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細胞培養基礎知識・培養シリーズ細胞治療の製造装置と凍結・輸送3/8基本

セルストレーナーとは?40・70・100µmはどう選ぶのか

Proglenth 編集部公開 2026-08-03更新 2026-10-23約5分で読めます
セルストレーナーとは?40・70・100µmはどう選ぶのか

セルストレーナーとは、細胞を含む液を網に通して、細胞の塊や組織片を取り除く使い捨ての器具です。フローサイトメトリー細胞を一つずつ測定し、表面マーカーや性質を調べる手法です。細胞の種類・純度・活性の確認に使います。詳しく →や細胞の計数、播種の前に、細胞を1個ずつにそろえる準備として使います。

ただし、⁠網の目を細かくするほど安全になるとは限りません。 塊と一緒に細胞も網に残り、測りたかった細胞が減ることがあるからです。

この記事では、セルストレーナー細胞懸濁液を網目に通して細胞の塊や組織片を取り除き、ばらけた単一細胞に近い状態にそろえるためのフィルターです。詳しく →が取り除くもの、細かい目開きが安全とは言えない理由、目開きを選ぶ基準、細胞を失いやすい操作、発注の前に書き出すことを順に説明します。

この記事の要点
  • セルストレーナーとは⁠:液を網に通して塊や組織片を網の上に残し、1個ずつの細胞だけを下の管へ落とす器具です。
  • 細かいほど安全か⁠:細かい網は細胞も引っかけて減らし、大きい細胞ほど失いやすいため、下流の装置が許す範囲で粗い目開きから選びます。
  • 何で選ぶか⁠:通したい細胞の大きさ、下流の装置の流路の細さ、失ってよい細胞の量の3つで決めます。

1. セルストレーナーは、何を取り除く網なのか?

セルストレーナーは、細胞の塊、ほぐれ残った組織片、細胞の破片を網の上に残し、1個ずつの細胞を通す器具です。

組織を酵素と機械の力でほぐした液や、培養で増えた細胞の液には、これらが混ざっています。液から微生物を除く滅菌フィルターとは違い、セルストレーナーは細胞そのものを通すことを前提に作られています。網の穴の大きさを目開きと呼び、40・70・100µmが代表的です。

左に通す前の液があり、1個ずつの細胞、細胞の塊、組織片が混ざっている。矢印の先の網(セルストレーナー)では、塊と組織片が網の上に残り、1個ずつの細胞だけが網の穴(目開き)を通って下の管へ落ちる。下に、通した液を使う先として、フローサイトメーター・セルソーター、細胞数の計数、播種、シングルセルクローニングが書かれている
セルストレーナーの働き。塊と組織片は網の上に残り、1個ずつの細胞が下の管へ落ちる(概念図)
図をダウンロード(会員・無料)

塊を除くのは、下流の操作の多くが、細胞が1個ずつ離れていることを前提にしているからです。

  • 数える⁠:塊が細胞何個ぶんか判定できず、細胞数の測定で実際より少ない値が出ることがあります。
  • フローサイトメトリー⁠:細胞を1列に流して1個ずつ測る装置では、塊がノズルや流路を詰まらせ、測定そのものが止まります。
  • 播く⁠:塊のまま播くと、ウェルや場所ごとに細胞の密度がばらつきます。
  • シングルセルクローニング:1つのウェルに細胞を1個だけ入れるという前提を、塊が崩します。

ストレーナーの仕事は、液を澄ませることではなく、下流の装置が求める「1個ずつ」に近づけることです。

2. 重要:目開きは、細かいほど安全なのか?

細かい網は塊だけでなく細胞も引っかけるので、塊が減る代わりに、細胞の数と生き残る割合が下がることがあるからです。

目開きが細胞に近い大きさになるほど、細胞は変形しながら細い隙間を通ります。もともと弱っている細胞、大型の細胞、組織から取り出したばかりの細胞では、通したあとの生存率が落ちることがあります。

細胞が減る理由は、もう1つあります。

  • 網と器具に残る⁠:網に引っかかった細胞と、器具の壁に付いた細胞は回収できません。希少な細胞を扱うときは、この損失を無視できません。
  • 大きい細胞から先に減る⁠:大きい細胞ほど引っかかりやすいので、細かい網を通した集団は、元の液より小型の細胞に偏ることがあります。

数を失うだけで済まない場合があります。集団の中身が変わると、後で測る細胞の割合そのものが元の液と合わなくなります。

つまり、詰まりを避けたい一心で目開きを細かくすると、測りたかった細胞を失うおそれがあります。目開きは、下流の装置が許す範囲で、粗いものから選びます。

3. 40・70・100µmは、何を基準に選ぶのか?

目開きは、通したい細胞の大きさ、下流の装置の流路の細さ、失ってよい細胞の量の3つで決めます。

最初に見るのは細胞の大きさです。目開きが細胞より小さければ、細胞そのものが網に残ります。培養細胞の多くは10〜20µm程度で40µmの網を通りますが、大型の細胞や、細長く伸びた形の細胞では余裕を見ます。

次に、下流の装置の流路を見ます。米国コーネル大学のフローサイトメトリー施設の手引きは、セルソーターにかける直前に35または40µmの網で濾すことを決まりとし、ノズルは通常、細胞の3〜5倍の大きさのものを選ぶとしています。この施設の標準のノズルは100µmです。播いて培養するだけなら、粗い網で構いません。

目開き主に使う場面
30µm前後微小な塊まで除きたいとき
40µmフローサイトメトリー、セルソーティング、シングルセル解析の直前
70µm組織をほぐしたあとの最初の処理、リンパ球のような小型の細胞の調製
100µm大きな組織片を粗く落とす最初の段。あとで細かい網に通す前提

組織から細胞を取り出すときは、100µm、70µm、40µmの順に、粗い網から通します。いきなり40µmに通すと、大きな組織片が網を塞ぎ、液が流れなくなるからです。

目開きは1つに決めて終わりではなく、細胞と下流の装置の組み合わせで決まり、組織から始めるなら数種類を順に使います。

この記事に関連する製品ガイド
細胞解離・剥離酵素→フローサイトメーター→セルソーター→

4. 細胞を失いやすいのは、網を通すときのどの操作か

細胞を失いやすいのは、色で目開きを取り違えること、乾いた網に通すこと、ほぐれていない液を網で何とかしようとすることの3つです。

色で目開きを判断する

枠の色分けはメーカーごとに違い、40µmの枠が青のメーカーもあれば、紫のメーカーもあります。70µmも、白、橙、透明とメーカーで分かれます。

メーカーを替えた直後は、色ではなく、包装や製品名に書かれた目開きの数字を読みます。

POINT

同じ40µmでも、枠が青の製品と紫の製品があります。受け入れと使う前の確認は、色ではなく目開きの数字で行うと決めておくと、取り違えを防げます。

乾いた網に通す、押し込む

乾いた網には細胞が張り付きやすく、回収できる細胞が減ります。先にバッファか培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →で網を濡らします。STEMCELL Technologies が公開しているマウス脾臓の手順でも、70µmの網に培地2 mLを先に通してから使っています。通したあとに少量のバッファで網を洗うと残った細胞を回収できますが、液量が増えるので、このあとの濃縮と合わせて決めます。

すでにばらけた液は、重さで落ちる速さに任せます。ピストンで押し出すと、網を通るときに細胞にかかる力が強くなります。一方、脾臓のようにやわらかい組織は、同じ手順のとおり、培地を入れた皿の上でシリンジのピストンの平らな面で潰してほぐしてから、濡らした網に通します。組織をほぐす操作と、液を通す操作は分けて考えます。

網の上に塊が積もると、目開きが実質的に細かくなり、後半ほど細胞が通らなくなります。処理する液量に対して網が小さすぎないかも、先に見ておきます。

ほぐれていない液を網で補う

ストレーナーで塊が多く取れるとき、原因の多くは前の解離の工程にあります。網は塊を取り除く器具で、塊をほどく器具ではありません。網に残った塊の細胞は、そのまま回収の損失です。

通す前の液を顕微鏡で見て塊が目立つなら、網を細かくするより、酵素処理の時間や濃度、機械でほぐす強さを見直します。解離を強めすぎると今度は生存率が落ちるので、両側から条件を絞ります。酵素は細胞解離・剥離酵素の製品ページで比べられます。

このように、細胞の損失の多くは網の選び方より、網の前後の操作で決まります。目開きを変える前に、色の確認、網を濡らすこと、解離の条件を見直します。

5. 発注の前に、細胞の大きさと下流の装置を書き出す

最初に書き出すのは、通したい細胞の大きさと、下流の装置の流路やノズルの太さです。 この2つで、使える目開きの上限と下限が決まります。

  • 細胞の大きさ⁠:通したい細胞の直径と、いちばん大きい細胞の直径を書き出します。
  • 下流の装置⁠:セルソーターのノズルの太さや流路の細さと、液を受ける容器(50 mL管、15 mL管、フローサイトメーター用の管、チップ、ウェル)を書き出します。
  • 網の面積⁠:1回に通す液量と細胞数に対して、網の面積が足りるかを確かめます。
  • 欲しいもの⁠:通過した細胞が欲しいのか、網に残った塊(スフェロイド細胞を立体的に凝集させた塊。腫瘍を模した3D培養などに使う。詳しく →や胚様体など)が欲しいのかを決めます。
  • 表示⁠:滅菌済みの個包装か、DNAやRNAを分解する酵素(DNase・RNase)を含まない表示が要る用途かを確かめます。
  • 受け入れの取り決め⁠:組織から取るなら粗い順にそろえる目開きと、色ではなく目開きの数字で確かめる取り決めを決めます。

器具の形は、載せる容器と量で選びます。

  • 50 mL管に載せる標準型⁠:ほぐした組織を通常量で通すときに使います。
  • 小容量チューブ型⁠:1〜10 mLを、フローサイトメーター用の管や反応管に直接付けて濾します。
  • ピペットチップ型⁠:最大1 mLを、フローサイトメトリーの直前に最後の1回だけ濾します。
  • 裏返せる型⁠:網を裏返して、網の上に残った塊を回収します。

つまり、発注の前に要るのは目開きの数字だけではありません。細胞、装置、液量、欲しいものを書き出しておくと、目開きと形の候補を絞り込めます。製品ごとの目開きと形は、製品データベースのセルストレーナー・フィルターで比べられます。

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  • 4. 細胞を失いやすいのは、網を通すときのどの操作か
  • 5. 発注の前に、細胞の大きさと下流の装置を書き出す

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参考文献

  • Cornell Biotechnology Resource Center Flow Cytometry Facility, Sorting Rules(ソーティング直前の35または40µmの濾過、ノズルは細胞の3〜5倍)
  • STEMCELL Technologies, How to Prepare a Single-Cell Suspension from Mouse Spleen(70µmのストレーナーを先に濡らす、皿の上でピストンの平らな面を使って潰してほぐす手順)
  • Corning, Falcon Cell Strainers(40µm 青・70µm 白・100µm 黄)
  • Miltenyi Biotec, MACS SmartStrainers(30・70・100µm、リザーバー16 mL、濾過面積約7 cm²)
  • Biologix, Cell Strainers 40・70・100µm(40 紫・70 橙・100 緑)、SPL Life Sciences, Cell Strainer 40・70・100µm(40 青・70 透明・100 黄)
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この記事の目次
  1. 1. セルストレーナーは、何を取り除く網なのか?→
  2. 2. 重要:目開きは、細かいほど安全なのか?→
  3. 3. 40・70・100µmは、何を基準に選ぶのか?→
  4. 4. 細胞を失いやすいのは、網を通すときのどの操作か→
  5. 5. 発注の前に、細胞の大きさと下流の装置を書き出す→
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この記事の目次
  1. 1. セルストレーナーは、何を取り除く網なのか?→
  2. 2. 重要:目開きは、細かいほど安全なのか?→
  3. 3. 40・70・100µmは、何を基準に選ぶのか?→
  4. 4. 細胞を失いやすいのは、網を通すときのどの操作か→
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