用語集

ITR」とは?

別名・英語表記:逆位末端反復配列

AAVゲノムの両端にある逆位末端反復配列。複製とパッケージングのシグナルとして働き、この間の配列がカプシドに詰め込まれる。

ITRはAAVゲノムの両端に位置する逆位末端反復配列で、複製・パッケージングのシグナルとして機能し、この間の配列がカプシドに封入されます。すべてのrAAVゲノムに共通して存在する保存領域であるため力価測定のターゲットとして使われますが、その特殊な構造が測定精度の落とし穴になるため、製造・品質の実務では扱いに注意が必要です。

ITRと導入遺伝子、何が違うのか

ゲノム力価を測る際、ターゲットの選択肢はITRと導入遺伝子の大きく二つに分かれます。ITRはどのrAAVにも共通して存在する保存領域である一方、導入遺伝子はプロモーターや目的遺伝子、ポリA配列などを含む内部領域で、製品ごとに設計が異なります。ITRを狙った値と導入遺伝子を狙った値が一致しないことは珍しくありませんが、これはどちらかの測定が間違いというわけではなく、ゲノムの異なる部分を数えている結果です。報告時に標的領域を明記することが、値の正確な解釈には欠かせません。

二次構造が力価測定を難しくする理由

ITRはGCに富んだヘアピン(回文配列)という強い二次構造を持っており、PCR増幅が妨げられやすいという特性があります。この構造が増幅を阻害すると、実際の力価よりも低い値が算出される過小評価につながります。これを緩和するために、測定前に制限酵素でゲノムを線状化してヘアピン構造を解く前処理が併用されることがあります。また、プラスミドとして大腸菌で増やす際にも、パリンドローム・反復構造であるITRは不安定で脱落しやすく、組換え欠損の背景株を使うことが構造の安定維持に寄与するとされています。

ceDNA/CELiDとの関係

ITRはAAV以外の文脈にも登場します。両端が閉じた直鎖状DNAの一形式であるceDNA/CELiDは、AAVのITRとRepを利用してヘアピン末端を形成する方式です。酵素反応でヘアピンを作るdoggybone DNAとは製造原理が異なりますが、ITRの「末端シグナル」としての機能をAAV以外の核酸製剤にも応用しようとする動きであり、ITRの構造的役割の広がりを示す例といえます。

この定義はProglenth編集部が一般的・基礎的な内容として整理したものです。実際の管理基準・要件は製品・企業・各極の規制により異なります。 正確な運用は各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報をご確認ください。

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