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医療機器の承認経路とは?510(k)・De Novo・PMAと「FDA承認」の読み方

同じ「FDA承認」でも、確かめられた中身は機器によってまるで違います。この夏だけでも、FDAの判断を受けた機器に、採血ロボットのAletta、アルツハイマー病の血液検査のElecsys pTau217、肺灌流システムのTorExがありました。通った経路は順に、De Novo、510(k)、PMAです。

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医療機器の承認経路とは?510(k)・De Novo・PMAと「FDA承認」の読み方

なぜ違うのか。経路ごとに、審査で確かめることが違うからです。510(k)は、既にある機器と同じ水準だと示せば足ります。De Novoは、前例のない低〜中リスクの機器のために、新しい分類を作る手続きです。PMAは、臨床データで安全性と有効性まで示します。英語ではclearance、granted、approvalと書き分けられるのに、日本語ではどれも「承認」と訳されがちです。

この一語の差が、開発にかかる年数と費用、そして製造の側に求められる準備を分けます。装置や診断薬を作る人にも、部品や試薬を納める人にも、提案する営業にも、取引先の機器がどの経路にいるかを読み取れると、話の前提が揃います。

クラス分類が経路を決める ― 選択ではなく判定

米国では、医療機器をリスクに応じて3つのクラスに分けます。

クラスIは低リスクで、多くは届出だけで済み、手術用手袋や舌圧子が例です。クラスIIは中程度で、多くの検査装置や注入ポンプが入ります。クラスIIIは高リスクで、植込み型除細動器や人工心臓弁が該当します。

クラスは機器の種類ごとに規則で決まっていて、開発する側が選ぶものではありません。新しい機器の検討は、性能の議論より先に、既存のどの分類に当てはまるかを確かめるところから始まります。ここを取り違えると、必要な試験の種類まで入れ替わります。

経路主な対象示すことFDAの表現
510(k)クラスII既存の機器と実質的に同等clearance(認可)
De Novo前例のない低〜中リスクの機器新しい分類を作る。以後の比較相手になるgranted(認可)
PMAクラスIII臨床データによる安全性と有効性approval(承認)

件数の差も大きく、民間の推計(Emergo by UL)では、2024年にFDAが認めたのは、510(k)が約3,100件、De Novoが47件、新規のPMAが33件でした。市場に出る医療機器の大半は510(k)を通っています。審査にかかる時間の目標は、FDAが審査に使う日数で、510(k)が90日、De Novoが150日、PMAが180日です。企業が追加資料を出している間は日数に数えないので、実際の暦の上ではもっと長くなります。

クラスは規則が決める判定で、経路はそこから決まります。自社の機器がどの分類に当たるかが、最初の確認です。

510(k) ― 同等であることだけを示す

クラスIIの機器でもっとも使われる経路です。

論理は単純で、既に市場にある機器(predicate、比較相手)と実質的に同等であることを示します。同等なら、同じ水準の安全性と有効性が期待できる、という考え方です。使用目的が同じか、技術的な特性が同じか、違うならそれが新たな安全性や有効性の問題を生まないか、が見られます。

臨床試験は必須ではなく、ベンチ試験、生体適合性、電気安全性、ソフトウェアの検証といった非臨床のデータが中心です。ロシュとリリーが共同開発したElecsys pTau217も、この経路でFDAの許可を受けました(ニュース)。

だから510(k)を通った機器は、approvalではなくclearanceと表現されます。示されたのは、既存の機器と同等ということだけです。比較相手にまた新しい機器が続く連鎖が長くなると、最初の機器から性質が離れていくことがあり、制度上の論点として議論されてきました。

実例が、骨盤臓器脱の治療に使う経腟メッシュです。最初の製品は2002年にFDAの認可を受けて市場に出て、2016年1月、FDAはこのメッシュをクラスIIからクラスIIIへ引き上げ、PMAを求めました。2019年4月、FDAはPMAの申請を審査した結果、Boston ScientificとColoplastの残る製品は安全性と有効性の合理的な保証を示せなかったとして、販売の停止を命じました。clearanceは、将来にわたって安全と有効が保証されたという意味ではありません。

510(k)が示しているのは「この機器は安全で有効だ」ではなく、「既にある機器と実質的に同じだ」という一点です。

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De NovoとPMA ― 新しい枠を作る道と、臨床データを積む道

前例となる機器がなくても、リスクが高くないことがあります。

従来、この場合は自動的にクラスIIIとなり、PMAが必要でした。De Novoは、この負担を避けるための経路で、前例のない機器に新たなクラスIまたはIIの分類を作ることを申請します。認められると、その機器は以後の比較相手に使えます。クラスIIとして分類された場合は、一般的な管理だけでは足りない点を補う特別な管理措置(special controls)も、同時に定められます。

2026年8月、FDAはVitestroの採血ロボットAlettaをDe Novoで認めました(ニュース)。あとに続く同じ種類の機器は、Alettaを比較相手にして510(k)で申請できます。Abbottの「Libre Duo 10 Day」も、グルコース微生物発酵でエネルギー源となる糖類などの炭素源と、目的遺伝子の発現を促す誘導物質のことです。詳しく →とケトンを同時に測るセンサーとしてDe Novoで認可され、開発中にはブレークスルーデバイス指定(命に関わる、または不可逆的に身体機能を損なう疾患の治療や診断を、より有効にしうる機器の審査を促進する仕組み)を受けていました(ニュース)。ブレークスルーデバイス指定は経路そのものを変えるものではなく、510(k)、De Novo、PMAのどれとも組み合わせられます。

PMA(Pre-Market Approval)は、クラスIIIの高リスク機器に求められる経路です。臨床試験のデータによる安全性と有効性の立証が原則で、製造施設の査察があり、承認後の変更にも内容に応じた申請が要ります。医薬品の承認申請に近い枠組みで、approvalと表現されるのは基本的にこの経路だけです。2026年7月にFDAのPMAを取得したTraferox TechnologiesのTorEx(摘出した肺を体外で評価し蘇生させる装置)が、その例です(ニュース)。

日本語の「承認」がぴったり当てはまるのはPMAだけです。他の二つの経路を承認と読むと、示されたことを実際より重く受け取ります。

作る側に起きること ― 品質システムとコンビネーション製品

経路にかかわらず、市販後の製造には品質システムの要求がかかります。

医薬品のGMPに相当する枠組みで、FDAの品質システム規則(21 CFR Part 820)は、2026年2月2日からQMSR(Quality Management System Regulation)になりました。国際規格のISO 13485:2016を取り込んだ形で、用語も規格に寄せられています。

医薬品のGMPと違うのは、設計そのものが規制の対象になる点です。設計の入力、出力、検証、妥当性確認試験法が目的に合う性能を持つことを立証する妥当性確認。正確さ・精度などを評価する。詳しく →の記録が査察で見られます。そのうえで、供給者管理、装置の適格性評価と工程バリデーション、ソフトウェアを含む機器ならコンピュータ化システムの検証、市販後の不具合報告が加わります。

他社の部品を組み込む製品では、片方が設計や製造を変えたとき、相手にいつどう知らせるかの取り決めが要ります。Abbottのセンサーとインスリンポンプの連携も、組み合わせごとの確認を経て、1組ずつ広げる計画です。

医薬品と機器が一体になった製品は、コンビネーション製品として扱われます。プレフィルドシリンジ、オートインジェクター、薬剤溶出ステントが例です。主たる作用機序薬が効果を発揮する仕組み。抗体医薬ではADCCやCDCなどが該当し、アッセイで裏づける。詳しく →で、どの部署が主管するかが決まります。薬剤が主なら医薬品の申請の中でデバイス部分を扱い、機器が主なら機器の経路の中で薬剤部分を扱います。製造の側は、医薬品のGMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく →と機器の品質システムの両方を満たす必要があり、設計管理、リスクマネジメント、変更管理の運用が込み入ります。医薬品のGMPしか経験がない組織は、最初に設計管理でつまずきやすく、仕組みを後から足すより、開発の初期から入れるほうが早く済みます。

血液検査などの体外診断薬(IVD)も、医療機器として同じ分類で扱われます。性能の示し方に固有の点があり、感度と特異度を想定する集団で示し、判定の境目(カットオフ)をどう決めてどう検証したか、既存の確定診断法との一致を見ます。標準物質が共通でなければ、カットオフは検査ごとに固有です。

日本では、クラスI〜IVに分けて、届出、第三者機関の認証、PMDAの審査による承認に振り分けます。欧州では、MDRとIVDRの下で、クラスに応じて認証機関(Notified Body)の関与が変わります。同じ機器でも地域によって分類と経路が異なることがあり、グローバルに開発するなら、各地域の要求を並行して満たす設計が求められます。

機器の側では、設計そのものが規制の対象です。これは医薬品のGMPにはない発想です。

明日から確かめられること ― ニュースと取引先の読み方

認可の先には、もう一段あります。Bridge to Lifeの肝臓向け低温酸素灌流装置「VitaSmart」は、2026年1月にFDAのDe Novo認可を受けたあと、同年8月に英国のNICEがNHSでの採用を推奨しました(ニュース)。FDAの認可は売ってよいという判断で、NICEの推奨は公的な財源で買うという判断です。普及が始まるのは、後者が決まってからです。

「FDA承認」のニュースを読むとき、あるいは取引先の機器を評価するときは、次の点を確かめます。

  • 発表の表現は、clearance、granted、approvalのどれか
  • 経路は510(k)、De Novo、PMAのどれか。510(k)なら、比較相手の機器は何か
  • De Novoなら、special controlsに何が定められたか
  • 臨床データはあるか。あるなら、対象は誰か
  • 部品や試薬を納める側なら、取引先がQMSR(ISO 13485)に沿った品質システムを持ち、設計変更を通知する取り決めがあるか
  • 日本や欧州で、同じ機器が同じ区分か
  • 償還の見通しは、どこまで進んでいるか

医薬品側の関連は、オートインジェクターの組み立てやプレフィルドシリンジの注射性で読めます。標準物質の考え方は標準物質の設定に、分析法の特異性分析法において、共存する不純物・分解物・添加剤などが存在しても目的成分だけを正確に測定できる能力。詳しく →は分析法の特異性と選択性にまとめています。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、共通に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。