医療機器の承認経路とは?510(k)・De Novo・PMAの違い
医療機器の承認経路とは、その機器を市場に出すために、どの手続きで当局の判断を受けるかの道筋を指します。
医薬品では原則として1つの枠組み(承認申請)に収れんしますが、医療機器ではリスクと前例の有無によって複数の経路が用意されています。装置や診断薬の発表で「FDA clearance」と「FDA approval」が使い分けられているのは、この違いによります。

- 510(k)は「既存品と実質的に同等」であることを示す経路で、承認(approval)ではなく認可(clearance)です。
- 前例がない中〜低リスク機器には De Novo という経路があります。
- 高リスク機器の PMA だけが、医薬品に近い意味での「承認」にあたります。
まずクラス分類から
米国では、医療機器をリスクに応じて3つに分類します。
| クラス | リスク | 一般的な経路 | 例 |
|---|---|---|---|
| I | 低い | 多くは届出のみ(多数が免除) | 手術用手袋、舌圧子 |
| II | 中程度 | 510(k) | 多くの検査装置、注入ポンプ |
| III | 高い | PMA | 植込み型除細動器、人工心臓弁 |
クラスは機器の種類ごとに規則で定められており、自分で選ぶものではありません。新しい機器の場合、既存のどの分類に当てはまるかを判断するところから始まります。
510(k):実質的同等性という論理
クラスIIの機器で最も使われる経路です。
論理は単純で、既に市場にある機器(predicate device)と実質的に同等であることを示すというものです。同等であるなら、その機器と同じ水準の安全性・有効性が期待できる、と考えます。
同等性変更前後が完全に同一でなくても、品質・安全性・有効性で高い類似性を保ち差異が悪影響しないと言える状態。は次の観点で判断されます。
- 使用目的(intended use)が同じか
- 技術的特性が同じか。違う場合、それが新たな安全性・有効性の問題を生じないか
臨床試験は必須ではありません。多くは性能試験(ベンチテスト)、生体適合性、電気安全性、ソフトウェア検証といった非臨床データで構成されます。
そして重要な点として、510(k) を通った機器は clearance(認可) されたと表現されます。approval(承認)ではありません。この語の使い分けは、審査で何が確認されたかの違いを反映しています。
新機器は既存機器を根拠に認可され、その機器がまた次の機器の根拠になります。この連鎖が長くなると、最初の機器から性質が離れていくことがあり、制度上の論点として議論されてきました。
De Novo:前例がないとき
前例となる機器が存在しないが、リスクは高くない——という場合があります。
従来、この状況では自動的にクラスIIIに分類され、PMA が必要になっていました。新しいが低リスクな機器にとって、過大な負担になります。
De Novo は、この隙間を埋める経路です。
- 前例がない機器について、新たにクラスI またはII の分類を作ることを申請します
- 認められれば、その機器が以後の predicate になります
- 一般的な管理措置(special controls)が同時に定められることがあります
つまり De Novo は、その機器のためのカテゴリを作る手続きにあたります。世界初を謳う機器の発表で De Novo という語が出てくるのは、そのためです。
PMA:医薬品に近い枠組み
クラスIIIの高リスク機器に求められるのが Pre-Market Approval(PMA) です。
- 臨床試験データによる安全性・有効性の立証が原則として必要です
- 審査には相応の期間と費用がかかります
- 製造施設の査察が行われます
- 承認後の変更にも、内容に応じて申請が要ります
この経路を通った機器だけが approval(承認) されたと表現されます。医薬品の承認申請に近い枠組みといえます。
ブレークスルーデバイス指定
重篤な疾患に対して有意な改善をもたらしうる機器について、審査を促進する仕組みです。
- 開発段階から当局と密に協議できます
- 審査の優先順位が上がります
- 経路そのものを変えるものではありません。De Novo や PMA と組み合わせて使われます
医薬品の画期的治療薬指定に相当する位置づけと考えると分かりやすくなります。
体外診断薬(IVD)の場合
血液検査などの体外診断薬も医療機器として扱われます。分類の考え方は同じですが、性能の示し方に固有の点があります。
- 臨床性能:感度・特異度を、想定する使用集団で示します
- カットオフ:判定の閾値を、どう設定しどう検証したか
- 参照法との比較:既存の確定診断法(画像、生検、脳脊髄液検査など)との一致
同じ分析対象を測る検査でも、測定原理が違えば値の互換性は保証されません。分析法の特異性の担保の仕方が違い、標準物質が共通でなければ、カットオフは検査ごとに固有になります。臨床側では、施設が変われば別の検査を受けることになるという点が実務上の論点になります。
コンビネーション製品という境界
医薬品と機器が組み合わさった製品——プレフィルドシリンジ、オートインジェクター、薬剤溶出ステント——は、コンビネーション製品として扱われます。
主たる作用機序薬が効果を発揮する仕組み。抗体医薬ではADCCやCDCなどが該当し、アッセイで裏づける。(primary mode of action)によって主管する部署が決まり、それに応じた申請経路になります。
- 薬剤が主なら、医薬品の承認申請の中でデバイス部分を扱います
- 機器が主なら、機器の経路の中で薬剤部分を扱います
製造の側から見ると、医薬品のGMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく →と機器の品質システムの両方を満たす必要が生じます。設計管理、リスクマネジメント、変更管理の運用が、医薬品だけの場合より複雑になります。
製造の側に求められること
経路にかかわらず、市販後の製造には品質システムの要求がかかります。医薬品のGMPに相当する枠組みです。
- 設計管理:機器では、設計そのものが規制の対象になります。医薬品にはない考え方です
- 供給者管理:部品を外部調達する場合、その管理が自社の責任になります
- 装置の適格性評価と工程バリデーション試験法が目的に合う性能を持つことを立証する妥当性確認。正確さ・精度などを評価する。
- コンピュータ化システムの検証:ソフトウェアを含む機器では、ソフト自体が検証対象です
- 市販後の不具合報告
センサーやポンプのように他社の部品を組み込む製品では、部品の変更が設計変更として扱われることがあります。組み合わせごとに検証が要るため、対応は1組ずつ進むことになります。
日本・欧州との対応
国によって枠組みは異なりますが、リスクベースリスクの大きさに応じて管理の濃淡や頻度を決める考え方。監査証跡レビューの頻度決定に用いる。という考え方は共通します。
- 日本:クラスI〜IVに分類され、届出・認証(第三者認証機関)・承認(PMDA審査)に対応します
- 欧州:MDR/IVDRの下で、クラス分類に応じて認証機関(Notified Body)の関与の程度が変わります
同じ機器でも、地域によって分類と経路が異なることがあります。グローバル開発では、各地域の要求を並行して満たす設計が求められます。
まとめ
「FDA clearance」と「FDA approval」は、日本語ではどちらも承認と訳されがちですが、審査で確認されたことの中身が違います。
- 510(k):既存品との同等性。臨床試験は原則不要
- De Novo:前例のない機器に新たな分類を作る
- PMA:臨床データによる安全性・有効性の立証
装置や診断薬のニュースを読むとき、どの経路を通ったかを見れば、何が示されて何が示されていないかが分かります。新規性の高い機器ほど、認可の後に「作り続けられるか」という製造側の課題が残る点も、併せて押さえておきたいところです。
※ 本記事は一般的な技術解説です。具体的な申請区分・要求事項は制度改正により変わります。実際の対応にあたっては、一次情報および所轄当局の最新のガイダンスをご確認ください。
この分野の新着を、メールで受け取る
こうした製造・分析・品質の解説記事と、装置・試薬の新製品ニュースを月数回お届けします。登録は無料で、いつでも解除できます。
登録によりプライバシーポリシーに同意したものとみなします。