用語集

Fab」とは?

重鎖の一部と軽鎖がジスルフィドで連結した約50kDaの抗体フラグメント。2本鎖で折りたたみがやや複雑。

FabはIgG抗体の「腕」にあたる部分で、抗原との結合を担うフラグメントです。重鎖の一部と軽鎖がジスルフィド結合で連結した2本鎖構造であるため、単一鎖のフラグメントと比べて製造・安定性の両面で固有の難しさがあり、実務上の注意点が生じます。

FcやscFv・VHHと何が違うか

典型的なIgG抗体はFab部分とFc部分からなり、抗原への結合はFabが、エフェクター機能や体内動態にはFcが関わります。FcにはCH2・CH3というドメインがある一方、FabはVHとVLという2つのドメインの組み合わせで抗原を認識します。同じ2ドメイン構成のscFvが1本の鎖にまとまっているのとは異なり、Fabは重鎖側と軽鎖側の2本鎖がジスルフィドで連結した構造であるため、鎖どうしの対合を正しく成立させる必要があります。一方でVHHは単一ドメインで完結するため対合ミスが起きず、Fabはscや比べて条件検討に手間がかかる傾向があります。

大腸菌での発現と相性の理由

FabはFc由来の糖鎖修飾を必要としない構造であるため、CHO細胞ではなく大腸菌などの微生物で製造できます。ただし正しいジスルフィド結合の形成が必要であり、大腸菌においては細胞質ではなくペリプラズムと呼ばれる酸化的な区画が適しています。ペリプラズムにはジスルフィド結合形成に関わる酵素がそろっているため、Fabのような構造と相性が良い場所とされています。製造の使い分けの判断軸は、糖鎖の要否とFcの有無という点に集約されます。

熱安定性の見方と可変領域の影響

抗体はFab・CH2・CH3などドメインごとに安定性が異なるため、加熱した際に複数の変性転移が現れます。一般にIgG1ではCH2が比較的低い温度で先に変性しやすく、FabやCH3はより高い温度まで折りたたみを保つ傾向があります。ただしFabの安定性は可変領域の配列に強く影響されるため、抗体によってドメインの変性順が入れ替わることもあります。Fab部分のTmが目安となる温度を下回ると熱安定性の面で注意が要るという見方が紹介されることもありますが、これはあくまで一つの目安であり、分子の種類や用途、他の指標との兼ね合いで判断は変わります。

この定義はProglenth編集部が一般的・基礎的な内容として整理したものです。実際の管理基準・要件は製品・企業・各極の規制により異なります。 正確な運用は各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報をご確認ください。

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