羽根を低速で回すと、局所的に速い場所が生まれにくくなります。同じだけ混ぜるために、速さではなく面積を使うという考え方です。PBS Biotech はこれを低せん断と均質性の両立として説明しています。
この差が効くのは、細胞そのものが製品である場合です。抗体をつくる培養なら細胞が多少傷んでも上清の抗体は回収できますが、細胞治療では細胞の状態がそのまま品質になります。iPS細胞を塊のまま浮遊させて増やす用途で名前が出てくるのは、この性質が理由です。
構造の特性は論文でも測られています。Vertical-Wheel の通気と流動を調べた報告が査読誌に出ていて、装置メーカーの資料だけに頼らずに挙動を確かめられる数少ない機種です。
スケールの幅とつなぎ方
容量の並びは、開発から製造までをひと続きに通せるように組まれています。
- PBS-3:実容量 1.8〜3.0L。工程開発や条件の振り分けに使う大きさです
- PBS-80:実容量 40〜80L。商業生産を想定した大きさです
小さいほうは 60mL から始まります。細胞治療では1ロットが小さいので、この下限の低さが実用上効きます。研究室で使った条件をそのまま上げていける、という売り方になります。
ただし、同じ形の羽根で相似形に大きくしても、スケールアップが自動的に成立するわけではありません。酸素移動と混合時間とせん断のどれを一定に保つかは、細胞と工程ごとに決める話です。形が揃っていることは前提を減らしますが、前提をゼロにはしません。
導入で確認したいこと
3つあります。
1つ目は、自分の細胞が浮遊で増えるかです。Vertical-Wheel は液の中で細胞や担体を漂わせる方式なので、接着依存性の細胞ではマイクロキャリアを使うことになります。担体の選定と剥離の工程が別途必要で、そこは装置を替えても消えません。
2つ目は、容器の供給とリードタイムです。単回使用の容器は専用品です。容器が来なければ製造は止まります。GMP製造に入れるなら、供給計画と代替手段を書面で確認しておくところです。
3つ目は、国内の保守体制です。PBS Biotech は米国の会社で、日本国内での据付・保守がどう手当てされるかは代理店によって変わります。適格性評価の立ち会いを誰が行うかも含めて、契約の前に決めておくほうが後が楽になります。
価格、機種ごとの具体的な酸素移動容量係数(kLa)、日本国内での導入実績は、公開情報からは分かりません。導入の検討では代理店に見積もりと仕様書を求めてください。
