培養
2026.09.11Repligen約7分

XCell ATF(Repligen)——蒸気滅菌をやめた灌流

Photo: oscabla / Unsplash

XCell ATF は、⁠灌流培養で細胞を培養槽に留めるための装置です。中空糸膜のモジュールに培養液を交互に押し引きし、細胞は戻して使用済みの液だけを抜きます。ATF は Alternating Tangential Flow の略で、この「交互」が名前の由来です。

Repligen がこの技術を手に入れたのは2014年でした。そこから普及するまでに、もう一段の変化が要りました。

単回使用版が出るまで、広がらなかった

初期の ATF はステンレス製でした。使うたびに分解して洗い、蒸気滅菌(SIP)して組み直す。灌流培養そのものに関心があっても、この運用が負担で見送る現場は多かったはずです。

2016年に Repligen が単回使用版を出して、ここが変わりました。同社によれば、ベータ評価で導入までの時間が8割以上短縮され、性能はステンレス版と同等だったとしています。培養槽の側もシングルユースが主流になっていた時期で、上流の流路だけステンレスが残っている状態を解消した形です。

2018年には Sartorius と組み、XCell の制御系を Biostat STR に統合した構成も出ています。装置単体ではなく、⁠培養槽と一緒に買えるようになったという意味です。

ATF と TFF、どちらで留めるか

細胞を留める方法には、もう一つ TFF があります。膜面に平行に一方向へ流す方式です。ATF と TFF の比較は灌流を検討するときに必ず通る議論になります。

ATF 側の主張は、⁠目詰まりしにくいことです。流れの向きが交互に入れ替わるため、膜面に溜まった細胞が剥がされます。長期の灌流で膜間差圧が上がりにくい、という説明です。

TFF 側の主張は、⁠構造が単純で大型化しやすいことです。ポンプで一方向に送るだけなので、規模を上げるときの設計が素直になります。

どちらが細胞にやさしいかは、条件によって結論が変わります。ATF はダイアフラムで押し引きするため、その動きが細胞にストレスを与えるという指摘があり、TFF のほうはポンプ通過時の剪断が問題になります。どちらの主張にも実験データがありますが、細胞株も膜も運転条件も違う比較が多く、⁠自社の細胞で比べるしかないというのが実際のところです。

もう一点、見落とされやすい違いがあります。ATF はダイアフラムを動かすために圧縮空気と真空を要し、その供給系が工場側に要る。単回使用版で流路の負担は消えましたが、⁠ユーティリティの要求は残ります⁠。既存の建屋へ後から入れるときは、ここが設置の可否を決めることがあります。

灌流を入れる、ということ

装置の選定より前に決まっているべきことがあります。⁠なぜ灌流にするのかです。

使い道は一つではありません。本培養を灌流で回して生産性を上げる、種培養だけ灌流で高密度にして本培養を短くする(シードトレイン強化)、流加培養の途中で培地を入れ替える。連続生産と工程強化の文脈では、これらは別の狙いです。

灌流を入れれば、⁠培地の消費量が跳ね上がります⁠。CSPR(細胞比灌流速度)をどこに置くかで、必要な培地の量が決まります。培地費が製造原価に効く品目では、ここが導入の可否を分けます。下流も変わります。連続的に出てくる液を受けるには、連続キャプチャーか、いったん溜めるタンクが要ります。

導入で確認したいこと

以下は一般的な確認事項で、当該製品の仕様を示すものではありません。

なお、価格と機種ごとの処理容量は、公開資料からは確認できません。

メーカー公式
Repligen
製品ページを見る ↗

本ページは各社の公開情報をもとに、Proglenth編集部が整理したものです。仕様・数値はメーカー公表値、発言は発表資料からの引用(英文は編集部訳)であり、本ページは販売・推奨を目的とするものではありません。導入の検討では必ず一次情報とメーカーへの確認を行ってください。編集の考え方は編集方針に記載しています。

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