クリーンルームの清浄度(グレードA〜D)とは?粒子の数が限度内なら、清浄と言えるのか

クリーンルーム空気中の塵埃・微生物を規定レベル以下に管理した、医薬品・細胞製品の製造に用いる専用室。詳しく →の清浄度(グレードA充填点周辺など無菌操作の中心となる最高清浄度区域。作業中も連続監視される。詳しく →〜D)とは、無菌の薬を作る工場で、空気中の粒子や微生物が製品に入るのを防ぐために、どの作業をどれだけきれいな空気の中で行うかを決める物差しです。部屋を設計する人、作業の場所を決める製造や品質保証の担当者、モニタリングの結果を査察で説明する人の仕事に関わります。
ただし、粒子の数が限度内というだけでは、清浄とは言えません。同じグレードでも人が作業しているかどうかで限度が変わり、微生物は粒子とは別に測って判定します。
この記事では、グレードが何を守るのか、ISOクラスとの違い、限度が2つある理由、微生物の限度を順に説明します。後半では、作業ごとの割り付け、分類とモニタリング、自分の工程で決める順番を取り上げます。
- グレードA〜Dとは:無菌の薬を作る区域を、空気中の粒子と微生物の上限で4段に分けた区分です。製品や滅菌済みの容器がむき出しになる作業ほど、高いグレードを当てます。
- ISOクラスとの違い:ISOクラスは粒子の数だけで決める区分です。グレードは、その数値を人のいない非稼働時と作業中の稼働中に分けて当て、微生物の限度を加えています。
- 粒子が限度内なら清浄か:それだけでは言えません。粒子の計数器は菌とほかの粒子を区別しないため、菌は別に測ります。グレードAでは、1つでも発育すれば調査の対象です。
1. クリーンルームのグレードは、何を守るために要るのか
グレードは、無菌の薬を作る途中で粒子や微生物が製品に入らないよう、どの作業をどれだけきれいな空気の中で行うかを決める区分です。 注射剤のように体に直接入る薬では、容器に詰める途中で菌が入れば、その製品は無菌ではなくなります。
クリーンルームとは、フィルターを通した空気を送り込み、空気中の浮遊粒子と微生物を決めた水準以下に保つよう管理した部屋です。ふだんの部屋の掃除と違い、きれいさを数えて確かめ、記録に残します。
無菌医薬品の製造を扱う欧州のGMPの附属書、EU GMP Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく →(2022年改訂)は、この水準を次の4つのグレードで定めています(4.4)。
- グレードA:無菌充填の区域、ゴム栓を充填機へ送る容器(ホッパー)、開いた一次容器(薬に直接触れる容器)、無菌接続チューブや容器を無菌状態を保ちながら接続する操作で、専用の溶着装置などを用いて行う。詳しく →のような、高リスクの作業を行う重要区域です。
- グレードB:アイソレーター外気と隔てた無菌の作業空間をつくり、その中で無菌操作を行う装置です。RABSも作業域を囲うバリアの一種です。詳しく →(外と切り離した密閉の作業箱)を使わない場合に、グレードAを囲む背景の部屋です。
- グレードCとD:無菌操作外部から微生物を入れずに工程を進める操作。最終滅菌できない細胞治療では全工程で無菌性を維持する。詳しく →(滅菌済みの部材を無菌の環境で組み立てる作り方)で作る製品の重要度の低い工程や、アイソレーターの背景に使う部屋です。最後に容器ごと滅菌する製品の調製と充填にも使います。
並べると、製品がむき出しになる作業に近いほど、高いグレードが当たります。

グレードを使うのは、工場を設計するとき(どの部屋をどのグレードにするか)、作業の場所を決めるとき(その作業で製品がむき出しになるか)、モニタリングの結果を読むとき(測った数をどの限度と照らすか)です。
このように、グレードは部屋の格付けではなく、作業ごとに求めるきれいさの段階です。では、装置の仕様書でよく見る「ISOクラス5」とは、何が違うのか。
2. グレードとISOクラスは、何が違うのか
ISOクラスは空気中の粒子の数だけで決める区分で、グレードは、その数値を部屋の状態ごとに当て、微生物の限度を加えたものです。 同じグレードでも、状態によって対応するISOクラスが変わります。
ISO 14644-1:2015 は、クリーンルームの空気を粒子の濃度で区分する国際規格です。0.1〜5µmの粒径ごとに1 m³あたりの上限個数を定め、ISOクラス1が最も清浄、クラス9が最も緩い区分で、微生物は扱いません。
下の表のISOクラスは、Annex 1 の表1にある0.5µmの限度から対応させたものです。表1そのものに、ISOクラスの欄はありません。
| グレード | ISOクラス(非稼働時/稼働中) | 0.5µm以上の粒子 個/m³(非稼働時/稼働中) |
|---|---|---|
| A | ISO 5 / ISO 5 | 3,520 / 3,520 |
| B | ISO 5 / ISO 7 | 3,520 / 352,000 |
| C | ISO 7 / ISO 8 | 352,000 / 3,520,000 |
| D | ISO 8 / 製造業者が設定 | 3,520,000 / 製造業者が設定 |
つまり、ISOクラスだけで示された施設や装置の数字を使うときは、どの状態で測ったか、微生物を別に測っているかを確かめる必要があります(詳しくはグレードAはISOクラス5と同じ?)。では、表のグレードBで、2つの値が100倍も違うのはなぜか。
3. なぜ同じグレードに、非稼働時と稼働中の2つの限度があるのか
人と装置が動くと粒子が出るため、Annex 1 は、人のいない非稼働時と作業中の稼働中の両方に限度を置き、両方で分類するよう求めています(4.29)。 分類とは、部屋がそのグレードを満たすかを、粒子を測って確かめる作業です。
Annex 1 は、2つの状態を次のように定義しています(4.29)。
- 非稼働時(at rest):空調を含む設備の据え付けが終わり、主な製造装置も据え付けてあるが動かしておらず、人がいない状態です。
- 稼働中(in operation):装置が決めた運転のしかたで動き、最大人数の作業者が日常の作業を行っているか、模擬している状態です。
ISO 14644-1 の非稼働時は、装置を合意した方法で動かした状態で、Annex 1 の定義と少し違います。そのため、分類の報告を読むときは、どちらの定義で、何を動かし、何人で測ったかを確かめます。
グレードBは、非稼働時はグレードAと同じ3,520個/m³ですが、作業者が動く稼働中は、その100倍の352,000個/m³までを許します。グレードDの稼働中の限度は前もって決まっておらず、製造業者がリスク評価と日常のデータから設定します。
非稼働時の限度は、作業後の片付けと清掃のあと、適格性評価で決めたクリーンアップ期間(指針値は20分未満)のうちに達成します(4.29)。
グレードAだけ、稼働中も限度が変わらない理由
グレードAが稼働中も同じ限度を保てるのは、作業位置を、向きのそろった清浄な空気の流れ(一方向気流)で守るからです。 フィルターを通した空気が製品の上を通って製品から離れる向きに流れ、人や装置から出た粒子を製品から遠ざけます。
Annex 1 は、一方向気流がグレードAの全域で保たれることを示すよう求めています(4.4)。作業位置での風速の指針値は0.36〜0.54 m/s です。汚染管理戦略人・設備・原材料・環境など汚染の全経路を一枚に束ね、抑え込みの有効性を継続評価する設計図。詳しく →(CCS人・設備・環境・工程の汚染経路を一望し、管理策全体でリスクを許容水準まで下げていることを示す枠組み。、工場全体で汚染をどう防ぐかと、その根拠をまとめた文書)で科学的な根拠を示せば、別の値もとれます(4.30)。
つまり、限度は「グレード」と「状態」の組で決まり、グレードAの値は、気流の守りがあって初めて稼働中も成り立ちます。では、粒子の数がこの限度内なら、菌もいないと言えるのか。
4. 粒子の数が限度内なら、菌もいないと言えるのか
言えません。粒子の計数器は生きた菌とほかの粒子を区別しないため、Annex 1 は、微生物を粒子とは別に測り、グレードごとの限度で判定するよう求めています。
微生物は、採り方を変えて次の4つで測ります(表6)。数える単位の CFU(colony forming unit培養した際に1つのコロニー(集落)を形成する微生物の単位で、生菌数を表す際に用いられる。詳しく →、集落形成単位)は、培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →の上で育った菌の集まりの数です。
- 浮遊菌空気を一定量吸引して培地平板に当て、空気中の微生物数を測る指標。詳しく →:エアサンプラーで一定量の空気を吸い込み、培地に当てて数えます(CFU/m³)。
- 落下菌開放平板に自然沈降した微生物を測る環境モニタリングの指標。詳しく →:直径90 mmの培地を開けて置き、落ちてくる菌を受けます(CFU/4時間)。グレードAとBでは作業の間ずっと置き、最長4時間で替えます。
- 表面付着菌表面をぬぐう、または押し当てて測る、器具や表面に付いた微生物。詳しく →:直径55 mmの接触平板を、装置や部屋、衣服の表面に押し当てます(CFU/枚)。
- 手袋:作業者が両手の5本指を培地に押し当てます(CFU/手袋)。
空気、表面、人という菌の入り口を、それぞれ別に見るための採り方です。限度は、グレードが下がるほど緩くなります。
- グレードA:どの採り方でも「発育なし(no growth)」です。表6の注は、菌が1つでも発育すれば調査の対象になるとしています。
- グレードB:浮遊菌10 CFU/m³、落下菌・接触平板・手袋がそれぞれ5 CFU です。
- グレードC:浮遊菌100 CFU/m³、落下菌50、接触平板25で、手袋の限度は置かれていません。
- グレードD:浮遊菌200 CFU/m³、落下菌100、接触平板50です。
グレードAとBで見つかった微生物は、種のレベルまで同定し、製品の品質への影響を評価します(9.31)。
米国FDAの無菌操作のガイダンス(2004年)も、ISOクラス5の重要区域の措置レベルを浮遊菌1 CFU/m³、落下菌1 CFU(4時間、併用は任意)とし、通常は菌が検出されないとしています。
つまり、グレードを満たすとは、状態ごとの粒子の限度と、採り方ごとの菌の限度の両方を満たすことです。では、実際の工程では、どの作業にどのグレードを当てるのか。
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- 5. 作業ごとに、どのグレードを当てるのか
- 6. 分類とモニタリングでは、何をどう測るのか
- 7. 自分の工程では、何から決めるのか
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ほかの会員向けの記事を見る →参考文献
- European Commission, EU GMP Annex 1: Manufacture of Sterile Medicinal Products(2022)(2022年8月25日公表、2023年8月25日適用。凍結乾燥凍らせた試料を減圧下に置き、氷を直接水蒸気にして(昇華)水分を除く乾燥の方法です。液のままでは安定性を保ちにくいタンパク質製剤などに使い、使う前に溶かして戻します。詳しく →に関わる8.123項は2024年8月25日適用。4.4・4.19・4.20 グレードと背景、4.27〜4.32 分類と再適格性評価、8.1〜8.14 作業とグレード、9.12〜9.31 モニタリング、表1・表2・表5・表6)
- ISO, ISO 14644-1:2015 Classification of air cleanliness by particle concentration(附属書A:サンプル量の式と最低2リットル・1分、表A.1 の地点数)
- ISO, ISO 14644-2:2015 Monitoring to provide evidence of cleanroom performance
- FDA, Guidance for Industry: Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing — Current Good Manufacturing Practice(2004)
- PIC/S, Entry into force of revised Annex 1(PE 009-17)
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1自分の工程の各作業に、どの清浄度グレードを割り付けるか
グレードごとの限度の数字は記事のとおりですが、どの作業にどのグレードを当てるかは工程の条件で変わります。下の項目に答えると、決まっていることと、設計・施工会社や品質保証に確かめることが分かれて出ます。
2方式の比較
向く場合液が露出する場所をグレードAにし、背景の部屋はグレードBにします(Annex 1 の 8.12・8.14)。
気をつける点グレードBで手を入れる人は、滅菌済みの衣服を着け、手袋を二重にし、入室のたびに着替えます。
向く場合囲いの扉とグローブ口で、人と製品を隔てます。
気をつける点背景の部屋は最低でもグレードBです(4.20)。
向く場合背景の部屋を下げられます。開放型は最低グレードC、閉鎖型は最低グレードDです(4.20)。
気をつける点どこまで下げるかはリスク評価で決め、その根拠を書いて残す必要があります。
3要求仕様と、設計・施工会社に聞くこと
答えが分かれる条件
- 説明する当局
- 最終滅菌できるか
- むき出しになる作業
- 人と製品の隔て方
- 非稼働時か稼働中か
- 分類の採り方
- 連続モニタリングの範囲
見落としやすい点
- 装置の仕様書にある「ISOクラス5」を、人が作業している稼働中の数字だと思い込む。
- 気流の可視化試験が日常の作業や重要な介入を再現しておらず、FDAの警告書で指摘される。
- 5µmの分類限度がグレードAなどで表から外れたのを見て、グレードA・Bでの5µmの監視までやめてしまう。
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