湿式造粒と乾式造粒とは?工程の短い方法を選べばよいのか

湿式造粒と乾式造粒は、錠剤を打つ前に原料の粉を粒にする方法です。湿式造粒は結合剤の液で練って粒にし、乾式造粒は粉を強く押し固めてから砕きます。造粒せずに混ぜてそのまま打つ直接打錠(直打)と合わせて、処方の開発の早い段階でどれを使うかを決めます。
とはいえ、工程の短い方法を選べば、効率よく錠剤を作れるとは限りません。 工程を省くほど、原料の粉の性質がそのまま錠剤の出来に表れるからです。
この記事では、造粒が何を防ぐのか、工程の短さだけで選べない理由、何を基準に方法を選ぶか、自分の処方で何から確かめるかを順に説明します。
- 造粒とは:原薬と添加剤を1つの粒に閉じ込め、粉の流れの悪さと成分の分かれ(偏析)を防いで、1錠ごとの重さと含量をそろえる工程です。
- 短い工程を選べばよいのか:直打では粉の流れと固まりやすさがそのまま効き、乾式造粒では打錠で固まりにくくなることがあります。
- 何で選ぶのか:錠剤の中で原薬が占める割合と粉の性質をまず見て、次に原薬の水と熱への強さを見ます。
1. 造粒とは、何を防ぐための工程なのか
造粒は、粉の流れの悪さと成分の分かれを防ぎ、1錠ごとの重さと有効成分の量をそろえるための工程です。
打錠では、臼に入った粉の体積で錠剤の重さを決めています。細かい粉は粒どうしがくっつきやすく、ホッパー(粉をためて臼へ送る容器)の中で詰まったり、流れ方がばらついたりします。すると臼への入り方が回ごとに変わり、重さがそろいません。
もう1つの問題が偏析です。粒の大きさや密度が違う成分は、振動や流れの中で分かれていきます。混ぜた直後は均一でも、臼に届くまでに偏ることがあります。
- 湿式造粒:結合剤を溶かした液を粉に加えて練り、湿った塊を砕いて乾かし、粒の大きさをそろえます。
- 乾式造粒:2本のロールの間で粉を板状に押し固め(ローラーコンパクション)、それを砕いて粒にします。水も熱も使いません。
- 直打:造粒をせず、混ぜた粉をそのまま打ちます。
造粒では原薬原薬。精製を終えた有効成分そのもので、製剤化する前の段階を指す。詳しく →も添加剤も粒の中で固定されるので、運ぶあいだに分かれにくくなり、粒が大きくなるぶん流れもよくなります。つまり、3つの方法の違いは、水と熱を使うかどうかと、粉を何回押し固めるかにあります。
2. なぜ、工程の短い方法がいつも有利とは限らないのか
工程を省いた分だけ、粉の性質や押し固めた履歴が、錠剤の出来に直接響くからです。
工程は、湿式造粒、乾式造粒、直打の順に短くなります。それでも短い方法を選べない理由は2つあります。
- 直打では粉の性質がそのまま効く:原薬の割合が高く、その原薬が細かくて流れにくい粉なら、重さがそろいません。原薬がごく微量でも、混ぜむらや偏析で含量がそろわないことがあります。
- 乾式造粒では打錠で固まりにくくなることがある:一度強く押し固めた粒は変形できる余地を使い切っていて、打錠でもう一度押したときに結びつきにくくなります(再圧縮性の低下)。
再圧縮性の低下は、結晶セルロースのように押されて形を変えやすい材料ほど起きやすいとされます。粒が大きく硬くなり、粒どうしの接点が減ることも原因に挙げられているため、ロールの圧力を上げすぎないことが大切です。
一方で、工程の長い湿式造粒にも弱みがあります。水と熱を通すため、加水分解しやすい原薬や熱に弱い原薬では、安定性への影響を確かめます。結晶が水和物に変わったり、非晶質の原薬が結晶に戻ったりすることもあります。
このように、どの方法にも、工程の長さとは別の失敗の起こり方があります。では、何を見て方法を決めればよいのでしょうか。
3. では、何を基準に方法を選ぶのか
最初に見るのは錠剤の中で原薬が占める割合と粉の性質で、次に見るのが原薬の水と熱への強さです。
原薬の割合が低ければ、直打が候補に入ります。流れやすく固まりやすい直打用の添加剤が錠剤の大半を占め、全体の性質を添加剤の側で決められるからです。ただし原薬がごく微量なら、含量をそろえるために湿式造粒で粒の中に閉じ込める手が選ばれます。
原薬の割合が高く、流れにくい粉なら、造粒が要ります。そのうえで、水や熱で分解したり結晶の形が変わったりする原薬なら乾式造粒を、そうした心配がなければ幅広い処方に使える湿式造粒を第一の候補にします。

| 方法 | 向く場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 湿式造粒 | 幅広い処方。原薬の割合が低い製品の含量をそろえたいとき | 水と熱による分解、結晶形の変化。工程が長い |
| 乾式造粒 | 水や熱に弱い原薬 | 打錠で固まりにくくなることがある |
| 直打 | 原薬の粉の性質がよい、または原薬の割合が低い | 粉の流れと固まりやすさがそのまま効く |
造粒の方法は、処方の開発の早い段階で決まります。商用の段階で方法を変えると粒の性質が変わり、溶出や安定性を確かめ直す必要が出てきます。
4. 自分の処方では、何から確かめるのか
方法を決める前に、原薬の粉と、水・熱への強さのデータがそろっているかを確かめます。
- 原薬の割合と粉の性質:錠剤の中で原薬が占める割合と、原薬の粒の大きさ、流れやすさ(流動性)のデータがあるかを確かめます。流動性の測り方は、安息角や圧縮度などの方法として、USP〈1174〉や欧州薬局方欧州医薬品品質局(EDQM)が発行する、医薬品の品質基準を定めた公定書で、署名国・加盟国の規制に法的効力を持つ。詳しく → 2.9.36 にまとめられています。
- 水と熱への強さ:原薬が水や熱で分解しないか、水和物や非晶質結晶格子を持たないエネルギーの高い状態で、溶けやすいが結晶に戻りやすい。詳しく →を含めて結晶の形が変わらないかを確かめます。
- 造粒後に見る指標:粒度分布、かさ密度とタップ密度(軽く詰めたときと叩いて詰めたときの密度)、水分、流動性を、どの範囲で管理するかを決めます。乾式造粒なら、ロールの圧力を変えたときの打錠での固まりやすさも見ます。
まずは原薬の割合と粉の流動性を測り、直打が候補に入るかを判断してください。造粒が要るとなったら、次に水と熱への強さを見て、湿式造粒と乾式造粒のどちらで処方を組むかを決めます。
参考文献
- ICH Q8医薬品開発とQbDの考え方を示すICHガイドライン。重要品質特性(CQA)を定義している。詳しく →(R2), Pharmaceutical Development
- USP米国で医薬品・原料・試験法の公式基準を定める公定書で、製薬用水に関する規格も収載されている。詳しく → General Chapter 〈1174〉 Powder Flow(本文は有償の USP–NF に収載)
- Ph. Eur. 2.9.36 Powder flow(本文は有償の欧州薬局方国または地域の公的機関が定める医薬品の規格・試験法・品質基準を収載した公定書。詳しく →に収載)
- Pharmaceutical Technology, How to minimize the limitations of roll compaction(ローラーコンパクション後の再圧縮性の低下)
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