Manufacturing Chemist の報道によれば、欧州のコンソーシアム PIPAC が連続API製造プラットフォームを検証した。連続フロー化学、リアルタイム分析、AIによる工程制御を組み合わせ、医薬品原薬の製造をより柔軟かつ強靭(resilient)にすることを狙う内容である。
3つの要素が噛み合って初めて成立する
連続製造は、単に「止めずに流す」ことではない。3つの要素が揃って初めて機能する。
連続フロー化学は、反応をバッチ釜ではなく細い流路で行う方式である。表面積と体積の比が大きいため伝熱が速く、発熱反応の制御がしやすい。滞留時間を流速で決められるため、過反応を抑えやすい。危険性の高い中間体を、生成した直後に次の反応へ送る設計も取れる。
リアルタイム分析がなければ、この利点は活きない。流れ続ける系では、後からサンプルを取って合否を決める発想が成り立たない。その瞬間の状態を測り続ける必要がある。分光法などによるインライン計測が前提になる。
工程制御は、測った値をもとに条件を戻す部分にあたる。ここにAIが入るというのが今回の要素である。反応の状態と操作条件の関係をモデル化し、変動が出たときに先回りして調整する——という設計思想と読める。
PATと連続生産は、この3点セットとして語られてきた領域である。
「強靭(resilient)」という言葉の意味
発表が柔軟性と並べて強靭さを挙げている点には背景がある。
原薬の供給は、特定の国・特定の工場に集中してきた。感染症の流行や地政学的な事情で供給が滞る事例が繰り返され、必要なときに必要な場所で作れるかが政策的な関心事になっている。
連続製造は、この文脈で持ち出されることが多い。理由は設備の小ささにある。
- バッチ釜より小型で済むため、設置に要する面積と投資が小さい
- 生産量は「流す時間」で調整できるため、規模の変更が比較的容易
- 小さいということは、分散配置しやすい
低分子原薬の製造では、スケールアップのたびに反応条件を取り直す作業が発生する。連続系では、同じ流路をより長く回すことで量を増やす設計が取りうるため、スケールアップの概念そのものが変わるという主張がなされてきた。
検証されたことと、まだ分からないこと
「プラットフォームを検証した」という発表から実務が読み取るべきは、どの範囲で検証されたかである。
- 対象化合物:どの反応系で成立したのか。連続化しやすい反応と、しにくい反応がある
- 運転期間:どれだけ連続で回せたのか。長時間運転では閉塞や析出が課題になる
- 規制での扱い:ICH Q13 が連続生産の枠組みを示しているが、バッチの定義や逸脱時の処理は個別に設計する必要がある
コンソーシアム型の検証は、単独企業では負いにくい初期投資を分担する形として理にかなっている。成果がどこまで一般化できるかは、公開される条件次第になる。
※ 本ページは公開情報(Manufacturing Chemist の報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。参加機関・対象化合物・検証条件の詳細は一次情報をご確認ください。