細菌のゲノムから不要な領域を削る作業を、事前の知識に頼らず高速に回す手法 「SLIM(Stochastic Lineage-based Iterative Minimization)」 を報告したプレプリントが bioRxiv に公開された。抄録によれば、既存のゲノム最小化は事前情報に依存するために遅く、種ごとに専用で、しかも得られるのは単一の株に限られるため、ゲノムが大規模な削除にどう適応するかの多様性が見えなかったとされています。
削ると何がよくなるのか
微生物を物質生産に使うとき、ゲノムには目的に関係のない遺伝子が大量に残っています。それらを削ると、次のことが期待されます。
- 資源が生産に回る。使わないタンパク質を作らない分、アミノ酸とエネルギーが余ります
- 副生物が減る。不要な代謝経路がなくなれば、酢酸のようなオーバーフロー代謝の経路も減らせます
- 遺伝的に安定する。可動性遺伝因子(トランスポゾンなど)を削れば、長期培養での変異が減ります
- 予測しやすくなる。要素が少ないほど、モデルが合いやすくなります
3つ目は製造で効きます。細胞バンクの世代管理や、実生産規模での安定性の確認は、株がどれだけ変わりにくいかに依存します。
「1つの正解」を探さない
今回の手法で目を引くのは、単一の最小株を目指すのではなく、多数の系統を並行して削っていく構成です。どこを削れるかは、削り方の順序によって変わります。ある遺伝子は、別の遺伝子が残っていれば削れるが、両方は削れない——という関係があるからです。
多様な削り方を並べて得られるなら、目的に応じて選べます。増殖を優先する株、特定の代謝を残した株、といった具合です。微生物の宿主選択が、種の選択から株の選択へ細かくなる方向と言えます。
ただし、削った株が実際の生産で使えるかは別問題です。高密度培養での酸素供給やスケールアップで、削ったことによる頑健性の低下が出ることもありえます。
なお、これはプレプリントで査読を経ていません。削減率や対象種は抄録からは分かりません。
※ 本ページは公開情報(bioRxiv のプレプリント)をもとにしたProglenth編集部による整理です。プレプリントは査読を経ていません。手法・結果の詳細は一次情報をご確認ください。