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ラマン分光モニタリング

ラマン分光モニタリングは、培養液や工程液にレーザー光を照射し、分子由来の散乱光を解析することで、培養中の成分や状態をリアルタイムに推定するモニタリング技術です。細胞培養では、グルコース、乳酸、グルタミン、グルタミン酸、アンモニア、細胞密度、場合によっては力価や製品関連指標などを、ラマンスペクトルからモデル推定する目的で使われます。サンプルを毎回取り出して測定するオフライン分析とは異なり、プローブを培養槽に設置することで、非破壊・連続的に培養状態を追える点が特徴です。

培養モニタリングPATリアルタイム推定非破壊測定

用途・特徴

ラマン分光モニタリングは、培養中の化学成分や培養状態をリアルタイムに把握するために使われます。主な用途は、グルコース、乳酸、グルタミン、グルタミン酸などの培地成分・代謝物の推定、細胞密度や生細胞密度の推定、力価や製品濃度のモデル化、培養異常の早期検出、フィード制御、スケールアップ時の工程比較などです。

従来のバイオプロセス分析計では、サンプルを採取してオフラインまたはアットラインで測定します。ラマン分光では、培養槽に挿入したプローブやフローセルを通じてスペクトルを取得するため、サンプリング頻度を高めやすく、手動サンプリングの作業負荷を減らせます。

Point
  • 培養液にレーザーを照射してラマンスペクトルを取得する
  • グルコース、乳酸、グルタミンなどをモデル推定できる
  • サンプル採取を減らし、リアルタイムに培養状態を追える
  • フィード制御、PAT、QbD、工程理解に使われる
  • CHO細胞の本培養、灌流培養、AAV製造、微生物発酵などで使われる
  • オフライン分析値を使ったモデル構築・検証が必要
  • プローブ、光ファイバー、滅菌、洗浄、モデル管理が重要になる

使用方法

基本的には、ラマンプローブをバイオリアクターに設置し、培養中にスペクトルを取得します。そのスペクトルとオフライン分析値を対応づけて、目的成分を推定するモデルを作ります。

1ラマン分析計を準備する
2ラマンプローブやフローセルを選定する
3バイオリアクターへプローブを設置する
4滅菌、SIP、またはシングルユース接続の適合性を確認する
5培養中にラマンスペクトルを取得する
6同じタイミングでオフライン分析値を取得する
7スペクトルと分析値を対応づける
8グルコース、乳酸、細胞密度などの予測モデルを作る
9モデル精度を検証する
10培養モニタリングやフィード制御に活用する
実際の運用は、測定目的、培養槽、プローブ仕様、サンプリング頻度、オフライン分析の信頼性、モデル構築方法、GMP対応、データ管理によって変わります。

バイオプロセス分析計との違いは?

ラマン分光モニタリングとバイオプロセス分析計は、どちらも培養状態を確認するために使われますが、測定の考え方が異なります。

結論

バイオプロセス分析計は「採取したサンプルを直接測る装置」、ラマン分光は「スペクトルから培養状態を推定するPAT技術」と整理できます。

測定方法

サンプルを採取して分析する

プローブやフローセルでスペクトルを取得する

測定方式

オフライン、アットラインが中心

インライン、オンラインが中心

主な測定項目

グルコース、乳酸、pH、ガス、浸透圧など

スペクトルから成分濃度や状態を推定

リアルタイム性

サンプリング頻度に依存

高頻度・連続測定しやすい

モデル構築

原則不要な項目が多い

ケモメトリクスモデルが必要

精度管理

装置校正、QC、試薬管理

モデル精度、スペクトル品質、外れ値管理

強み

直接測定で解釈しやすい

非破壊・高頻度・多成分推定

注意点

サンプリング作業、試薬、測定時間

モデル構築、蛍光、気泡、プローブ汚れ

自動サンプリング装置との違いは?

項目自動サンプリング装置ラマン分光モニタリング
サンプル採取あり基本的に不要
測定対象採取した培養液培養槽内または流路内のスペクトル
接続先BioProfile、Cedex、HPLC、LC-MSなどラマン分析計、プローブ、解析ソフト
測定項目接続する分析装置に依存モデル化した成分・状態
データ頻度サンプリング間隔に依存高頻度測定が可能
強み既存分析装置を使える非破壊・リアルタイム・連続測定
注意点流路洗浄、キャリーオーバー、無菌性モデル構築、プローブ設置、スペクトル品質

NIR/FTIRモニタリングとの違い

項目ラマン分光NIRFTIR
原理ラマン散乱近赤外吸収赤外吸収
水の影響比較的受けにくい受けるが透過測定に使いやすい水の吸収が強く影響しやすい
得意な情報分子骨格、化学結合、溶液中成分水分、糖、タンパク質、成分推定官能基、化学構造、反応解析
バイオプロセス用途細胞培養モニタリング、PAT原料・粉体・培地・一部工程モニタリング反応・液体成分・原料確認
測定形態インライン/オンラインプローブが多いインライン/オフライン両方ATR、フローセルなど
注意点蛍光、気泡、プローブ汚れ水・散乱・モデル依存水、セル設計、流路適合性

ラマンモデルとは?

項目内容
スペクトル培養液中の分子情報を含む信号
教師データBioProfile、Cedex、HPLCなどで測定した実測値
モデルスペクトルから濃度や状態を推定する計算式
代表的手法PLS回帰、PCA、機械学習、ケモメトリクス
検証予測値と実測値のずれ、外れ値、ロット間再現性を見る
モデル移管装置間、スケール間、施設間でモデルが使えるか確認する
GMP運用モデル変更管理、バリデーション、監査証跡が重要

ラマンで見られる主な項目

項目内容主な用途
グルコース主要な炭素源フィード制御、栄養管理
乳酸代謝副産物代謝状態、培養負荷、pH変化
グルタミン窒素源・エネルギー代謝培地・フィード管理
グルタミン酸グルタミン代謝に関係代謝状態の確認
アンモニア代謝副産物細胞ストレス、培養終盤
細胞密度VCDや総細胞密度の推定増殖状態、接種・ハーベスト判断
生存率モデル化できる場合がある培養終盤の状態確認
力価製品濃度の推定産生トレンド、ハーベスト判断
アミノ酸モデルにより推定フィード最適化
培養異常スペクトル変化による兆候検出逸脱・異常検知

主なタイプ

タイプ内容向く用途
インラインラマンプローブを培養槽に挿入して測定する本培養、プロセス開発、PAT
オンラインラマン流路やフローセルで測定する自動サンプリング、下流工程、流体モニタリング
オフラインラマン採取サンプルを装置で測定するモデル構築、開発、QC補助
マルチチャンネルラマン複数プローブや複数槽を測定する並列培養、スケール比較
シングルユース対応プローブシングルユースバッグやSUBに適合するGMP、シングルユース製造
フローセル型流路中のサンプルを測るクロマト、下流工程、低濁度サンプル
高スループットラマン自動化ラボやロボットと連携ambr、並列培養、モデル構築
製造向けラマン防塵・防水・ラックマウント・GMP対応商用製造、プロセス監視

選定ポイント

測定目的グルコース、乳酸、細胞密度、力価など何を見たいか
測定方式インライン、オンライン、オフラインのどれか
培養槽適合性ガラス槽、SUB、ステンレス槽、ambrに接続できるか
プローブ滅菌、SIP、シングルユース、光路長、材質、洗浄性
レーザー波長785 nm、830 nm、1064 nmなど、蛍光影響や感度に関係する
スペクトル品質S/N、積算時間、蛍光、散乱、気泡影響に強いか
モデル構築PLS、PCA、機械学習、ケモメトリクス支援があるか
教師データBioProfile、Cedex、HPLCなどのオフライン分析値を用意できるか
モデル移管スケール間、装置間、施設間でモデルを使えるか
自動化連携フィードポンプ、バイオリアクター制御、SCADA、MESに接続できるか
GMP対応IQ/OQ、CSV、電子記録、監査証跡、モデル変更管理に対応するか
保守レーザー、プローブ、ファイバー、校正、サービス体制
導入負荷価格、モデル開発期間、解析人材、バリデーション負荷

使用される工程

ラマン分光モニタリングは、培養状態をリアルタイムに把握したい工程で広く使われます。

細胞株開発・クローン選抜

候補クローンの代謝・産生傾向を高頻度に確認する。

主な用途
  • 代謝確認
  • 産生傾向

シードトレイン

本培養へ渡す前の細胞状態や栄養消費を把握する。

主な用途
  • 細胞状態
  • 栄養消費

小型培養装置

ベンチトップや並列培養で培地・フィード条件を比較する。

主な用途
  • 条件比較

本培養

グルコース、乳酸、細胞密度、力価などをリアルタイムに推定する。

主な用途
  • 成分推定
  • 力価推定

フェッドバッチ培養

フィード添加タイミングや添加量の制御に使う。

主な用途
  • フィード制御

灌流培養

高密度培養の栄養・代謝状態を連続的に確認する。

主な用途
  • 連続モニタリング

ウイルスベクター製造

HEK293やSf9培養の代謝・細胞状態を監視する。

主な用途
  • 細胞状態監視

微生物発酵

基質、代謝物、発酵状態のモニタリングに使う。

主な用途
  • 基質・代謝物

プロセス開発

培地、フィード、pH、DO、温度、接種密度条件を比較する。

主な用途
  • 条件最適化

PAT

工程中データを使ってプロセス理解・制御につなげる。

主な用途
  • 工程理解
  • 制御

GMP製造

工程監視、逸脱予兆検知、トレンド管理で使われる場合がある。

主な用途
  • 工程監視
  • トレンド管理

下流工程

フローセルを用いてタンパク質濃度やバッファー条件を監視する場合がある。

主な用途
  • 濃度監視

使用されるモダリティー

ラマン分光モニタリングは、細胞培養や発酵が関係する多くのモダリティーで使われます。

抗体医薬
関連度
CHO細胞本培養フェッドバッチ灌流
グルコース、乳酸、細胞密度、力価推定に使われる。
ADC
関連度
抗体原薬用CHO細胞
抗体部分の本培養モニタリングで関係する。
二重特異性抗体
関連度
CHO細胞複数鎖発現本培養
産生・代謝トレンド確認に使われる。
Fc融合タンパク質・組換えタンパク質
関連度
CHOHEK293本培養
培養状態や産生トレンド確認に使われる。
AAV
関連度中〜高
HEK293Sf9Producer Cell
ウイルスベクター製造細胞の代謝・細胞状態確認に使われる。
レンチウイルス
関連度中〜高
HEK293TProducer Cell
ベクター産生細胞の工程理解で使われる。
ワクチン
関連度中〜高
VeroMDCK昆虫細胞
細胞増殖やウイルス増殖工程のモニタリングで関係する。
細胞治療
関連度
T細胞NK細胞MSC
専用装置やバッグ工程での応用可能性がある。
iPS細胞・幹細胞由来製品
関連度
iPS細胞MSC分化細胞
培地状態や分化・拡大工程の非破壊モニタリングで関係する。
遺伝子編集
関連度
編集細胞Producer Cell
編集後細胞やベクター製造の培養状態確認で関係する。
mRNA-LNP
関連度
原料酵素生産評価細胞反応液
mRNA本体より関連細胞培養や反応モニタリングで関係する。
プラスミドDNA
関連度中〜高
大腸菌発酵
基質・代謝物・発酵状態の監視で使われる。
微生物発酵
関連度
大腸菌酵母発酵工程
基質消費や代謝物生成をリアルタイムに追う用途で使われる。
低分子医薬品
関連度
フロー合成反応モニタリング晶析
反応進行、成分濃度、結晶化モニタリングで使われる。

メーカー製品

プロセスラマン分析計8
Endress+Hauser / Kaiser RamanRaman Rxn4 Analyzer製造・プロセス環境向けのラマン分析計。in situリアルタイム測定と制御に使われ、自己診断・自己校正機能を備える。公式URL Endress+Hauser / Kaiser RamanRaman Rxn2 Analyzer研究、初期プロセス開発、スケールアップでのin situ分析向けラマン分析計。ベンチトップまたは移動式カート構成で使われる。公式URL Endress+Hauser / Kaiser RamanRaman Rxn5 Analyzer製造プロセスや品質管理向けのラマン分析計。用途に応じてプローブや流路と組み合わせる。公式URL SartoriusBioPAT Spectro RamanQbDを支援するラマン分光プラットフォーム。自動データ取得とデータ統合により、バイオプロセスのリアルタイムモニタリングに使われる。公式URL BrukerRaman Process産業プロセス向けのインライン分子分析用ラマンソリューション。リアルタイム・非侵襲モニタリングで品質最適化に使われる。公式URL Mettler-ToledoReactRaman 802Lin situラマン分光装置。反応や晶析の進行をリアルタイムにモニタリングする用途で使われる。バイオプロセス用途では適合性確認が必要。公式URL Tornado Spectral SystemsTornado Raman SystemsHigh Throughput Virtual Slit技術を用いたラマン分光システムを展開。Sartorius BioPATやAmbrとの統合ソリューションが案内されている。公式URL Kaiser Optical Systems / Endress+HauserKaiser Raman Technologyバイオプロセス、化学プロセス、製造環境向けのラマン分光技術。現在はEndress+Hauserの光分析ポートフォリオに含まれる。公式URL
ラマンプローブ・フローセル8
Endress+Hauser / Kaiser RamanRaman Rxn-10 Probe製品・プロセス開発向けのコンパクトなラマンプローブ。交換式光学系により、液体・固体など多様なサンプルに対応する。公式URL Endress+Hauser / Kaiser RamanRaman Rxn-45 Probeバイオプロセスや液体プロセスのin situ測定に使われるラマンプローブ。培養槽やプロセスラインへの接続で使われる。公式URL Endress+Hauser / Kaiser RamanRaman Rxn-46 Probeバイオプロセス・製造環境でのin situ測定に関係するラマンプローブ。用途に応じて選定する。公式URL Endress+Hauser / Kaiser RamanRaman Flow Cell低濁度・低容量の流体サンプル向けフローセル。下流工程でのタンパク質濃度、バッファー、製品CQAなどのリアルタイムモニタリングに使われる。公式URL SartoriusBioPAT Spectro Probes / Raman IntegrationAmbrやBiostat STRなどとのラマン測定統合に使われるプローブ・接続構成。公式URL Tornado Spectral SystemsRaman Probes / Bioprocess Integrationバイオプロセス・Ambr・Sartorius BioPATとの統合で使われるラマンプローブ/測定構成。公式URL Mettler-ToledoRaman Probes for ReactRamanReactRamanと組み合わせるin situラマンプローブ。反応・晶析モニタリングで使われる。公式URL BrukerProcess Raman Probes産業プロセス向けラマンプローブ。インライン・オンライン測定に使われる。公式URL

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