分析・計測
2026.09.13Waters約7分

BioAccord(Waters)——質量分析をQCへ持ち込む

Photo: Vimal S / Unsplash

BioAccord は、⁠質量分析を品質管理の現場へ持ち込むことを狙った LC-MS システムです。構成は ACQUITY UPLC I-Class PLUS と ACQUITY RDa TOF MS。Waters は、これまで中央の MS 専門ラボにあった属性ベースの監視を、⁠MS の経験が浅い担当者でも扱える形にすることを掲げています。

装置の性能より、その設計思想のほうが検討の対象になります。

MAM は、複数の試験を1つに畳む

MAM(Multi-Attribute Method、多属性法)は、抗体をペプチドに切ってから LC-MS で測り、⁠複数の品質特性を1回の測定でまとめて見る方法です。

従来は、属性ごとに別の試験を回していました。糖鎖は HILIC、電荷異性体は icIEF か CEX、酸化や脱アミド化はペプチドマッピング。それぞれに装置と手順とバリデーションがあります。MAM はこれを1つに畳もうとします。多属性法(MAM)が注目されてきた理由は、この畳み込みにあります。

畳めば速くなります。ただし、⁠畳んだぶん1つの試験に依存することにもなります。その試験が止まれば、複数の属性がまとめて測れなくなる。ここは運用設計の話として残ります。

要点は「新規ピーク検出」

MAM が従来の試験と決定的に違うのは、⁠知らないものを見つけられるところです。

NPD(New Peak Detection)は、試験検体で検出されたピークを参照検体と比べ、新しく現れたピークや存在量が変わったピークを拾います。想定していた属性を測るだけでなく、⁠想定していなかった変化を検出する⁠。Waters は、この機能が予期しないピークを示しつつ偽陽性を抑えると説明しています。

ここが規制上の論点になります。出荷試験として使うなら、⁠新しいピークが出たときに何をするかを先に決めておく必要があります。閾値をどこに置くか、出たときに出荷を止めるのか、調査してから判断するのか。逸脱とCAPAの手順に、この判断を書き込んでおかないと、現場で止まります。

参照検体の管理も効いてきます。比較の基準になる検体が変われば、新規ピークの判定も変わるので、保管と更新の手順を先に決めておく必要があります。ロットをまたいで同じ基準で見続けられるかどうかが、この方法を長く使えるかを分けます。

もう一つ、畳むことで見えなくなるものがあります。MAM はペプチドに切ってから測るので、⁠切る前の分子の状態は見ていません⁠。凝集体やサイズバリアントは、切った時点で情報が消えます。SEC や CE-SDS を残す判断になるのは、この理由からです。MAM で全部をまかなえる、という説明を受けたときは、何を測っていないかを確認する価値があります。

QC ラボに置く、ということ

開発ラボの MS と、QC ラボの MS は要求が違います。

QC では、⁠誰が動かしても同じ結果が出ることが第一です。装置の調整に熟練が要るなら、そもそも置けません。BioAccord がコンパクトな構成で、操作を絞った設計になっているのは、この要求に合わせたものです。

記録の側も変わります。データの完全性の要求に沿って、誰がいつ何をしたかが監査証跡として残る必要があります。MS は生データが大きく、処理の過程も複雑なので、ここは軽くありません。

分析法移管も論点です。開発拠点で組んだ MAM を、製造拠点の QC ラボへ移す。装置が同じでも、担当者と環境が変われば結果は動きます。移管の計画を、通常の HPLC 法より慎重に組む必要があります。

導入で確認したいこと

以下は一般的な確認事項で、当該製品の仕様を示すものではありません。

なお、価格と装置の具体的な性能値は、公開資料からは確認できません。

メーカー公式
Waters
製品ページを見る ↗

本ページは各社の公開情報をもとに、Proglenth編集部が整理したものです。仕様・数値はメーカー公表値、発言は発表資料からの引用(英文は編集部訳)であり、本ページは販売・推奨を目的とするものではありません。導入の検討では必ず一次情報とメーカーへの確認を行ってください。編集の考え方は編集方針に記載しています。

この装置が属するカテゴリ
関連する解説記事
Newsletter

装置・試薬の新製品ニュースを、メールで

こうした装置の解説と、製造・分析・品質の記事を月数回お届けします。登録は無料で、いつでも解除できます。

登録によりプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

← 製品トピックの一覧へ