抗体医薬基礎知識・精製

ハーベスト・清澄化とは?培養と精製をつなぐ回収工程

プロテインA抗体に特異的に結合するProtein Aを担体に固定し、抗体だけを選択的に捕まえて精製する手法です。抗体医薬の最初の精製工程として定番になっています。詳しく →カラムの差圧が上がる。無菌ろ過微細な孔のフィルターに液を通し、菌などの微生物を取り除く工程です。加熱できない製品を無菌にする手段で、0.22µm前後の膜が広く使われます。詳しく →のフィルターが想定より早く詰まる。原因を遡っていくと、たいていその手前のハーベストに行き着きます。培養が終わったタンクの中には、目的の抗体だけでなく、それを作った細胞と、壊れた細胞の断片と、コロイド状の夾雑物が一緒に浮いています。このまま樹脂に通せば、充填処方済みの溶液をバイアルやシリンジなどの容器へ無菌的に充填し、封止する製造工程。詳しく →層は一度で使えなくなります。

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ハーベスト・清澄化とは?培養と精製をつなぐ回収工程

清澄化は、この固形分を落として澄んだ上清を回収する工程です。核心は一点で、ここで狙う清澄度は自分では決まりません。後段のプロテインAと無菌ろ過が何を許すかで決まります。だから「できるだけきれいに」は設計になりません。濁度を下げるほどフィルターの容量も回収率添加した既知量の標準物質に対して試験で実際に測定された値の割合を示す指標で、試験の正確さを表す。詳しく →も落ちるので、どこで止めるかを後段から逆算する必要があります。上流の都合だけで引いた線は、必ずどこかで合わなくなります。

本稿では、何を捨てて何を残すのかから始めて、遠心分離という粗取り、デプスフィルターろ材の厚み全体で不純物を捕らえる深層ろ過フィルターで、細胞培養液の清澄化など、細胞残渣や粒子を多く含む液の一次ろ過に使います。詳しく →の仕組み、L/m² という容量の単位、濁度の目標の決まり方、荷電ろ材が粒子以外も取ること、そして灌流での連続ハーベストを整理します。最後に、決める順番を並べます。数値は細胞株と培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →と装置で動くので、桁の感覚として読んでください。

この記事の要点
  • 清澄化は固形分を捨てて上清を残す工程で、抗体の多くは分泌されるので目的物は上清側にあります。
  • デプスフィルターの容量は L/m² で表され、差圧 1 bar を上限とした報告では 105〜180 L/m² の範囲です。
  • 通過後の濁度は 10 NTU を下回ることが、後段の 0.2 µm フィルターを守る目安です。

何を捨て、何を残すか

最初に、対象を整理しておきます。

除くのは三つです。宿主細胞そのもの、培養末期に増える細胞デブリ、そしてコロイド粒子と凝集物。どれも後段に持ち込まれると、フィルターとクロマト樹脂カラムに充填する多孔質ビーズ。表面のリガンドと成分の相互作用差で目的物と不純物を分離する。詳しく →の容量を食い、工程全体の効率を下げます。

残すのは上清です。モノクローナル抗体単一のクローンに由来し、同じ標的部位を認識する均一な抗体。詳しく →の多くは細胞外へ分泌されるので、目的物は液のほうにあります。細胞内に溜まる産物なら細胞を回収して破砕する設計を取りますが、抗体では上清を残すのが基本です。

そして、この工程の難しさは培養の成績と連動しています。高密度で高力価のロットほど回収したい抗体は多く、同時に除くべき固形分も多い。生細胞密度培養液中の生きた細胞の密度。灌流速度はCSPR×密度×体積で決まる。詳しく →が 20×10⁶ cells/mL を超え、生存率細胞集団のうち生きている細胞の割合。凍結・培養の品質を示す基本指標。詳しく →が 70% を割るような条件では、デブリ破砕で生じる細胞の破片。過度な破砕で微細化すると後段の遠心・ろ過を妨げる。詳しく →の量が一気に増えます。 清澄化の負荷は培養の出来で決まるので、フィルターの面積を固定した設計は、いずれどこかのロットで破綻します。

一次清澄化 ― 遠心分離という粗取り

固形分の多い培養液を、いきなりフィルターに通すと短時間で詰まります。

そこで多くの工程では、連続式の遠心分離を前に置きます。ディスクスタック型が代表で、比重差で固形分を沈降させ、上清を連続的に抜きます。Alfa Laval、GEA、Pierre Guerin といったメーカーの装置が使われます。消耗品なしに大量の固形分を落とせるので、高密度培養菌体を高い密度まで増やして、容積あたりの生産性を高める培養。詳しく →では効きます。

ただし副作用があります。せん断流れの中で分子にかかる物理的な力。強すぎると抗体の凝集や微粒子発生を招く。詳しく →で細胞が壊れれば、微細な断片が増えて上清の濁度はかえって上がる。回転数と流量は、このトレードオフを見ながら決めます。装置に入る前の送液も同じで、Quattroflow のようなダイアフラムポンプや Levitronix の低せん断ポンプが選ばれるのは、この理由です。

遠心後の上清は、まだ後段へ送れる状態ではありません。報告されている例では、遠心後の濁度が 85〜91 NTU あたり。ここから先はろ過が受け持ちます。 遠心分離比重差を利用して固形分を沈降・分離する操作。清澄化では大きな細胞塊や固形分の粗取りに使う。詳しく →は粗取りであって、仕上げではありません。

デプスフィルター ― 厚みの中で捕まえる構造

二次清澄化の中心がデプスフィルターです。

表面で止めるメンブレンと違い、厚みのあるろ材の内部に粒子を捕まえます。セルロースや珪藻土珪藻土などの粒子や凝集剤を加えてろ過層をつくり、目詰まりしにくくして固形分の分離を助ける補助材です。詳しく →を基材にしたものと、合成材のものがある。ろ材の中で孔径フィルター膜に存在する細孔の公称上の大きさを示す値で、保持できる粒子・微生物の最小サイズの目安となる指標(ただし実際の保持性能はバクテリアチャレンジ試験で実証される)。詳しく →が勾配を持っていて、入口側で大きい粒子を、奥へ行くほど細かい粒子を捉えます。保持できる容量が表面ろ過よりずっと大きいのは、この構造のためです。

製品としては、Merck の Millistak+ HC Pro と Clarisolve、Sartorius の Sartoclear DL-Series と S-Series、Pall の Seitz HP と Stax、Thermo Fisher Scientific の Zeta Plus、Eaton の BECOPAD、FILTROX の PURAFIX、Cobetter、Parker Hannifin、Ahlstrom といったところが並びます。グレードが細かく分かれているので、粗いものと細かいものを直列に組む設計も取られます。

下流には 0.2 µm 前後のメンブレンを置き、最終の微粒子とバイオバーデン工程中に存在する微生物の量。長時間の連続運転では管理の時間軸がバッチより長くなる。詳しく →を落とします。デプスフィルターが中粒子を受け持ち、メンブレンが仕上げる。 この直列構成のうち、どこまでをデプスに任せるかが設計の中身です。

POINT

デプスフィルターのグレードを細かいものだけで組むと、通過後の濁度は下がりますが、面積あたりの処理量が落ちて必要面積が膨らみます。逆に粗いものだけだと、下流の 0.2 µm フィルターが先に詰まる。二段に分けて、粗いほうに負荷を吸わせる設計が取られるのは、この配分を調整するためです。

容量という単位 ― L/m² からの逆算

設計の中心にある数字が、面積あたりの処理量です。

単位は L/m²。そのフィルターが1平方メートルあたり何リットルの培養液を通せるかを表します。終点は差圧膜の両側にかかる圧力の差。ろ過の流れを生む力で、上げても壁律速の領域では流量が増えなくなる。詳しく →で決まり、報告では 1 bar を上限として評価する例が多い。この条件で、105〜180 L/m² という値が報告されています。

この数字が決まると、必要面積が逆算できます。2,000 L の培養液を 150 L/m² のフィルターで処理するなら、約 13 m²。カートリッジペン型インジェクターなどに装填する円筒容器。複数回投与や特定デバイスとの組合せで選ばれる。詳しく →1本の面積が分かっていれば、本数まで出ます。

逆に言うと、容量を実測しないと面積が決まりません。しかも容量は培養の状態で動きます。同じフィルターでも、生存率の高いロットと低いロットでは倍近く変わることがある。だから小スケールで培養液を実際に通して、差圧と濁度の推移を取ります。処理速度は 50〜200 LMH の範囲で設計されることが多く、ここも合わせて決めます。 必要面積はカタログから読むものではなく、自社の培養液で測って出す数字です。

濁度の目標は後段が決める

どこまで澄ませるかの答えは、清澄化の中にはありません。

目安として広く使われているのは、デプスフィルター通過後の濁度を 10 NTU より下に置くことです。この水準なら、下流の 0.2 µm フィルターが想定どおりの寿命で働く。条件のよい組み合わせでは 5 NTU 前後まで落ちたという報告もあります。

ただし低ければよいという話ではありません。濁度を下げるほど細かいグレードが要り、面積あたりの容量は落ち、フィルターに吸着される抗体も増えます。回収率は 95% を超えたいところなので、清澄度を追いすぎると別の指標が崩れます。

だから目標は後段から引きます。プロテインAの差圧上昇がどこまで許せるか。無菌ろ過のフィルター面積はいくつ取れるか。そこから逆算した濁度が、清澄化の合格ラインです。濁度計は Hach のような機種がよく使われ、工程内管理工程の途中で中間体の力価や純度などを確認する管理。最終規格の前に品質を作り込む要素。詳しく →として連続で追う構成も取られます。 「できるだけきれいに」は目標ではなく、後段の許容値を写した数字だけが目標です。

荷電と吸着 ― 粒子以外も落ちる仕組み

デプスフィルターが落としているのは、粒子だけではありません。

多くのろ材は正の荷電を持っています。負に帯電した宿主細胞DNAや、一部の宿主細胞タンパク質医薬品を作る宿主細胞に由来するタンパク質の不純物です。安全性に関わるため、精製後の残存量を測ります。詳しく →が静電的に吸着されます。粒子として大きくない夾雑物が、ここで減る。合成材でこの機能を強めた製品もあり、Thermo Fisher Scientific の Emphaze AEX Hybrid Purifier は、サイズによる捕捉と陰イオン交換正に帯電した担体に負電荷の物質を吸着させて分離する手法。フロースルーでDNAやウイルスを除くのに使う。詳しく →を一体にした構成を取っています。Pall の AKS Activated Carbon や Merck の Millistak+ CR40 Carbon のように、活性炭溶液中の色素や微量の不純物を吸着して取り除く吸着剤で、精製工程で色や不純物を減らすために使います。詳しく →を組み合わせた製品もあります。

効いてくるのは後段です。ここで DNAHCP を減らしておけば、プロテインA後のポリッシュ工程捕捉工程後に残存する微量不純物をさらに取り除き、製品の純度・品質を最終規格まで高めるための精製工程。の負担が下がります。清澄化を単なる前処理細胞移植の前に患者へ行う処置。生着の場を空けるために既存の骨髄細胞を減らす目的で実施される。詳しく →として設計すると、この余地を使わないまま通り過ぎます。

一方で、荷電による吸着は目的の抗体にも働きます。pH と導電率液のイオン強度の目安となる電気の通りやすさ。バッファ調製やクロマト制御で監視する。詳しく →の条件次第で、回収率が落ちる。 ろ材の荷電は夾雑物を減らす仕組みであると同時に、抗体を失う仕組みでもあります。

灌流での連続ハーベスト

培養方式が変わると、清澄化の形も変わります。

フェドバッチ種培養で増やした細胞を大型の培養槽に移し、目的物質を本格的に産生させる最終段階の培養です。栄養を追加しながら育てるフェドバッチが広く使われます。詳しく →では、培養終了後に全量を一度に処理します。負荷の山は一回で、その一回に耐える面積を用意すればよい。灌流では、運転中ずっと上清を抜き続けるので、清澄化も連続運転です。灌流培養の記事で扱っているとおり、細胞は保持装置で槽に留まるため、抜ける液の固形分負荷はフェドバッチより軽くなります。

そのかわり、時間軸での安定が問われます。2週間から1か月を超える運転のあいだ、培養の状態は変わり続ける。初日の条件で組んだフィルターが、後半でも同じ容量を出すとは限りません。切り替えの設計と、そのときの無菌性の担保が論点です。

連続生産の構成では、この清澄化の出口がそのままサージタンク連続工程で流量や液量の変動を吸収する緩衝用のバッグやタンクです。前後の工程の流れの差を一時的にためて調整し、流れを安定させます。詳しく →を経て捕捉クロマトへつながります。 連続ハーベストで問われるのは一回の清澄度ではなく、その清澄度を何日保てるかです。

POINT

灌流の清澄化では、フィルターの交換をどう設計するかが無菌性の論点です。閉じた流路のまま切り替えられる構成にしておかないと、交換のたびに開放操作が入ります。切り替えの頻度は容量から見積もれるので、運転期間と合わせて先に本数を決めておきます。

決める順番

最後に、順番を並べます。

先に決まるのは、後段が許す濁度です。プロテインAと無菌ろ過の側から、通過後の目標を引く。 ここが決まらないまま小スケール試験を組むと、何をもって合格とするかが試験の途中で揺れます。

次に、培養のワーストケース溶けにくく毒性が高い製品や洗いにくい箇所など、最も厳しい条件を選んで代表評価する考え方。詳しく →を決めます。生細胞密度と生存率が、どこまで悪い条件を想定するか。その条件の培養液で容量を測らないと、面積が足りない事態が起きます。

そのうえで構成を組みます。遠心を置くか置かないか。デプスフィルターを何段にするか。粗いグレードと細かいグレードの配分をどうするか。 面積は L/m² の実測から出すもので、処理量から比例で置くものではありません。

最後に、荷電による吸着をどこまで使うかを決めます。DNAとHCPを清澄化で落とすほど後段は楽ですが、その楽は抗体の回収率と引き換えです。ここは後段のポリッシュ精製の仕上げ段階。イオン交換や疎水性相互作用で凝集体や電荷異性体などの微量不純物を除く。詳しく →工程の設計と合わせて決めます。

参考文献

この記事に関連する工程

モノクローナル抗体23工程全工程を見る →
  1. 細胞株・シード1工程
  2. 培養・産生3工程
  3. 回収・清澄化1工程
  4. 精製8工程
  5. 製剤・充填2工程
  6. 品質特性・分析8工程
より詳しい工程情報を見る
  • 23工程の基準法と、その選び方の根拠
  • 各工程の装置・試薬とメーカー
  • 代替・補完の選択肢 67

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、抗体医薬に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。