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超低温フリーザー(-80℃ ULT)

超低温フリーザー(ULT)は、設定温度-80℃前後(おおむね-86℃〜-50℃で可変)でサンプルを保管する保冷設備です。原薬(DS)の凍結保管、セルバンクや試薬の保存、mRNA/LNP・ワクチンの保管など、長期保管と日常の出し入れを両立させたい用途で使われます。冷凍機の冷却能力に頼るため、温度均一性、ドア開閉後の回復時間、バックアップ、温度モニタリングが運用上の要点になります。

-80℃保管原薬DS凍結VIP真空断熱温度モニタリング

用途・特徴

超低温フリーザーは、-80℃前後の温度帯で生体試料や原薬を保管するために使われます。多くの機種は単段ではなく二段(カスケード)圧縮で-86℃級まで到達し、設定温度を-50℃〜-86℃の範囲で調整できます。日常的に庫内へアクセスする保管庫であるため、棚位置による温度差(温度均一性)と、ドアを開けた後に設定温度へ戻るまでの回復時間が、実際の保管品質を左右します。

近年はVIP(真空断熱パネル)で壁を薄くして庫内容量を確保しつつ断熱性能を高めた機種や、可変速圧縮機・自然冷媒(炭化水素系など)を採用して消費電力を抑えた省エネ機が主流になっています。停電や圧縮機故障に備えて、CO2またはLN2による緊急バックアップ、独立アラーム、温度モニタリング・記録(マッピングを含む)を組み合わせて運用するのが一般的です。

Point
  • 設定温度-80℃前後(おおむね-86℃〜-50℃で可変)で保管する
  • 棚位置の温度均一性と、ドア開閉後の回復時間が保管品質に直結する
  • VIP真空断熱で壁を薄くし、庫内容量と断熱性能を両立させる機種が多い
  • 停電・故障時はCO2またはLN2バックアップで温度上昇を抑える
  • 温度モニタリング、独立アラーム、温度マッピングが運用の前提
  • 可変速圧縮機・自然冷媒の採用で消費電力と発熱(HVAC負荷)を抑える
  • 原薬DS、セルバンク、試薬、mRNA/LNP・ワクチンなど保管対象が幅広い
  • GMP保管では校正、バリデーション、記録・監査証跡が求められる

使用方法

基本的には、保管対象を所定の容器に分注・ラベリングし、保管位置を記録したうえで-80℃級のフリーザーへ収納し、温度を継続的に監視します。

1設置・据付(放熱スペース・電源・室温条件を確認)
2設定温度まで予冷し、安定を確認する
3サンプルを容器に分注・ラベリングする
4ラック・ボックスに収納し保管位置を記録する
5温度モニタリングとアラームを設定する
6出し入れは短時間で行い回復を待つ
7温度ログ・逸脱・アラーム履歴を記録する
8定期的に温度マッピング・校正を実施する
9バックアップ(CO2/LN2)の作動を点検する
10霜・コンデンサ清掃などの保守を行う
実際の運用条件は、保管対象、設定温度、保管本数、開閉頻度、GMP対応の要否、バックアップ方式、温度モニタリング、設置環境(室温・換気・電源容量)によって変わります。設置時は背面・側面の放熱スペースと、外気温が高い環境での性能低下に注意します。

-80℃ 超低温フリーザー と 液体窒素保存(-150℃以下)の違いは?

同じ凍結保管でも、温度帯と運用が大きく異なるため、対象と保管期間で使い分けます。

結論

生細胞を長期に安定保存するなら液体窒素保存(-150℃以下)が基本です。一方、原薬DSや試薬、mRNA/LNP・ワクチンなど-80℃帯で十分な対象や、日常的に出し入れする保管には超低温フリーザーが適します。保管対象と保管期間で使い分けるのが実務的です。

保管温度

気相で-150℃以下、液相で約-196℃

-80℃前後(おおむね-86℃〜-50℃で可変)

冷却方式

液体窒素(気相・液相)

機械式冷凍機(多くは二段カスケード)

細胞の長期保存

生細胞の長期保存に向く(ガラス転移点以下)

長期の生細胞保存には不向き、保管期間に注意

主な対象

セルバンク、細胞治療製品、ウイルスシード

原薬DS、試薬、mRNA/LNP、ワクチン、サンプル

日常の出し入れ

酸欠対策・専用容器が必要で手間がかかる

扉の開閉で日常的にアクセスしやすい

ランニング

LN2供給・液面管理・酸欠対策が必要

電力・発熱(HVAC)・保守が中心

停電・故障時

LN2が保持されれば温度を維持しやすい

バックアップ(CO2/LN2)と早期復旧が必要

設置・安全

換気・酸素濃度計など安全対策が必須

放熱スペースと電源容量の確保が中心

主な方式・タイプ

方式・タイプ内容向く用途
縦型(アップライト)前面扉で棚にアクセスする据置型。設置面積あたりの収納が多いラボ・GMP保管、ボックス・ラック運用
横型(チェスト)上扉で冷気が逃げにくく温度安定性に優れる開閉頻度が低い長期保管、温度安定性重視
VIP真空断熱搭載真空断熱パネルで壁を薄くし庫内容量と断熱を両立限られた設置面積で容量を確保したい場合
二系統冷却(独立2台分)独立した冷凍機を二重化し片系故障でも温度を保つ重要サンプル、停止リスクを抑えたい用途
自然冷媒・省エネ機炭化水素系冷媒・可変速圧縮機で消費電力と発熱を低減電力・HVAC負荷を抑えたい施設、多台数運用
小型・卓上型少量保管向けのコンパクト機個別プロジェクト、限定数のサンプル保管
GMP対応型校正、温度マッピング、記録・監査証跡に対応治験・商用GMP保管、品質管理

バックアップ・温度モニタリングの考え方

項目内容
CO2バックアップ停電・故障時に液化CO2を噴射し庫内温度の上昇を抑える。CO2ボンベの供給・残量管理が前提
LN2バックアップ液体窒素を噴射して温度を保持する方式。LN2供給設備と酸欠対策が必要
独立アラーム本体制御とは別系統で温度逸脱・停電・扉開放を検知し通報する
温度モニタリング校正済みプローブで連続記録し、しきい値超過を通報・記録する
温度マッピング庫内の温度分布を実測し、保管に使える範囲(許容棚位置)を把握する
緊急時の運用予備フリーザーへの移管手順、発電機、優先復旧の体制をあらかじめ定める

選定ポイント

設定温度範囲-86℃級まで到達し、-50℃〜-86℃で調整できるか
温度均一性棚位置による温度差が保管要件の許容範囲に収まるか
回復時間ドア開閉後に設定温度へ戻るまでの時間が短いか
庫内容量・形状保管本数・ボックス数・ラックに合うサイズか、縦型/横型か
断熱・設置面積VIP断熱で壁が薄く、設置面積あたりの容量が確保できるか
バックアップCO2またはLN2バックアップ、二系統冷却に対応するか
アラーム温度逸脱、停電、扉開放、フィルタ詰まりを検知・通報できるか
温度モニタリング外部記録システムとの接点出力・通信、連続記録に対応するか
省エネ・冷媒自然冷媒・可変速圧縮機で消費電力と発熱が抑えられているか
設置環境放熱スペース、電源容量、外気温・換気の条件を満たすか
保守・サポートコンデンサ清掃、ガスケット交換、サービス体制が確保できるか
GMP対応校正、温度マッピング、IQ/OQ、記録・監査証跡に対応するか

使用される工程

超低温フリーザーは、原薬・試薬・サンプルなどを-80℃帯で保管する工程で広く使われます。

原薬(DS)凍結保管

精製後の原薬を凍結状態で保管し、製剤化までの中間保管に使われる。

主な用途
  • DS保管
  • 中間保管

中間体・プロセスサンプル保管

工程中間体やプロセス開発のサンプルを凍結保管する。

主な用途
  • 中間体
  • 工程サンプル

セルバンク・試薬保管

短期保管のセルバンクや、酵素・タンパク質などの試薬保管に使われる。

主な用途
  • 試薬保管
  • 短期セルバンク

原材料・標準品保管

凍結が必要な原材料、参照標準品、対照サンプルの保管に使われる。

主な用途
  • 原材料
  • 標準品

mRNA/LNP・ワクチン保管

mRNA原薬やLNP製剤、ワクチンの-80℃帯での保管に使われる。

主な用途
  • mRNA原薬
  • LNP・ワクチン

品質管理・分析サンプル保管

安定性試験や品質試験の検体、保存サンプルの保管に使われる。

主な用途
  • 安定性検体
  • 保存サンプル

バイオバンク・検体保管

臨床検体や生体試料の-80℃帯でのバイオバンク保管に使われる。

主な用途
  • 臨床検体
  • 生体試料

GMP保管・出荷前保管

GMP管理下での原薬・製剤の保管、出荷前の温度管理保管に使われる。

主な用途
  • GMP保管
  • 温度管理

使用されるモダリティー

超低温フリーザーは、原薬や原材料を-80℃帯で保管する幅広いモダリティーで使われます。

抗体医薬
関連度
原薬DS凍結試薬保管
精製後の原薬や工程試薬の凍結保管に使われる。
mRNA・LNP
関連度
mRNA原薬LNP製剤
mRNA原薬やLNP製剤の-80℃帯保管に使われる。
ワクチン
関連度
原薬バルク・製剤
ワクチン原薬・製剤の低温保管に使われる。
細胞治療
関連度中〜高
試薬保管短期保管
長期保存は極低温が中心だが、試薬や中間サンプルの保管で使われる。
遺伝子治療
関連度中〜高
プラスミド中間体・試薬
プラスミドや工程中間体・試薬の凍結保管に使われる。
Fc融合・組換えタンパク質
関連度中〜高
原薬DS標準品
原薬や参照標準品の凍結保管に使われる。
微生物発酵
関連度
菌株関連試薬中間体
発酵関連の試薬や中間体サンプルの保管で使われる。

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