処方設計

添加剤・安定化剤(製剤用エクシピエント)

製剤用添加剤(エクシピエント)は、原薬であるタンパク質や核酸そのものは変えずに、保存・輸送・投与の過程で品質を保つために処方へ加える成分です。糖・アミノ酸・緩衝剤・張度調整剤などを組み合わせ、凝集や分解、界面への吸着、凍結乾燥や凍結融解によるストレスから原薬を守ります。バイオ医薬では、添加剤の純度とグレード選定が製品品質に直結するため、研究用ではなく製剤用の高純度GMPグレードを使うことが前提になります。

処方設計凝集抑制凍結乾燥保護張度・pH調整
分類
処方設計
主な用途
処方設計 / 凝集抑制 / 凍結乾燥保護 / 張度・pH調整
関連モダリティ
抗体医薬 / 二重特異性抗体 / ADC / Fc融合・組換えタンパク質 / ワクチン / mRNA-LNP / 細胞治療
代表メーカー
Merck / MilliporeSigma・Pfanstiehl・Roquette・BASF ほか計10社
関連キーワード
製剤 / フォーミュレーション / 凍結乾燥 / 凝集 / 安定性試験 / 抗体医薬

用途・特徴

タンパク質医薬は、低濃度域での界面吸着、撹拌や輸送時のせん断、凍結融解、長期保存中の加水分解や脱アミド、酸化など、さまざまな経路で品質が変わります。添加剤はこれらの経路ごとに役割が分かれており、糖(スクロース/トレハロース)は凍結乾燥や凍結融解時の保護、アミノ酸(アルギニン/ヒスチジン/グリシン)は凝集抑制やpH緩衝、緩衝剤はpHの安定化、マンニトールやグリシンは凍結乾燥のケーキ構造を支えるバルク剤として使い分けます。

添加剤は処方中で量も多く、原薬に直接触れる成分です。エンドトキシンや金属イオン、微粒子などの不純物は、それ自体がタンパク質の凝集や酸化のきっかけになり、最終製品の安全性にも影響します。そのため、複数の薬局方に適合する高純度GMPグレード(multicompendial)を選び、エンドトキシンや金属、微粒子のスペックまで確認することが実務上の出発点になります。

なお、界面活性剤(ポリソルベート20/80、ポロキサマー188など)も主要な安定化剤ですが、酸化分解や品質管理の観点が他の添加剤と大きく異なるため、本ページでは扱わず別ページで整理しています。

Point
  • 原薬は変えず、保存・輸送・投与の過程で品質を保つために加える成分
  • 糖は凍結乾燥・凍結融解時の保護に使われる(スクロース/トレハロース)
  • アミノ酸は凝集抑制やpH緩衝に使われる(アルギニン/ヒスチジン/グリシン)
  • マンニトール・グリシンは凍結乾燥のバルク(ケーキ形成)剤に使われる
  • 張度調整剤は注射剤の浸透圧を血漿に合わせるために使う
  • エンドトキシン・金属・微粒子はタンパク質の凝集・酸化のきっかけになる
  • 研究グレードではなく製剤用GMP(multicompendial)グレードが前提
  • 界面活性剤は観点が異なるため別ページで扱う

使用方法

添加剤の選定は、原薬の不安定性経路を見極めてから、役割ごとに成分とグレードを決めていく流れになります。一般的な処方検討の進め方を整理します。

1原薬の不安定性経路を把握する
2目標とする剤形・投与経路を決める
3緩衝剤を選びpH範囲を設定する
4安定化剤(糖・アミノ酸)を選ぶ
5張度調整剤で浸透圧を合わせる
6凍結乾燥ならバルク剤を加える
7添加剤のグレード・スペックを確認する
8強制劣化・安定性試験で組成を検証する
9凝集・分解・含量を分析で評価する
10処方を確定し供給・規格を固める
実際の組成や濃度は、原薬の濃度・剤形(液剤か凍結乾燥か)・投与経路・保存条件・分析データによって変わります。ここでの順序は一般的な考え方の整理です。

掲載情報の確認日:2026年7月(メーカー公開情報をもとに編集部が確認。最新・正確な仕様は各社公式をご確認ください)