BioFlo 320 は、動物細胞の培養と微生物の発酵を、同じ制御機で回す卓上型のバイオリアクターです。容器は2種類あって、オートクレーブできるホウケイ酸ガラスと、BioBLU という単回使用のものを入れ替えて使います。
制御機が対応する実容量は、単回使用容器なら 250mL から 40L、ガラス容器なら 600mL から 10.5L です。
BioFlo という名前は Eppendorf のものではありません。2007年に Eppendorf が New Brunswick Scientific を買収したときに一緒に来ました。New Brunswick は発酵槽とバイオリアクターを当時すでに70年扱っていた会社で、Eppendorf はこの買収でバイオプロセスの事業に入っています。2012年には並列小型バイオリアクターの DASGIP も取り込みました。いまの製品群は、この2社の系譜が混ざったものです。
ガラスと単回使用を、同じ台で入れ替える
容器を選べることの意味は、工程のどの段階にいるかで変わります。
開発の初期は条件を何度も振ります。培地を変え、pH を変え、通気を変える。回数が多いので、1回あたりの費用が効いてきます。ガラス容器は洗ってオートクレーブすれば何度でも使えるので、この段階では安上がりです。手間はかかりますが、条件出しの回数が多いうちは、そちらのほうが釣り合います。
工程が固まってくると逆転します。同じ条件を確実に再現したい段階では、洗浄とオートクレーブのばらつきが邪魔になります。単回使用容器は毎回同じ状態から始められて、洗浄バリデーションが要りません。そのぶん容器の費用は毎回かかります。
BioFlo 320 は、この切り替えを制御機を買い替えずにできる構成です。同じ画面、同じ操作系のまま容器だけ替える。開発の初期から中規模までを一本で通したい研究室では、ここが効きます。
BioBLU を使うときは pH を光学式で測ります。電極を挿して校正してオートクレーブする、という一連の作業が消えます。溶存酸素と pH のセンサは Mettler Toledo の ISM(Intelligent Sensor Management)に対応していて、校正の履歴がセンサ側に残ります。
台数の話もしておきます。1つの画面から最大8台まで制御できます。条件を振る実験は台数がそのまま速度になるので、実験計画法で培地を詰めるような使い方では、この上限が計画の前提になります。
「両対応」が意味していること
細胞培養と微生物発酵を1台で、という売り方は便利に聞こえます。ただし、この2つは装置に求めるものがかなり違います。
微生物の発酵は酸素の要求量が桁で大きく、撹拌も通気も強く回します。動物細胞はその逆で、せん断で壊れます。撹拌翼の形、スパージャの孔径、ガスの流量範囲。どれも本来は別の設計です。
つまり「両対応」は制御機の話であって、容器とオプションの組み合わせで成立しています。ガスの流量を制御する TMFC のドロワーが後付けできる構成になっているのも、そのためです。カタログで両対応と書いてあるからといって、自分の菌株や細胞株が要求する酸素移動容量係数(kLa)を満たすとは限りません。そこは構成ごとに確かめる話です。
導入で確認したいこと
3つあります。
1つ目は、40L までの範囲のうち、実際に使う容量で何が成立するかです。250mL から 40L というのは制御機が対応する幅で、その全域で同じ性能が出るわけではありません。自分が使う容量の容器で、必要な kLa と温度制御の追従が取れるかを確かめてください。
2つ目は、単回使用容器の供給とリードタイムです。容器が来なければ実験は止まります。ガラスに戻せる構成であることは保険になりますが、そのときの手順を用意しているかどうかは別の話です。
3つ目は、GMP の工程に入れる場合の監査証跡です。Ethernet で SCADA につながる構成なので、データの流れ先まで含めてデータインテグリティの要求を満たせるかを、適格性評価の計画を立てる前に確認しておくほうが手戻りが少なくなります。
価格、日本国内での保守体制、容器ごとの具体的な流量範囲と kLa の実測値は、公開情報からは分かりません。導入の検討では代理店に見積もりと仕様書を求めてください。
