米Merck & Co.(米国とカナダ以外ではMSD)は10月14日、ペンシルベニア州ウェストポイントの拠点で、生体試料の分析施設「ADVANCE」を開所しました。臨床開発のプログラムで集めた生体試料を、自動化したロボットとAIを使うデジタルツールで分析する施設です。同社によると、近くのSpring House Innovation Parkの研究開発施設と合わせた投資額は約5億5,000万ドルで、米国内の製造と研究開発に700億ドル超を投じる既発表の計画の一部にあたります。1日に扱う検体の数、ロボットに載せた測定法の種類、AIを分析のどの段階で使うかは公表していません。
臨床検体の測定を、ロボットとリアルタイムのデータ管理で回す施設
臨床試験では、被験者から採った血液などの検体で、薬の血中濃度や、薬に対する体の反応を示すバイオマーカーを測ります。薬の濃度を測る作業はバイオアナリシスと呼ばれ、その値からAUCやCmaxを求めて用量や投与間隔を決めます。薬の濃度の測定法は、国際的な指針ICH M10に沿って精度や再現性を事前に確かめてから本番の検体に使います。開発中の品目と試験が増えるほど、同じ精度で測る検体の数も増えていきます。
Merckは、ADVANCEがロボット、自動化、リアルタイムのデータ管理を、モジュール式の建設や組み替えのきく実験室の設計と組み合わせ、臨床の測定(アッセイ)を速く回せるようにすると説明しています。
ウェストポイントは、同社で最大の、研究とヒト用医薬品の製造を一体で行う拠点です。会長兼CEOのRob Davis氏はこの施設を「Merckの臨床開発の未来」と表現し、開所式にはペンシルベニア州知事のJosh Shapiro氏も出席しました。
自動化の先で問われる点
どの測定法をロボットに載せたのか、手作業と比べて結果が出るまでの時間がどれだけ縮むのかは、今回の発表に含まれていません。臨床検体の測定結果は、規制当局への申請で用量や安全性を説明する根拠として使われます。測定の装置や手順を替えるときは、測定法の性能を確かめ直し、記録が欠けたり書き換えられたりせずに残る仕組み(データインテグリティ)を示す必要があります。
大手製薬が臨床の測定を自社の自動化施設に集める動きは、受託分析機関との分担の見直しにも関わることがうかがえます。
臨床検体の測定を、人の手順からロボットとAI、リアルタイムのデータ管理で回す形に替えた施設です。どの測定法で、どれだけの検体を、規制の求めるバリデーションと記録を保ったまま回せるかが示されれば、他社が同じ設計を採るかを判断できます。
※ 本ページは2026年10月14日のMerck & Co.の発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。