抗体医薬研究・非臨床安全性

非臨床の毒性試験・安全性薬理:反復投与毒性・臓器毒性・サイトカイン

2006年、ロンドンの臨床試験施設で健康な6人の志願者に TGN1412 という抗CD28抗体が初めて投与されました。動物試験では大きな問題が見えていなかった——にもかかわらず、投与から数時間のうちに全員が発熱・血圧低下・多臓器の障害へと崩れていきました。免疫が一斉に暴走し、信号物質が一気に放出される反応です。動物で安全に見えた量が、人ではまるで違うふるまいをした。その事実は、非臨床安全性評価ヒトへの初回投与前に、動物や試験管の実験で毒性や作用を調べる一連の評価のこと。という営みの根拠と限界を、同時に突きつけました。

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非臨床の毒性試験・安全性薬理:反復投与毒性・臓器毒性・サイトカイン

この事故が突きつけたのは、「人に初めて投与する前に、どこまで調べておけば事故を防げるのか」という問いでした。新しい薬を人に初めて投与する前には、動物や試験管の実験で「どのくらいの量から、どんな不都合が起きるか」をあらかじめ調べます。この一連の作業を非臨床安全性評価と呼びます。狙いはシンプルです。人での最初の投与量を安全側に決め、臨床試験で何を注意して観察すべきかを先取りしておく。ここでのつまずきは、そのまま人での事故や開発中止につながります。

その中身は大きく三層に分かれます。「どのくらいの量を繰り返し与えると臓器に害が出るか」を見る毒性試験、「心臓・脳・肺といった生命維持に直結する機能に急な悪影響が出ないか」を見る安全性薬理心血管・中枢神経・呼吸への急な影響を、臓器毒性とは別枠で見る評価(コア・バッテリー)。、そして遺伝子への傷(遺伝毒性化合物が遺伝子や染色体を傷つける性質。点突然変異や染色体損傷を含み、複数の試験で分担して調べる。)やがんのできやすさ(がん原性)などの特殊な試験です。基本の枠組みは、日米欧が合意した ICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。(医薬品規制調和国際会議)のガイドラインで共通化されています。

ただ、TGN1412初回ヒト投与でサイトカイン放出の重篤な反応を起こした抗CD28抗体で、MABEL普及の契機。 が示したように、同じ枠組みでも薬の作られ方(モダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。)が違えば、つまずく場所はかなり変わります。低分子と抗体では試験の設計思想が異なり、抗体・ADC・mRNA・AAV・核酸(siRNA二本鎖の短いRNAで、RISC(Ago2)を介して標的mRNAを分解する核酸医薬。ASOと製造基盤を共有する。/ASO)・細胞治療生きた細胞そのものを有効成分とする医薬。CAR-Tなどが代表。にはそれぞれ固有の心配ごとがあります。TGN1412 のサイトカイン放出は、モダリティ固有のリスクが枠組みの隙間から現れた一例でした。

この記事の要点
  • 非臨床安全性評価は、反復投与毒性・安全性薬理・遺伝毒性などを組み合わせ、人での初回投与量を安全側に定めます。
  • 心血管・CNS・呼吸のコア・バッテリーや種選択・免疫原性など、基本の枠組みはICHガイドラインで共通化されています。
  • 同じ枠組みでも、抗体・ADC・mRNA・AAV・核酸・細胞治療で際立つ固有懸念が変わり、固有試験を上乗せします。

繰り返し投与して、どの臓器がどこから傷むかを描く

新薬の開発チームがまず直面するのは、「この薬を臨床で使うように繰り返し与えたら、体のどこが最初に音を上げるのか」という問いです。薬は多くの場合、一度きりではなく繰り返し投与するからです。ここで実施するのが反復投与毒性試験薬を繰り返し与え、どの臓器がどの量から傷むか、回復するかを調べる中核の毒性試験。——薬を繰り返し与えたときにどの臓器がどの量から傷むかを調べ、その全体像を描く中核の試験です。

やり方は、想定する臨床の投与間隔・期間に見合った長さで動物に反復投与し、体重・血液・血液生化学・尿・臓器の重さ、さらに病理(顕微鏡で組織を見る)まで幅広く観察するというものです。見きわめたいのは三点。どの臓器が標的になるか(標的臓器)、どの量までなら有害な変化が見えないか(NOAEL無毒性量。毒性試験で有害な影響が認められなかった最大の用量。PDE算出の出発点になる。、No Observed Adverse Effect Level =無毒性量無毒性量。毒性試験で有害な影響が認められなかった最大の用量。PDE算出の出発点になる。)、そして害が出たときに回復するか。とりわけ NOAEL は人での初回投与量の起点にもなります。その換算の考え方は NOAELからHED換算・初回投与量へ で整理しています。

これらの毒性試験は、原則として GLP(Good Laboratory Practice =優良試験所基準)という品質の枠組みのもとで実施します。試験の計画・記録・生データの保存を厳格に管理し、規制当局が結果を信頼できるようにする仕組みです。試験期間の目安は、後の臨床試験の投与期間に対応づけて決めるのが基本で、全体の枠組みは ICH M3(R2)臨床試験を支える非臨床安全性試験の実施時期や内容の全体像を示すICHガイドライン。 が示しています。

投与期間の対応づけは、一つの目安として次のように整理されます(詳細は製品・地域・相談で変わりうるため、あくまで枠組みの理解として扱ってください)。

臨床での投与期間の目安反復投与毒性試験の期間の目安
単回〜2週間程度2週間〜1か月程度
数か月3か月程度
長期(慢性疾患など)6か月(げっ歯類)/最長9か月(非げっ歯類)程度

ただし、この M3(R2) の枠組みは主に低分子(合成医薬品)を念頭に置いたものです。抗体などのバイオ医薬品では、後で述べる ICH S6(R1)バイオ医薬品の非臨床安全性評価の考え方を示すICHガイドライン。種選択などの枠組みを定める。 が別途、種選択や試験デザインの考え方を補います。臓器の見取り図を描くこと自体はモダリティ共通ですが、期間や種の決め方は、扱う分子によって変わってきます。

臓器が傷むより先に、心臓・脳・肺が乱れないかを見る

反復投与毒性が「数週間〜数か月かけて臓器が傷むか」を見るのに対し、もっと即時的な危険もあります。薬を投与した直後に、心臓のリズムが乱れないか、意識や運動・体温といった中枢神経(CNS、Central Nervous System =脳・脊髄)のはたらきが乱れないか、呼吸が抑えられないか。生命に直結するこの三つ(心血管・中枢神経・呼吸)への急な影響を、臓器毒性とは別枠で確かめるのが安全性薬理です。この三つは「コア・バッテリー心血管・中枢神経・呼吸への急な影響を、臓器毒性とは別枠で見る評価(コア・バッテリー)。」と呼ばれ、初回の人への投与より前に評価しておくのが原則。枠組みは ICH S7A日米欧の規制当局が合意した、ヒト用医薬品の安全性薬理試験に関する国際的なガイドライン。 が定めています。

中でも歴史的に重視されてきたのが、心臓の「電気信号が元に戻るまでの時間」が延びるリスクです。これが延びると、まれに致死的な不整脈につながることがあります。その入口として定番とされるのが、心筋の再分極に関わる hERG というカリウムチャネル細胞膜に存在し、カリウムイオンの細胞内外への移動を制御することで心筋などの電気的活動を調節するタンパク質の通り道。(心臓の電気信号を整える通り道)を薬がふさがないかを試験管で調べる方法です。その延長で、動物で心電図のQT間隔が延びないかも確認します。この一連の考え方は ICH S7B医薬品のQT延長・心室再分極遅延を非臨床で評価する指針。hERG試験をin vitroの中核と位置づける。 が扱い、hERG心筋の再分極を担うカリウムチャネルの一種。薬が塞ぐとQT延長や不整脈につながるため早期に評価する。試験と安全マージンの読み方は hERGアッセイと安全マージン で詳しく述べています。

近年は、hERGだけを単独で見るのではなく、複数のイオンチャネル細胞膜に存在するタンパク質の孔で、ナトリウム・カリウム・カルシウムなどのイオンを選択的に透過させ、心筋や神経の電気信号を制御する。への作用を統合して不整脈リスクを予測する新しい枠組み(CiPAと呼ばれる考え方)や、E14/S7B の Q&A を通じた統合的な評価も進んでいます。ここでモダリティによる差が顔を出します。hERGは膜を透過する小さな分子がふさぎやすい通り道です。抗体や核酸のように大きく細胞内へ入りにくい分子では、hERGを直接ふさぐ心配は一般に低いと考えられます。そのため、抗体などのバイオ医薬品では、S7の評価を反復投与毒性試験の中に組み込んで観察する(心電図や呼吸・行動を毒性試験に併せて測る)設計がとられることがあります。ICH S6バイオ医薬品の非臨床安全性評価の考え方を定めた国際ガイドライン。標的が動物種間で保存されているかを重視する。(R1) の柔軟な考え方が、ここでも効いてきます。

POINT

安全性薬理のコア・バッテリー(心血管・CNS・呼吸)は、臓器毒性とは別に「機能への急な影響」を見るものです。低分子ではhERGを含む専用試験を組みますが、抗体・核酸など大きな分子ではhERG直接阻害のリスクが低く、毒性試験に評価を組み込む設計が選ばれることがあります。

「そもそもどの動物で試すか」で行き詰まる——抗体の最初の関門

低分子の毒性試験なら、げっ歯類(ラット・マウス)と非げっ歯類(イヌ・サルなど)の二種を使うのが一般的な出発点で、種選びで悩むことはあまりありません。ところが抗体医薬の開発では、試験を始める前の段階でつまずくことがあります。抗体は標的(人のタンパク質)にぴったり合うよう作られているため、動物では標的の形が少し違うだけで結合しないことがあるのです。結合しない動物にいくら投与しても、意味のある毒性は見えてきません。

だから抗体では、どの動物で試験するかの選択そのものが成否を分ける前提になります。ICH S6(R1) は、薬理学的に関連する種(pharmacologically relevant speciesヒトと同じ標的に同じように結合・作用する動物種で、抗体の毒性試験ではこれを選ぶ。 =人と同じ標的に、同じように結合・作用する動物)を選ぶことを求めます。抗体では、結果としてサル(カニクイザルなど)だけが関連種になる場面が珍しくありません。関連種が一種しかなければ一種で実施することもあり、逆に適切な関連種がまったくいなければ、人の標的を持つよう遺伝子改変した動物(トランスジェニック動物)や、動物用に作り直した代替抗体(サロゲート抗体適切な関連種がいないとき、動物用に作り直して評価に使う代替の抗体のこと。)で評価するといった工夫が要ります。

論点低分子の一般的な考え方抗体などバイオ医薬品抗体・タンパク質・核酸など生体由来の分子を利用して製造された医薬品の総称。(S6(R1))
種選択の基準げっ歯類+非げっ歯類の二種が出発点薬理学的に関連する種ヒトと同じ標的に同じように結合・作用する動物種で、抗体の毒性試験ではこれを選ぶ。を選ぶ
種の数原則二種関連種が一種なら一種でも可
関連種がいない場合通常は問題になりにくいトランスジェニック動物・サロゲート抗体で対応
免疫原性薬そのものが患者の免疫応答を誘発しやすい性質。凝集体や不純物、投与経路、患者背景などが要因になる。の影響一般に小さい動物が薬を「異物」とみなし抗体を作ると解釈が難しくなる

種選びを越えても、抗体にはもう一つの落とし穴があります。免疫原性(動物が投与された抗体を異物とみなし、それに対する抗体を作ってしまうこと)です。これが起きると薬が早く消え、曝露が保てず、毒性の解釈が濁ります。関連種の有無と免疫原性の扱いは、抗体の非臨床設計で最初に直面する、そして最も悩ましい前提です。

TGN1412 が残した教訓——免疫を動かす薬の落とし穴

冒頭の TGN1412 の事故に戻ると、あそこで起きていたのがサイトカイン放出でした。サイトカインは、免疫細胞どうしが連絡し合う信号物質です。免疫を活性化するタイプの薬では、これが短時間で大量に放出され、発熱・血圧低下・臓器障害へと進む激しい反応(サイトカイン放出、いわゆるサイトカインストーム免疫が短時間で信号物質を大量に放出し、発熱・血圧低下・臓器障害へ進む激しい反応。)が起こりえます。免疫を強くはたらかせる薬では、この全身反応や免疫系そのものへの影響が、臓器毒性とは別の重大リスクになる——TGN1412(抗CD28抗体初回ヒト投与でサイトカイン放出の重篤な反応を起こした抗CD28抗体で、MABEL普及の契機。)の事故は、その危険を痛烈に示しました。この教訓から、効果が強く種差のある生物学的製剤抗体など生き物由来の医薬品で、NOAEL起点の換算だけでは危ういことがある。では、毒性が出なかった量だけでなく、薬理が立ち上がり始める量(MABEL薬の作用がごくわずかに出始めると見込む用量で、抗体など高リスク薬の初回量設計に使う。)を起点に初回投与量を控える考え方が定着しています。詳しくは MABELと生物学的製剤の初回投与量 を参照してください。

手強いのは、動物ではこの反応を予測しきれないことです。人と動物で免疫細胞の反応性が違うため、動物で無事でも人で強く出ることがある。まさに TGN1412 で起きたことです。そこで、ヒトの血液や血液細胞を使った試験管でのサイトカイン放出免疫が短時間で信号物質を大量に放出し、発熱・血圧低下・臓器障害へ進む激しい反応。試験(in vitro cytokine release assay)を併用し、人での反応の立ち上がりを見積もるという補完がとられます。動物種選択の限界を人由来データで埋める発想です。

免疫を扱う薬では、この即時の放出反応に加えて、免疫系全体への影響(免疫抑制・免疫増強、あるいはアレルギー反応)も評価対象になります。臓器の病理だけでなく「免疫のふるまい」そのものを、人由来データも交えて見る必要があります。この論点は、免疫を再プログラムして戦わせる細胞治療(CAR-T など)でもとりわけ重くのしかかります。

遺伝子への傷——低分子では必須、抗体では原則不要

モダリティで様相が大きく変わる論点がもう一つあります。遺伝毒性(遺伝子やその配列を傷つける性質)の評価です。低分子では標準の必須試験群が決まっている一方、抗体などの大きな分子では通常のバッテリーがそのままは当てはまりません。

遺伝毒性は、薬が DNA を傷つけたり染色体を乱したりしないかを見る試験です。低分子では、標準の組み合わせ(細菌を使う復帰突然変異試験=エームス試験、ほ乳類細胞や動物での染色体異常・小核試験など)を実施するのが基本で、枠組みは ICH S2(R1) が定めます。がんのできやすさを見るがん原性試験も、長期に投与する低分子では重要な検討項目になります。

ここでモダリティ差が大きく出ます。抗体のような大きなタンパク質は、細胞の核に入り込んで DNA に直接くっつくとは考えにくいため、低分子向けの標準的な遺伝毒性バッテリーは通常は適用しません(ICH S6(R1) もその立場です)。一方で、核酸・遺伝子治療・細胞治療では、まったく別の切り口で「遺伝子への影響」を心配する必要が出てきます。整理すると、遺伝毒性は低分子では定型の必須項目、大きな分子では原則不要、しかし遺伝子を操作するモダリティでは別種の懸念に姿を変える——ということです。

モダリティが変わると、注意すべき一点が変わる

ここまでの共通枠組みを土台に、モダリティごとの固有懸念を並べると、「最も注意すべき一点」がそれぞれ大きく異なることが見えてきます。汎用の枠組みに固有試験を足す設計になる、というのが実務の姿です。以下は、それぞれで際立つ心配ごとと、それをどう見るかの整理です(表現はいずれも一つの目安で、実際の設計は製品・当局相談で決まります)。

モダリティ際立つ固有懸念見方の一例
抗体サイトカイン放出・免疫原性・関連種の有無関連種(多くはサル)で反復投与、ヒト血液でのサイトカイン放出試験を併用
ADC(抗体薬物複合体)つないだ薬(ペイロード)そのものの毒性抗体部分に加え、ペイロード由来のオフターゲット毒性・遊離ペイロードを評価
mRNA送達に使う脂質ナノ粒子(LNP)や自然免疫の刺激反復投与での炎症・肝反応、投与部位反応を観察
AAV(遺伝子治療ベクター)免疫反応(自然免疫・獲得免疫)と体内分布免疫応答、生体内分布(バイオディストリビューション)、長期の存続を評価
核酸(siRNA/ASO)肝毒性・腎(尿細管)への蓄積・配列依存の副作用肝・腎を標的臓器として重点観察、オフターゲット配列作用を検討
細胞治療腫瘍形成性・望まぬ組織への生着・持続的な免疫作用造腫瘍性、体内分布・生着、増殖の制御可能性を評価

表だけでは伝わりにくい点を、いくつか具体で補います。ADC(抗体薬物複合体)は、標的に運ぶ抗体に強力な薬(ペイロード)をつないだ薬です。非臨床では「抗体としての性質」と「つないだ薬の毒性」の両面を見なければなりません。血中でリンカーが切れて薬が離れると、標的でない場所で毒性が出うるからです。

核酸医薬(siRNA/ASO)は肝臓や腎臓に集まりやすく、これらが標的臓器になりやすいことが知られています。AAV や核酸のように体内をめぐって特定の臓器に分布する薬では、どこにどれだけ届き、どれだけ留まるかを測る生体内分布の評価が要になります。AAV 製造由来の不純物と肝毒性の関わりは AAV製造の不純物と肝毒性 でも扱っています。

細胞・遺伝子治療で固有かつ重いのが、腫瘍形成性(tumorigenicity =投与した細胞やその改変が、がん化・異常増殖につながらないか)です。遺伝子をゲノムに組み込むタイプでは、組み込み先しだいで細胞の増殖を乱す挿入変異のリスクもあり、長期にわたる観察が求められます。これら細胞・遺伝子治療の安全性は、主に低分子を念頭に置いた M3(R2) ではなく、ICH S12(遺伝子治療製品の生体内分布)や各地域の細胞・遺伝子治療ガイダンスが受け持ちます。汎用の枠組みはそのままに、際立つ一点に合わせた固有試験を上乗せする——これがモダリティ横断で見えてくる、非臨床安全性の設計の勘所です。

初回投与への橋を架けるまで

冒頭の TGN1412 に戻れば、あの事故が語るのは、非臨床安全性のどれか一つの試験だけでは全体像を保証できない、ということでした。反復投与毒性で標的臓器と無毒性量を描き(GLP・ICH M3(R2))、安全性薬理で心血管・CNS・呼吸への急な影響を別枠で押さえ(ICH S7、hERGを含む)、遺伝毒性(ICH S2(R1))などの特殊試験で別の切り口を足す。人由来のサイトカイン放出試験のように、動物では見えない部分を補う仕掛けも要ります。それらを突き合わせて、初めて人への投与量が安全側に見積もれます。

そのうえで、同じ枠組みでもモダリティで注意点は大きく変わります。抗体では、薬理学的に関連する種を選べるか、免疫原性やサイトカイン放出をどう見るか(ICH S6(R1))が最初の関門です。ADC はペイロードの毒性、mRNA は送達と自然免疫、AAV は免疫と体内分布、核酸は肝・腎への蓄積、細胞・遺伝子治療は腫瘍形成性と挿入変異——際立つ懸念はそれぞれ違います。

実務では、共通の枠組みを土台に、そのモダリティで最も注意すべき一点へ固有試験を上乗せしていきます。どの試験も単独では全体像を保証せず、複数の観点を突き合わせて安全側に判断する。非臨床安全性は、その積み重ねで初回投与への橋を架けます。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、抗体医薬に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。