CIP・SIPとは?運転の記録だけで、洗浄・滅菌できたと言えるのか

CIPタンクや配管を分解せず設置したまま洗浄(CIP)し、蒸気などで滅菌(SIP)する仕組みです。詳しく →・SIPとは、タンクや配管を分解せずに、据え付けたまま洗浄・滅菌する方式です。製造のロットとロットの間に、前の製品の残りや微生物を次へ持ち越さないために、設備を使える状態へ戻すときに行います。
とはいえ、決めた温度と時間で運転した記録だけでは、設備の隅々まで洗浄・滅菌できたことは示せません。 中を開けて目で見られないうえ、洗浄液や蒸気が届かない場所ができるかどうかは、配管とタンクの形でおおむね決まるからです。
この記事では、CIPとSIPがそれぞれ何をするのか、記録だけでは足りない理由、届いたことを何で確かめるのか、自分の設備で何から確かめるかを順に説明します。
- CIP・SIPとは:CIPは洗浄液で残りと汚れを除き、SIPは純蒸気で微生物を殺滅する工程で、この順序は入れ替えられません。
- 記録だけで足りるのか:空気だまり・凝縮水・行き止まりの枝管・噴射の影があると、記録の温度や流量を満たしても、その場所だけ届きません。
- 何で確かめるのか:洗浄液はリボフラビン試験で、蒸気は温度が最も上がりにくい場所の測定と生物学的指標で、届いたことを設計の段階で示します。
1. CIP・SIPとは、何をする工程なのか
CIPは汚れを除く工程、SIPは微生物を殺滅する工程で、決めた順序を制御システムで自動に流します。
- CIP(Clean-in-Place、定置洗浄):水の予備すすぎ、アルカリ洗浄、中間すすぎ、必要に応じた酸洗浄、最終すすぎの順に洗浄液を流し、製品の残りや培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →の成分を落とします。
- SIP(Steam-in-Place、定置滅菌):洗浄した設備に純蒸気を通し、決めた温度と時間を保って微生物を殺滅します。
タンクの中ではスプレーボールなどの噴射装置が内面に液を当て、配管では管内が乱流になる流速で流して、壁面の汚れをはがします。洗浄の効果は、時間(Time)・機械的な作用(Action)・洗剤の種類と濃度(Chemistry)・温度(Temperature)の4つで決まります。この4つは頭文字をとって TACT と呼ばれ、温度を上げれば時間を短くできるように、ある範囲で互いに補い合います。
SIPに使う純蒸気は、凝縮させた水が注射用水(WFI)注射剤の調製などに用いる高度に精製された水。専用の設備で製造し、水質を厳しく管理する。詳しく →の規格を満たす品質の蒸気です。EU GMP の Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく → は、製品接触面を直接滅菌する蒸気にこの品質を求めています(6.17)。
順序を入れ替えられないのは、汚れの中の微生物には熱が伝わりにくいからです。つまり、SIPの効果は、その前のCIPで汚れが落ちていることを前提にしています。
2. なぜ、運転の記録だけでは隅々まで届いたと言えないのか
設定どおりに運転しても、液や蒸気が入れ替わらない場所が設備の形によって残るからです。
SIPで届きにくい場所をつくるのは、空気と凝縮水です。
- 空気:蒸気は冷たい面で水に戻るときに大きな熱(凝縮潜熱)を渡して面を温めます。空気は凝縮しないため、配管の高い所や枝管に残ると、その面だけ温度が上がりません。
- 凝縮水(ドレン):蒸気が水に戻って低い所にたまると、その水は蒸気より温度が低く、その場所の滅菌が不十分になりやすくなります。
CIPで届きにくい場所をつくるのは、行き止まりの枝管と噴射の影です。流れがほとんど入れ替わらない枝管をデッドレグ配管などで液がよどむ袋小路。洗いにくく、洗浄バリデーションのワーストケース箇所になりやすい。詳しく →と呼び、残りがたまって微生物が増えやすい場所です。タンクの中でも、噴射装置の液が当たらない影の部分は洗われません。

記録に残る温度や流量は、センサーを置いた場所の値です。このように、届かない場所があるかどうかは、運転の記録ではなく、設計と試験で前もって確かめるしかありません。
3. では、何で届いたことを確かめるのか
洗浄液は面に当たるかを、蒸気は最も温度が上がりにくい場所の温度を、それぞれ別の試験で確かめます。
リボフラビン試験(カバレッジ試験)では、タンクの内面にリボフラビン(ビタミンB2)の水溶液を塗り、噴射装置で短時間すすいでから紫外線を当てます。蛍光が残る箇所は液が当たっていない影で、噴射装置の位置や数を変えて、蛍光が残らなくなるまで繰り返します。
SIPのバリデーションでは、配管やタンクの各所に温度センサーを置き、温度が最も上がりにくい場所(コールドスポット)を探します。Annex 1 は、滅菌の有効性を物理的な測定と、必要に応じて生物学的指標(BI、熱に強い微生物の芽胞を担体に付けたもの)で検証するよう求めています(8.36)。
日常の運転では、BI を毎回は置きません。Annex 1 は、温度・圧力・時間を、最も温度が上がりにくいと分かった場所を代表する位置で監視するよう求めています(8.63)。凝縮水の排出口の温度も、滅菌の間ずっと記録します(8.58)。
デッドレグは、枝管の長さLと管径Dの比(L/D)で評価します。古くからある「6倍まで」は、主配管の中心から測った値です。一方、米国機械学会の衛生設計の規格 ASME BPE は、主配管の内壁から測って2以下を目標にしています。
起点が違うので、6倍と2倍は単純には比べられません。つまり、試験の結果と設計の数字は、どの条件で、どこから測った値かとセットで読みます。
4. 自分の設備では、何から確かめるのか
最初に確かめるのは、日常の記録を取っている位置が、バリデーションで見つけた届きにくい場所と対応しているかです。
次の3つを、メーカーや設備の担当者に確かめておくと、後の洗浄バリデーションでサンプリング位置や試験のやり直しを減らせます。
- 洗浄液が当たる記録があるか:噴射装置のリボフラビン試験の記録があるか、蛍光が残らなかったことをどの条件で確かめたかを見ます。
- デッドレグの長さと水の抜けはどうか:枝管の L/D がいくつで、どこから測った値か、配管とタンクの底が水の残らず抜ける勾配になっているかを確かめます。
- 定置滅菌(SIP)の監視位置は妥当か:日常の温度監視の位置が最も温度が上がりにくい場所と対応づけられ、凝縮水の排出口の温度が記録されているかを見ます。
最初の一歩は、配管図の上に、温度センサーと枝管とタンクの噴射装置の位置を書き込むことです。届きにくい場所が見えたら、汚れが落ちたことの確かめ方を洗浄バリデーションで、微生物が増える仕組みをバイオフィルムとデッドレグで調べられます。
参考文献
- STERIS Life Sciences, Technical Tip: Critical Process Parameters(2021年1月)(TACT)
- STERIS Life Sciences, Technical Tip: Riboflavin Coverage Test(リボフラビン液を塗り、すすぎ後に紫外線で確認する方法)
- ASME BPE, Bioprocessing Equipment(衛生設計の規格。最新版は有償。デッドレグの L/D は2以下を目標とする)
- FDA, Guide to Inspections of High Purity Water Systems(1993年7月)(LVP 規則案の6倍の定義と、主配管の中心から測ること)
- ECA Academy (GMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく → Compliance), The Truth about the 3D/6D Rule
- European Commission, EU GMP Annex 1: Manufacture of Sterile Medicinal Products(2022年8月公表・2023年8月適用)(6.17 直接の滅菌に使う純蒸気、8.36 物理的測定と BI による検証、8.58・8.63 SIP の監視位置)
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Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/cip-sip-cleaning-sterilization