「エピソーム」とは?
染色体に組み込まれず核内に環状で残るDNA。AAVの導入遺伝子はこの形で発現する。
染色体に組み込まれず核内に環状で残るDNA。AAVの導入遺伝子はこの形で発現する。
エピソームとは、染色体に組み込まれないまま核内で環状の形を保つDNAのことです。AAVベクターで導入した遺伝子はこの形で発現しますが、細胞が分裂するたびに希釈されて薄まるという性質があるため、治療対象となる組織の増殖特性が長期効果を左右する重要な論点になります。
染色体に組み込まれたDNAは細胞分裂の際に複製されて娘細胞へ受け継がれるのに対し、エピソームはゲノムの複製機構に乗らないため、分裂のたびに細胞あたりのコピー数が薄まっていきます。この特性は裏表の関係で、ゲノムへの挿入変異リスクが相対的に低い一方で、分裂が活発な組織では発現が時間とともに減衰しやすいという課題をもたらします。AAVの遺伝子治療が肝臓・網膜・神経・筋肉など分裂の少ない組織を主な標的とする背景には、こうしたエピソームの性質があります。
肝細胞や神経細胞、骨格筋のように分裂の少ない組織では、エピソームが希釈されにくく、導入遺伝子の発現が年単位で続く可能性があります。一方、活発に分裂する組織にAAVを届けると、細胞分裂のたびにエピソームが分配で薄まり、発現は時間とともに落ちていきます。小児の場合は成長に伴って臓器の細胞数そのものが増えるため、大人と比べてこの希釈がとくに起きやすいと考えられています。なお、発現が減衰する背景には希釈のほかに、免疫応答による発現細胞の減少やプロモーターのエピジェネティックな沈黙化なども関わるとされています。
AAVのカプシドが細胞に入り核へ到達すると、一本鎖のゲノムがまず二本鎖化され、そこから環状のエピソームが形成されます。転写はこのエピソームを鋳型として立ち上がるため、投与からタンパク質が産生されるまでには一定の時間がかかります。こうした形成ステップを経て安定したエピソームができあがることが、分裂の少ない組織での長期発現維持につながります。
この定義はProglenth編集部が一般的・基礎的な内容として整理したものです。実際の管理基準・要件は製品・企業・各極の規制により異なります。 正確な運用は各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報をご確認ください。