4basebio と Genezen が提携を拡大した。発表によれば、内容は次のとおりである。
- 非独占の協業として、医薬品開発企業が 4basebio の 研究用(RUO)・High-Quality グレード・GMPグレードの hpDNA を、開発および臨床のプログラムで利用できるようにする
- 4basebio の合成DNA技術と、Genezen のウイルスベクターの開発・製造の知見を組み合わせ、遺伝子治療プログラムを初期開発から臨床・商用製造まで支える
- Genezen が、ウイルスベクター用途向けに開発された 4basebio の合成DNA へのアクセスを提供する
ウイルスベクターの製造で、プラスミドを合成DNAに置き換えるという方向の話である。
いま何がプラスミドを必要としているか
AAVの製造では、一般に3種類のプラスミド(導入遺伝子、rep/cap、ヘルパー)を細胞に同時導入する。レンチウイルスベクターでは4種類前後を使う。
これらのプラスミドDNAは、大腸菌で増やして精製する。ここに固有の負荷がある。
- 細菌由来の配列が入る。複製起点と抗生物質耐性遺伝子。最終製品に残存すれば残存DNAとして管理対象になる
- エンドトキシン。大腸菌由来である以上、除去が工程に必要になる
- 供給が詰まる。GMPグレードのプラスミド製造は受託の枠が限られ、リードタイムが長い
- トポロジーが揃わない。スーパーコイル、オープンサーキュラー、線状の比率が品質項目になる
つまりプラスミドは、それ自体が別の生物学的製造工程であり、その品質と供給がベクター製造の律速になりやすい。
合成DNAが外そうとしているもの
セルフリー、つまり細胞を使わずに酵素反応で作るDNAは、上の負荷のうちいくつかを構造的に外す。
- 必要な配列だけを作れる。複製起点や耐性遺伝子を含めない設計が可能になる
- 細菌を経ないため、エンドトキシンの負荷が原理的に小さい
- 増幅と精製の工程が変わる。発酵ではなく酵素反応と精製になる
閉端線状DNAやドギーボーンDNAといった形式が議論されてきたのは、この文脈である。両端を閉じることで、線状DNAが細胞内で分解されたり末端同士が連結したりするのを抑える設計になる。
一方で、置き換えれば済むという話でもない。
- 同じ量が得られるか。トランスフェクションの効率は、DNAの形状と純度に依存する
- 力価が同等か。ウイルスベクターの力価と、中空・充填粒子の比率が変わらないことを示す必要がある
- 同等性の評価。既に臨床段階にある製品で原材料を変えるのは、大きな変更にあたる
「3グレードを揃える」ことの実務的な意味
発表が RUO・High-Quality・GMP の3段階を明示している点は、開発の進み方に対応している。
- 探索段階では、多数の構築物を安く速く試したい。ここで GMP グレードは過剰
- 前臨床から初期臨床では、GMP には満たないが由来と製法が管理された材料が要る
- 臨床・商用では、原材料の品質としてフルの管理が要る
問題は、段階が上がるたびに材料が変わると、それまでのデータが繋がらないことである。同じ製法で品質等級だけを上げられるなら、初期のデータを後段へ持ち越しやすい。供給者管理の観点でも、供給者が変わらないことは負荷を下げる。
材料メーカーと受託製造の組み合わせ
材料を持つ企業と、ウイルスベクターの受託製造を持つ企業が組む形は、開発企業から見た窓口を1つにする。
その代わり、選択の自由度は下がる。特定の材料に工程を最適化すれば、後から材料を変えるのは難しくなる。作るか買うかの判断と同じく、依存の度合いをどこに置くかという問題になる。
なお、非独占の協業とされている点は、双方が他社とも組める形を残していることを意味する。この段階では、選択肢を1つ増やすという位置づけが妥当な読み方といえる。
※ 本ページは公開情報(両社の発表)をもとにしたProglenth編集部による整理です。協業の範囲・対象製品・提供条件の詳細は一次情報および両社の公式発表をご確認ください。本文中の解説は合成DNAとウイルスベクター製造一般の構造に関する説明であり、当該協業の具体的な内容や性能を示すものではありません。