ライブセルイメージングとは?終点の測定では分からない何が見えるのか

ライブセルイメージング生きたままの細胞を経時的に顕微鏡で撮影し、増殖・動き・形態の変化を観察する手法です。細胞を殺さずに動的な挙動を追えます。詳しく →とは、生きた細胞を培養した条件のまま同じ場所で撮り続け、増殖・形・動き・死ぬ時期を経過として見る手法です。薬の効き方を調べる研究や、細胞株の開発、細胞治療生きた細胞そのものを有効成分とする医薬。CAR-Tなどが代表。詳しく →の品質の確認で使われます。
ただし、経過が見えることと、画像だけで結論が出せることは別です。丸くなった細胞が死んだのか分裂中なのかは、画像だけでは決められないことがあり、撮影の光そのものが細胞を傷めることもあります。
何が見えて何が見えないのか、光の影響をどう抑えるのか、どの装置を選ぶのかを、実験を組む順に説明します。
- 終点の測定との違い:終点の測定は最後の数字だけを見ますが、ライブセルイメージングはそこまでの経過を見て、増殖が止まったのか死んだのかを分けます。
- 画像だけでは決められないこと:死の判定、正確な細胞数、分泌物の量です。色素や別の測定で補います。
- 撮影の光の影響:撮らないウェルを対照に置き、終点で比べると、光で細胞が傷んでいないかを確かめられます。
1. ライブセルイメージングは、終点の測定と何が違うのか?
終点の測定が最後の時点の数字だけを見るのに対し、ライブセルイメージングは一定の間隔で撮り続け、その数字に至った経過を見ます。薬を加えて48時間たったら、細胞の数が対照の半分になっていたとします。終点の測定では、細胞が死んだのか、増えるのを止めただけなのかを、この数字からは区別できません。

加えた直後に一気に死んで生き残りが増えた場合も、36時間までは何も起きずそこから死に始めた場合も、死なずに分裂が止まった場合も、48時間後の数字は同じになりえます。撮り続ければ、この3つを経過で分けられます。
2. 経過を見ると、終点の数字では見えない何が分かるのか?
分かるのは、増殖が始まった時期と止まった時期、形の変化、細胞の動き、死ぬ時期、そして一部の細胞だけの反応です。
増殖の推移を追えば、薬がいつ効き始めたかが分かります。形の変化なら、細胞が伸びて広がるのか、丸くなるのか。動きを追えば、傷をつけた培養面に細胞が入り込む速さ(遊走)も数値で比べられます。死ぬ時期は、死んだ細胞だけに入る色素を一緒に使えば、ウェルごとに時間を追って数えられます。
全体の平均では消えてしまう、一部の細胞だけの反応も拾えます。たとえば、ほとんどの細胞は効いているのに、一部の細胞だけが増え続けている様子は、平均の数字には出てきません。
細胞株の開発では、1個の細胞を分注した直後のウェルを撮像し、そこに細胞が1個だけ入っていた証拠を画像で残す使い方もあります。2025年の論文は、分注と全ウェルの撮像を組み合わせた1回のクローニングで、単一の細胞に由来する確率が99%を超えたと報告しています(論文の解説)。
3. 重要:画像だけでは、何が決められないのか?
画像だけでは、細胞が死んだかどうかの最終的な判定、正確な細胞数、細胞が外に出した物質の量は決められません。
細胞は分裂するときにも丸くなるため、明暗の差で細胞を見る位相差の画像だけでは、分裂中の細胞と死にかけの細胞を取り違えます。死の判定は、死んだ細胞だけが染まる色素を併用して確かめます。
培養面を細胞が覆う割合(コンフルエンシー培養容器の底面積に対して細胞が覆っている面積の割合を示す指標で、細胞の増殖状態や感染実験の条件を管理するために用いる。)は、色素なしで測れる扱いやすい指標です。ただし、細胞が重なって増える系では、面積が頭打ちになっても細胞数は増え続けるため、細胞数の代わりにはなりません。
| 知りたいこと | 向くか | 理由と補い方 |
|---|---|---|
| 増殖が止まったのか、死んだのか | 向く | 経過で分かれる。死んだ細胞の色素を併用する |
| いつ効き始めたか | 向く | 撮影間隔を現象の速さに合わせる |
| 一部の細胞だけの反応 | 向く | 平均に埋もれず、細胞ごとに追える |
| 細胞数の正確な値 | 向かない | 重なりや塊で数えにくい。セルカウンター培養液中の細胞の数や生存率(生死の割合)を自動で数え、培養の状態を把握するために使う装置です。詳しく →で測る |
| 分泌量や代謝物の量 | 向かない | 画像に出ない。抗体で測る方法(ELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →)や培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →の分析で測る |
| 多数の化合物の一次選別 | 向かない | 撮影と解析に時間がかかる。終点の測定で絞ってから使う |
細胞内の小器官の動きのような細かい現象は高い倍率が要り、多数のウェルを長く撮る装置では解像度が足りないことがあります。細胞数が要るときは細胞数と生存率の測定で確かめます。
4. 撮り続けると、なぜ撮影の光で細胞が傷むのか?
蛍光を光らせるための光が、細胞の中で活性酸素を作り、DNAやタンパク質を傷めるからです。
これが観察での光毒性光を吸収した薬剤が皮膚や眼で組織を傷つける、免疫を介さない毒性。光線過敏症のうち免疫が関与しない型を指す。詳しく →です。細胞が死ぬよりずっと前に、分裂が止まるという形で現れることもあります。2017年の総説は、光毒性は見過ごされやすく、目立たない影響でも実験の結論を変えうると指摘しています。
では、色素で染めていなければ安全なのか。そうとは限りません。別の2017年の研究では、染めていない培養細胞に青い光を当てて、その後の分裂を数えました。2〜3分の照射では差が出ず、4〜5分で増殖が大きく減りました。薬のせいで増殖が遅く見えたのではなく、撮影の光のせいだったという誤りは、条件を決めずに撮り始めると起きます。
抑え方は4つあります。
- 光の種類:光を当てる量の少ない位相差を主に使い、蛍光は必要な時点に絞ります。
- 撮影間隔:知りたい現象を捉えられる範囲で、間隔をできるだけ空けます。
- 露光:露光時間と光量を、画像を解析できる範囲で下げます。
- 対照:同じ条件で撮影しないウェルを置き、終点で撮影したウェルと比べます。
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- 5. 装置は、多くを長く見るか、少しを細かく見るかで選ぶ
- 6. 実験を組む前に、知りたい経過の時間の単位を決める
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ほかの会員向けの記事を見る →参考文献
- Icha J, Weber M, Waters JC, Norden C. Phototoxicity in live fluorescence microscopy, and how to avoid it. BioEssays. 2017;39(8):1700003.
- Laissue PP, Alghamdi RA, Tomancak P, Reynaud EG, Shroff H. Assessing phototoxicity in live fluorescence imaging. Nat Methods. 2017;14(7):657-661.
- Nonet GH, Scut E, Ogawa R, Tomic MT. Biotechnol Prog. 2025;41(4):e70012.(分注と全ウェル撮像によるモノクローナリティ産生細胞株が単一の細胞に由来していること。単クローン性。詳しく →の確率。サイト内の論文解説で内容を整理)
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