マイナビニュース TECH+ の報道によれば、JFEテクノリサーチが8月27日、米 Sigray 製の3次元X線顕微鏡 「ApexHybrid-210」 を用いた非破壊解析技術を確立し、2026年8月から受託分析サービスの本格提供を開始したと発表した。同社は同装置を2026年1月に国内で初めて導入し、全固体電池や半導体パッケージを対象とした解析技術の構築を進めてきたとされる。
報道によれば、装置の構成は次のとおりである。
- 直交CTと、斜めから撮るラミノグラフィの2つのイメージングモードを1台に搭載
- 精密な角度制御によるラミノグラフィで、最大直径300mm・厚さ20mmの大面積試料を切断せずに観察可能
- ナノフォーカスX線源と高感度検出器の組み合わせにより、直交CTで空間分解能0.40μm(業界最高水準とされる)
「切らずに中を見る」が要求される場面
発表が挙げている対象は電池と半導体パッケージだが、内部構造を壊さずに見たいという要求そのものは、製造業に共通する。
破壊検査には避けられない性質がある。
- その個体は失われる。同じ試料で経時変化を追えない
- 切った面しか見えない。断面の選び方が結果を決める
- 切る操作が構造を変える。樹脂包埋や研磨で、空隙や界面が動く
3つ目は、空隙や層間剥離のように「隙間」を見たいときに効く。見たいものが、前処理で潰れるからである。
医薬品の側にある同種の対象
以下は当該サービスの対象として発表されたものではなく、非破壊の内部観察という手法が一般にどこで使われうるかの整理である。医薬品・バイオ医薬品の製造にも、内部構造が性能を決める対象は多い。
- 錠剤の内部。層構造、空隙率、割線周りの密度分布が崩壊と溶出に効く。難溶性薬物の製剤では、この不均一性が溶出のばらつきになる
- 凍結乾燥ケーキ。多孔構造の均一性が、復水時間と残留水分に関わる。凍結乾燥サイクルの設計を検証する材料になる
- オートインジェクターの組立。可動部の噛み合いと、容器閉塞性に関わる封止の状態
- 単回使用の部材。接合部や溶着部の内部欠陥
- プレフィルドシリンジ。ガラスと栓の接触状態、シリコーン層の分布
いずれも、切って見れば分かるが、切るとそのロットの評価に使えない。
分解能と試料サイズの交換
X線CTでは、分解能と視野は基本的にトレードオフの関係にある。細かく見るには試料を小さくし、検出器に近づける必要がある。
今回の装置が持つ2モードは、この交換の両端を1台でカバーする構成として説明されている。
- 直交CT:小さい試料を高分解能で。0.40μm という値はこちら側
- ラミノグラフィ:平たく大きい試料を、切らずに。分解能は譲る
平板状の試料は、回転させながら透過を取る通常のCTでは扱いにくい。長辺方向のX線経路が長くなりすぎるためである。斜めから撮るラミノグラフィは、その制約を回避する手法として使われる。
受託という形で使う意味
この種の装置を自前で持つのは、多くの企業にとって現実的でない。導入費だけでなく、撮り方と再構成の条件出しに経験が要る。
受託で使う場合の実務上の論点は、分析法としてどこまで扱うかにある。
- 開発段階の観察に留めるのか、規格に紐づく試験にするのか
- 後者なら、分析法の移管と頑健性の議論が要る
- 判定を伴うなら、GMP 上の位置づけと記録の管理が要る
多くの場合、まず工程開発での原因究明に使い、そこで得た知見を工程内管理で回せる簡便な指標に翻訳する、という順序になる。重い測定を規格試験に据えるのは、その後の判断である。
※ 本ページは公開情報(マイナビニュース TECH+ の報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。装置仕様・サービス内容・対応範囲の詳細は一次情報および同社の公式発表をご確認ください。本文中の医薬品分野への言及は非破壊内部観察一般の用途に関する説明であり、当該サービスの対象や性能を示すものではありません。