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ホーム/解説記事/製薬用水と製造設備
基礎知識・製造工程シリーズ製薬用水と製造設備6/9基本

CIP・SIPとは?運転の記録だけで、洗浄・滅菌できたと言えるのか

Proglenth 編集部公開 2026-07-28更新 2026-10-23約5分で読めます
CIP・SIPとは?運転の記録だけで、洗浄・滅菌できたと言えるのか

CIPタンクや配管を分解せず設置したまま洗浄(CIP)し、蒸気などで滅菌(SIP)する仕組みです。詳しく →・SIPとは、タンクや配管を分解せずに、据え付けたまま洗浄・滅菌する方式です。製造のロットとロットの間に、前の製品の残りや微生物を次へ持ち越さないために、設備を使える状態へ戻すときに行います。

とはいえ、⁠決めた温度と時間で運転した記録だけでは、設備の隅々まで洗浄・滅菌できたことは示せません。 中を開けて目で見られないうえ、洗浄液や蒸気が届かない場所ができるかどうかは、配管とタンクの形でおおむね決まるからです。

この記事では、CIPとSIPがそれぞれ何をするのか、記録だけでは足りない理由、届いたことを何で確かめるのか、自分の設備で何から確かめるかを順に説明します。

この記事の要点
  • CIP・SIPとは⁠:CIPは洗浄液で残りと汚れを除き、SIPは純蒸気で微生物を殺滅する工程で、この順序は入れ替えられません。
  • 記録だけで足りるのか⁠:空気だまり・凝縮水・行き止まりの枝管・噴射の影があると、記録の温度や流量を満たしても、その場所だけ届きません。
  • 何で確かめるのか⁠:洗浄液はリボフラビン試験で、蒸気は温度が最も上がりにくい場所の測定と生物学的指標で、届いたことを設計の段階で示します。

1. CIP・SIPとは、何をする工程なのか

CIPは汚れを除く工程、SIPは微生物を殺滅する工程で、決めた順序を制御システムで自動に流します。

  • CIP(Clean-in-Place、定置洗浄):水の予備すすぎ、アルカリ洗浄、中間すすぎ、必要に応じた酸洗浄、最終すすぎの順に洗浄液を流し、製品の残りや培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →の成分を落とします。
  • SIP(Steam-in-Place、定置滅菌):洗浄した設備に純蒸気を通し、決めた温度と時間を保って微生物を殺滅します。

タンクの中ではスプレーボールなどの噴射装置が内面に液を当て、配管では管内が乱流になる流速で流して、壁面の汚れをはがします。洗浄の効果は、時間(Time)・機械的な作用(Action)・洗剤の種類と濃度(Chemistry)・温度(Temperature)の4つで決まります。この4つは頭文字をとって TACT と呼ばれ、温度を上げれば時間を短くできるように、ある範囲で互いに補い合います。

SIPに使う純蒸気は、凝縮させた水が注射用水(WFI)注射剤の調製などに用いる高度に精製された水。専用の設備で製造し、水質を厳しく管理する。詳しく →の規格を満たす品質の蒸気です。EU GMP の Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく → は、製品接触面を直接滅菌する蒸気にこの品質を求めています(6.17)。

順序を入れ替えられないのは、汚れの中の微生物には熱が伝わりにくいからです。つまり、SIPの効果は、その前のCIPで汚れが落ちていることを前提にしています。

2. なぜ、運転の記録だけでは隅々まで届いたと言えないのか

設定どおりに運転しても、液や蒸気が入れ替わらない場所が設備の形によって残るからです。

SIPで届きにくい場所をつくるのは、空気と凝縮水です。

  • 空気⁠:蒸気は冷たい面で水に戻るときに大きな熱(凝縮潜熱)を渡して面を温めます。空気は凝縮しないため、配管の高い所や枝管に残ると、その面だけ温度が上がりません。
  • 凝縮水(ドレン):蒸気が水に戻って低い所にたまると、その水は蒸気より温度が低く、その場所の滅菌が不十分になりやすくなります。

CIPで届きにくい場所をつくるのは、行き止まりの枝管と噴射の影です。流れがほとんど入れ替わらない枝管をデッドレグ配管などで液がよどむ袋小路。洗いにくく、洗浄バリデーションのワーストケース箇所になりやすい。詳しく →と呼び、残りがたまって微生物が増えやすい場所です。タンクの中でも、噴射装置の液が当たらない影の部分は洗われません。

洗浄液や蒸気が届かない場所を示す概念図。左上から洗浄液・蒸気の配管がタンクへ入り、中央のスプレーボールが内面に液を噴き付ける。タンクの中の管の陰になった内面の一部は液が当たらず、噴射の影として赤で示す。タンクの底から出た配管は、上に山を作る部分のいちばん上に空気だまり(蒸気が触れず温まらない)、下に谷を作る部分の底に凝縮水(低い所にたまり温度が低い)があり、その先の行き止まりの枝管がデッドレグ(流れが入れ替わらない)。配管の終わり近くにセンサーがあり、記録はここの値。下に、記録の温度や流量を満たしても赤い場所だけ洗浄液や蒸気が届かないこと、届かない場所は設計と試験(リボフラビン試験、温度の測定点)で前もって確かめることを書いている
記録どおりに運転しても届かない場所が残る:噴射の影・空気だまり・凝縮水・デッドレグ(概念図)
図をダウンロード(会員・無料)

記録に残る温度や流量は、センサーを置いた場所の値です。このように、届かない場所があるかどうかは、運転の記録ではなく、設計と試験で前もって確かめるしかありません。

3. では、何で届いたことを確かめるのか

洗浄液は面に当たるかを、蒸気は最も温度が上がりにくい場所の温度を、それぞれ別の試験で確かめます。

確かめること主な方法示せないこと
洗浄液がタンクの内面全体に当たるかリボフラビン試験汚れが実際に落ちたか
汚れが許される量まで落ちたか洗浄バリデーション設備を洗浄した後、前の製品の残留がないことを検証し交叉汚染を管理する活動。詳しく →(すすぎ水の導電率液のイオン強度の目安となる電気の通りやすさ。バッファ調製やクロマト制御で監視する。詳しく →や全有機炭素、拭き取り)液の当たらない場所の有無
蒸気で全体が必要な温度と時間にさらされたか温度の測定点の配置と生物学的指標日常の運転ごとの状態

リボフラビン試験(カバレッジ試験)では、タンクの内面にリボフラビン(ビタミンB2)の水溶液を塗り、噴射装置で短時間すすいでから紫外線を当てます。蛍光が残る箇所は液が当たっていない影で、噴射装置の位置や数を変えて、蛍光が残らなくなるまで繰り返します。

SIPのバリデーションでは、配管やタンクの各所に温度センサーを置き、温度が最も上がりにくい場所(コールドスポット)を探します。Annex 1 は、滅菌の有効性を物理的な測定と、必要に応じて生物学的指標(BI、熱に強い微生物の芽胞を担体に付けたもの)で検証するよう求めています(8.36)。

日常の運転では、BI を毎回は置きません。Annex 1 は、温度・圧力・時間を、最も温度が上がりにくいと分かった場所を代表する位置で監視するよう求めています(8.63)。凝縮水の排出口の温度も、滅菌の間ずっと記録します(8.58)。

デッドレグは、枝管の長さLと管径Dの比(L/D)で評価します。古くからある「6倍まで」は、主配管の中心から測った値です。一方、米国機械学会の衛生設計の規格 ASME BPE は、主配管の内壁から測って2以下を目標にしています。

起点が違うので、6倍と2倍は単純には比べられません。つまり、試験の結果と設計の数字は、どの条件で、どこから測った値かとセットで読みます。

4. 自分の設備では、何から確かめるのか

最初に確かめるのは、日常の記録を取っている位置が、バリデーションで見つけた届きにくい場所と対応しているかです。

次の3つを、メーカーや設備の担当者に確かめておくと、後の洗浄バリデーションでサンプリング位置や試験のやり直しを減らせます。

  1. 洗浄液が当たる記録があるか⁠:噴射装置のリボフラビン試験の記録があるか、蛍光が残らなかったことをどの条件で確かめたかを見ます。
  2. デッドレグの長さと水の抜けはどうか⁠:枝管の L/D がいくつで、どこから測った値か、配管とタンクの底が水の残らず抜ける勾配になっているかを確かめます。
  3. 定置滅菌(SIP)の監視位置は妥当か⁠:日常の温度監視の位置が最も温度が上がりにくい場所と対応づけられ、凝縮水の排出口の温度が記録されているかを見ます。

最初の一歩は、配管図の上に、温度センサーと枝管とタンクの噴射装置の位置を書き込むことです。届きにくい場所が見えたら、汚れが落ちたことの確かめ方を洗浄バリデーションで、微生物が増える仕組みをバイオフィルムとデッドレグで調べられます。

無料チェックリスト(PDF・A4で2ページ)

バリデーション・適格性評価のチェックリスト

URS(要求仕様書)から適格性評価、プロセスバリデーション、洗浄バリデーション、CSV、変更管理まで、手元の手順書と記録で確かめたい点を44項目にまとめました。項目はすべて、当サイトの解説記事に書いた内容から取り、段ごとにもとの記事を載せています。

  1. URS
  2. DQ
  3. IQ
  4. OQ
  5. PQ
  6. プロセスバリデーション
  7. 洗浄バリデーション
  8. CSV
  9. 変更管理

参考文献

  • STERIS Life Sciences, Technical Tip: Critical Process Parameters(2021年1月)(TACT)
  • STERIS Life Sciences, Technical Tip: Riboflavin Coverage Test(リボフラビン液を塗り、すすぎ後に紫外線で確認する方法)
  • ASME BPE, Bioprocessing Equipment(衛生設計の規格。最新版は有償。デッドレグの L/D は2以下を目標とする)
  • FDA, Guide to Inspections of High Purity Water Systems(1993年7月)(LVP 規則案の6倍の定義と、主配管の中心から測ること)
  • ECA Academy (GMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく → Compliance), The Truth about the 3D/6D Rule
  • European Commission, EU GMP Annex 1: Manufacture of Sterile Medicinal Products(2022年8月公表・2023年8月適用)(6.17 直接の滅菌に使う純蒸気、8.36 物理的測定と BI による検証、8.58・8.63 SIP の監視位置)

次に、何を調べますか?

蒸気滅菌の効果は、F0値でどう表すのか?蒸気滅菌のF0値とは→汚れが落ちたことは、どこまで残ってよいかで決めるのか?洗浄バリデーションとは→洗浄・滅菌のシステムは、何を比べて選ぶのか?製品ガイド:洗浄・滅菌システム→
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この記事の目次
  1. 1. CIP・SIPとは、何をする工程なのか→
  2. 2. なぜ、運転の記録だけでは隅々まで届いたと言えないのか→
  3. 3. では、何で届いたことを確かめるのか→
  4. 4. 自分の設備では、何から確かめるのか→
  5. 参考文献→
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編集メモ:この記事は Proglenth 編集部が、規制文書・論文・メーカーの公開資料をもとに整理した一般的な解説です。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断するときは、薬局方・ガイドライン(ICH・GMP など)やメーカーの一次情報を確かめてください。誤りやご指摘はお問い合わせからお知らせください。

Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/cip-sip-cleaning-sterilization

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