Manufacturing Chemist が、固相抽出(SPE)の装置 「SPEedy」 を取り上げた。報道によれば、内容は次のとおりである。
- 特許取得済みのデバイスで、固相抽出のやり方を作り直すものと位置づけられている
- 外部の真空源を必要とせずに、制御された SPE の試料前処理を提供する
真空ポンプが要らない、という一点に見えるが、実際には流速を誰が決めるかという問題を扱っている。
真空マニホールドという方式の弱点
固相抽出は、試料を吸着剤に通し、目的成分を保持させて夾雑物を洗い流し、最後に溶出させる操作である。分析の前処理として広く使われる。
複数の検体を同時に処理する場合、真空マニホールドが使われることが多い。カートリッジを並べ、下から減圧して液を引く方式である。
この方式には、構造上の問題がある。
- 穴ごとに流速が違う。カートリッジの充填状態、試料の粘度、詰まりの程度で抵抗が変わり、同じ減圧をかけても流れる速さが揃わない
- 流速が途中で変わる。液面が下がるにつれて条件が変化する
- 止めどきが目視になる。乾いたかどうかを見て判断する
固相抽出では、接触時間が回収率を決める。速く通せば吸着しきらず、遅すぎれば拡散で広がる。流速が揃わないということは、検体ごとに違う条件で前処理していることを意味する。
前処理のばらつきは、後段では取り除けない
分析法の性能を評価するとき、真度と精度は測定全体について示す。前処理の変動は、そのまま精度の項に現れる。
- 分析法バリデーションでは、日内・日間の再現性を求められる。作業者が変われば前処理も変わる
- 検出限界・定量限界は、回収率とそのばらつきに縛られる。回収率が70%でも安定していれば補正できるが、50〜90%で振れると補正できない
- 分析法の頑健性の検討では、条件を意図的に振る。しかし流速が制御されていなければ、振れ幅自体が測れない
内標準物質を使えば一部は補正できる。ただし内標準が目的物と同じ挙動を示す保証は、条件が大きく振れる領域では弱くなる。
装置側で流速を規定するという設計は、この変動源を最初から作らないという考え方にあたる。
「外部の真空源が要らない」ことの副次的な意味
真空ポンプを外すと、装置構成の面でも変わる点がある。
- 設置場所を選ばない。配管や大型のポンプが不要になる
- クロスコンタミネーションの経路が減る。共通の減圧ラインを持たない構成であれば、検体間の経路が分かれる
- 適格性評価の対象が減る。周辺設備が少ないほど、確認すべき項目は少なくなる
二点目は、規制下の試験では無視できない。共通のラインを持つ機器では、交差汚染の防止をどう担保するかが常に論点になる。
前処理を装置に移す流れ
分析装置の性能が上がるほど、測定より前の工程が律速になる。この構図は分野を問わず現れる。
- 呼気の採取を装置で定量化する
- 分注・希釈を自動化する
- 固相抽出の流速を規定する
いずれも、装置の性能を上げるのではなく、人が介在する余地を減らす方向の設計である。アッセイの品質指標がスクリーニングで重視されるのと同じく、分離しにくい変動を実験の前に押さえるという発想にあたる。
なお、装置を入れれば前処理が標準化されるわけではない。カートリッジのロット差、溶媒の品質、試料の保存状態は残る。供給者管理と受入試験の枠組みで、消耗品側の管理も併せて要ることになる。
※ 本ページは公開情報(Manufacturing Chemist の報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。仕様・性能・適用範囲の詳細は一次情報および提供元の公式発表をご確認ください。本文中の解説は固相抽出および試料前処理一般の構造に関する説明であり、同製品の具体的な性能や検証内容を示すものではありません。