抗体医薬基礎知識・規制

変更管理とは?GMPで変更を統制する仕組みと流れ

原料のサプライヤーを一つ切り替えたい。古くなった装置を新しい型に替えたい。培養のpHをほんの少しだけ動かしたい。どれも前向きな改善です。それでも、現場の判断だけで変えてしまうと、そのロットは出荷できなくなります。GMPの下では、品質に関わる変更を勝手に動かすことが許されていないからです。間に入って変更を受け止めるのが、変更管理(チェンジコントロール)工程や材料の変更が品質に及ぼす影響を評価し、記録・承認して管理する仕組み。という仕組みです。

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変更管理とは?GMPで変更を統制する仕組みと流れ

変更管理工程・設備・手順などの変更を評価・承認し、品質への影響とともに記録する仕組み。詳しく →とは、品質に影響しうる変更を、実施する前に評価し、承認を得てから計画どおりに行う仕組みのことです。核心は一点にあります。変更管理の値打ちは、承認の印そのものではありません。変える前にどこまで影響を見たか。そして変えたあとに意図どおりになったかを確かめたか。この両端で決まります。真ん中の承認だけを通して両端を省くと、手続きは踏んだのに品質は守られていない、という形で後から表に出ます。

本稿では、変更管理とは何か、なぜ要るのかから始めて、変更をどう分類するか(軽微・中等度・重大、likeとunlike)、申請から有効性確認までの流れ、医薬品品質システム製品ライフサイクル全体で品質を維持・改善するマネジメント体制。逸脱・CAPA・変更管理を束ねる器。詳しく →(ICH Q10医薬品品質システムを定めた国際ガイドライン。ライフサイクルを通じた品質マネジメントの考え方を示す。詳しく →)の中での位置、逸脱・CAPA問題の原因を除く是正と、再発を防ぐ予防をあわせた品質活動。照査で見つかった事項をつなぐ。詳しく →との関係までを順に整理します。GMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく →の全体像は別に扱っているので、ここでは変更管理だけを深く見ます。

この記事の要点
  • 変更管理は、意図した変更を実施前に評価・承認する仕組みで、価値は承認印ではなく「影響評価」と「有効性確認」の両端で決まります。
  • 変更はリスクに応じて軽微・中等度・重大に仕分け、同等の置き換え(like)と本当の変更(unlike)を特性と機能で判定します。
  • ICH Q10が挙げる医薬品品質システムの四要素の一つで、逸脱・CAPAと一本の流れでつながります。

変更管理とは何か ― 意図した変更を事前に統制する仕組み

変更管理とは、品質に影響しうる変更を、事前に評価して承認を得てから実施する仕組みです。

対象になる変更は広い範囲に及びます。原材料とその供給元、装置、工程パラメータ、分析法、手順書、製造場所、コンピュータ化システム。手順書に書いてあるとおりに進むかぎり、変更管理は要りません。手順書そのものや、その前提を自分から動かすときに出番がきます。国際的には change control という同じ名前の仕組みで、どの国の手順書にも必ず置かれています。原薬ならICH Q7の第13章が変更管理を定めています。EU GMPのAnnex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく →5は、品質に影響しうる変更について文書化した手順をあらかじめ持つことを求めています。日本のGMP省令では第14条がこれにあたります。

変更管理が対象にするのは、よかれと思って自分から動かす変更であって、想定外に起きてしまった逸脱承認された手順や規格から外れた事象。GMPでは発見したら記録し、製品品質への影響を評価してロットの可否を判断します。詳しく →とは入口が別です。

なぜ変更管理が要るのか ― 承認申請書と結びついた製造の約束

製造方法は、承認申請書に書いて当局と交わした約束だからです。

医薬品の製造方法と規格は、承認申請の段階で当局に提出し、審査を経て固まります。プロセスバリデーション決めた製造工程が、いつも安定して規格に合う製品を作れることを事前に実証し、その後も確認し続ける取り組みです。承認申請や品質保証の土台になります。詳しく →で「設計どおりに作れる」と示した状態も、特定の原料、特定の装置、特定のパラメータの組み合わせの上に立っています。入力を一つ変えれば、検証した状態がそのまま保てるとは限りません。プロセスバリデーションで確かめた前提が崩れれば、再び確かめ直す必要が出てきます。品質が静かに崩れることもあります。そして、承認申請書に書いた中身を変えるなら、当局への届出や承認が絡みます。この三つが重なるからこそ、変更には関所が要ります。

変更そのものが禁じられているのではありません。禁じられているのは、影響を見ないまま、検証した状態を黙って崩すことです。

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変更をどう分類するか ― 軽微・中等度・重大の重みづけ

すべての変更に同じ重さの手続きを課すと、仕組みが回りません。

だから変更は、品質への影響の大きさで仕分けます。軽微、中等度、重大の三段が一般的です。仕分けの物差しは品質リスクマネジメント(ICH Q9)の考え方で、重要品質特性や患者の安全に届きうるほど、評価も承認も重くなります。軽微な変更なら簡潔な記録と評価で足ります。重大な変更なら、影響評価を広く取り、品質部門を含む承認を経て、再バリデーションプロセスや設備に変更が生じた際に、変更後も品質・性能が適切に保たれることを改めて実験・文書で実証する活動。詳しく →や当局への届出まで進みます。ここで効くのは、軽く見積もらないことだけではありません。何でも重大に寄せると、仕組みが重い案件で詰まり、本当に重い変更に手が回らなくなります。

分類は格付けの作業ではなく、どこに手間をかけ、どこを軽くするかを決める作業です。

likeとunlikeの線引き ― 同等品への置き換えに潜む落とし穴

like変更とは、同じ特性と機能を持つ品への置き換えのことです。

装置や部品を、構成材料も寸法も型式も同じものに替える。ただし作っているメーカーは同じでなくてよい。これがlike-for-likeの置き換えで、影響の小さい変更として扱えることがあります。ただし「同じだ」と決めるには、工程責任者と品質部門、必要なら薬事の承認を得て、同じだという根拠を書き残さなければなりません。これに対して、本当に中身が変わるのがunlike変更で、こちらは正面から影響評価を行います。危ないのは、手間を省くために「likeだ」と呼んでしまう場面です。充填処方済みの溶液をバイアルやシリンジなどの容器へ無菌的に充填し、封止する製造工程。詳しく →ポンプのピストンを「同等品」として変更申請なしで入れ替えた事例が報告されています。部品番号は同じでしたが、わずかに長く、接触によって金属微粒子が混入し、複数ロットの回収に至りました。

部品番号が同じでも、like変更だと決めるのは書類ではなく、特性と機能が本当に同じだと示した評価です。

申請から有効性確認までの流れ ― 申請・評価・承認・実施・確認

変更管理は、おおむね五つの段を順にたどります。

はじめは申請です。誰が、何を、なぜ変えたいのかを、範囲まで添えて起票します。次が影響評価で、ここが仕組みの本体です。品質、工程、バリデーション試験法が目的に合う性能を持つことを立証する妥当性確認。正確さ・精度などを評価する。詳しく →、規制、設備、文書のどこに影響が届くかを、関係部門を集めて洗い出します。三段目が承認で、品質部門を含む関係者が、重大度の仕分けごと中身を見て可否を決めます。四段目が実施です。計画どおりに変え、必要なら再バリデーション、手順書作業の手順を定めた文書。品質システムの要素を具体化し、査察でも運用が確認される。詳しく →の改訂、作業者への教育まで行います。最後が有効性確認で、変えたあとに意図どおりになったかを後から確かめ、確かめられて初めて一件を閉じます。どの段の記録も、誰がいつ何を決めたかをデータインテグリティの観点で追えなければ、調査にも査察にも耐えません。

承認の印は五段の真ん中にすぎません。前の影響評価と後の有効性確認を省くと、残るのは承認を取ったという記録だけです。

POINT

影響評価と有効性確認は、同じ変更管理の前と後ろにある、いちばん省かれやすい二つです。影響評価が浅いと承認の根拠が薄くなり、有効性確認を飛ばすと変えっぱなしの案件が積み上がります。承認を取ることではなく、この両端を閉じることが実務の勘どころです。

申請前と承認後 ― 届出区分とICH Q12

製造方法が承認申請書に書かれていると、変更には当局への手続きが絡みます。

開発中や治験の段階では、変更は社内の統制と、申請書への反映で進みます。承認を取ったあとは話が変わります。承認事項にかかる変更は、重大度に応じて事前の承認や届出が要ります。米国では21 CFR Part 314の314.70が、承認後の変更を四つの区分に分けます。事前承認が要る事前承認補足申請、実施の30日前に届け出る変更実施届出(CBE-30)、受理と同時に動かせる区分、そして年次報告にまとめる区分です。どの区分に落ちるかは変更の性質で決まり、申請者が選べるものではありません。日本では、承認事項の変更は一部変更承認申請で事前の承認を取るのが原則で、品質や有効性や安全性に影響を与えるおそれがないものだけが軽微変更届出で済みます。軽微変更届出は、変更した日から30日以内に出します。遅れれば遅延理由書を添えます。つまり軽微な変更は、先に実施して後から届け出る形です。承認後の変更をどこまで予測可能にできるかは、ICH Q12とライフサイクル管理が確立された条件承認事項のうち製品品質の保証に不可欠で、変更するには規制当局への手続きが必要な要素。詳しく →やPACMPこれから行う変更の計画と判定基準をあらかじめ当局と合意し、実施後は軽い手続きで反映できるようにする仕組み。という道具で枠組みを示しています。

POINT

承認後の変更で確かめるのは「届け出るかどうか」ではなく、どの区分に落ちて何日かかるかです。日本の軽微変更届出は、先に実施して30日以内に届け出る後追いの手続きで、一部変更承認申請の事前承認とは時間の向きが逆です。区分は変更の性質で決まり、こちらの都合では選べません。

医薬品品質システムの中での位置 ― ICH Q10の四要素

変更管理は、単独の手続きではありません。

ICH Q10は、医薬品品質システム(PQS)開発から製造・出荷まで品質を継続的に保証する組織的な仕組み。ICH Q10が示す。の要素を四つ挙げています。工程パフォーマンスと製品品質のモニタリング、CAPAの仕組み、変更管理の仕組み、そしてマネジメントレビューです。四つは互いを支え合い、どれか一つだけでは回りません。日本のGMP省令も同じ形をしていて、第3条の3に医薬品品質システム、第3条の4に品質リスクマネジメントリスクに基づいて品質を判断する、品質リスクマネジメントの考え方を示すICHのガイドライン。詳しく →が置かれ、その下に第14条の変更管理、第15条の逸脱管理が並びます。PIC/SのPE 009やEU GMP欧州の医薬品製造・品質管理の基準。第1章の品質システムのなかでPQRの実施を求めている。詳しく →を採用している拠点なら、査察の目線もこの構造に揃います。

変更管理だけを整えても回りません。モニタリングで兆候を拾い、CAPAで原因に手を打ち、マネジメントレビューで全体を見る。四つがそろって初めて機能します。

逸脱・CAPAとの関係 ― 想定外と意図した変更の表裏

逸脱と変更管理は、入口が逆を向いています。

逸脱は、承認された手順から外れる事象が起きたあとに動きます。変更管理は、意図した変更を起きる前に止めて評価します。向きは逆ですが、二つは一本の流れでつながっています。逸脱やOOS試験結果が規格の範囲を外れること。原因調査の対象になる。詳しく →の調査から根本原因が見え、その再発防止として手順や装置を恒久的に変えるなら、その変更自体は変更管理を通ります。逆に、影響評価の甘い変更は、しばらくしてから逸脱という形で表に出ます。四つの仕組みがどうつながるかの全体像は逸脱・OOS・CAPAの側で扱っています。

逸脱の再発防止が恒久的な変更に行き着いたら、そこから先は変更管理の仕事です。二つは別物ではなく、一本の流れの両端にあります。

変更管理を組み立てる順番

最後に、変更を一つ通すときに決める順番を並べます。

先に決めるのは、影響の射程です。この変更が品質、工程、バリデーション、規制、設備、文書のどこまで届くかを、関係部門を集めて洗い出します。ここが浅いと、後ろの段がすべて浅くなります。次に、likeかunlikeかを、部品番号や呼び名ではなく、特性と機能で判定し、その根拠を記録します。そのうえで、重大度を軽微・中等度・重大に仕分け、当局への届出区分と紐づけます。品質部門を含む承認を取り、必要なら再バリデーションと文書改訂、作業者への教育を計画します。最後に、実施したら有効性確認の期限を先に切っておき、意図どおりになったかを確かめてから閉じます。この順番を飛ばして届出区分から先に詰めると、あとになって影響評価の切り方からやり直す羽目に陥ります。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、抗体医薬に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。