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逆相HPLCの移動相に加える酸とは?TFAとギ酸を、何で選び分けるか

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逆相HPLCの移動相に加える酸とは?TFAとギ酸を、何で選び分けるか
この記事の要点
  • 逆相HPLCで酸を加える目的は、pHを下げてシラノールの解離を抑え、ピークのテーリングを防ぐことです。
  • TFAはイオンペア試薬としても働き、ピークが鋭くなりますが、質量分析ではイオン化を強く抑えます。
  • MSにつなぐならギ酸、UV検出で分離を優先するならTFA、という選び分けが基本になります。

なぜ酸を入れるのか

逆相HPLC疎水性の差でペプチドやオリゴを分離する液体クロマトグラフィーのこと。ペプチド複数のアミノ酸がペプチド結合でつながった中分子化合物で、タンパク質より鎖が短いものを指す。やタンパク質を分析するとき、移動相クロマトグラフィーにおいて試料を運ぶ液体(または気体)で、組成や流量が分離性能に大きく影響する。(水とアセトニトリルなど)には少量の酸を加えます。分析法を引き継いだときに「0.1% TFA」と書かれていて、理由を確かめないまま使っている場合も多い部分です。

酸を入れる主な理由は、⁠固定相の表面に残るシラノール基(Si-OH)を抑えることにあります。

逆相カラム疎水性の固定相を使い、分子の疎水性の差で分離するHPLC用カラムで、純度確認や含量分析など幅広い分析に使われます。詳しく →の充填剤はシリカ表面に炭素鎖を結合させて作りますが、すべてのシラノール基が反応するわけではなく、一部が未反応のまま残ります。この残ったシラノールは、pHが高いと解離薬分子が水溶液中で電荷を帯びたイオン型と電荷を持たない非イオン型に分かれる現象で、体内のpH環境によって割合が変化する。して負に帯電します。すると、⁠正に帯電した塩基性の分析対象と静電的に引き合い⁠、本来の疎水的な相互作用とは別の保持が生じます。

結果として現れるのが、⁠ピークのテーリングクロマトのピークが後ろに尾を引く歪み。非対称性係数が1より大きくなり、床のチャネリングなどが疑われる。(尾を引く形)⁠です。一部の分子だけが余分に強く保持され、遅れて溶出するために、ピークの後ろ側が伸びます。

移動相を酸性にすれば、シラノールは解離せず中性のままです。静電的な相互作用が消え、疎水性分子が水と親和せず、油脂や非極性溶媒と相互作用しやすい性質で、二本鎖RNAと一本鎖RNAではその程度が異なり分離の指標となる。だけで保持が決まるようになり、ピークが対称に近づきます。

POINT

酸を入れるのはpHを下げるためであり、pHを下げるのはシラノールを黙らせるためです。この因果が分かっていると、酸の種類を変えたときに何が起きるか予測できます。

TFAは「イオンペア試薬」としても働く

移動相に使う酸として広く使われてきたのがTFA(トリフルオロ酢酸)⁠です。TFAが選ばれてきたのは、pHを下げる働きに加えて、⁠イオンペア試薬オリゴ核酸などの分析で、逆相カラムへの保持を高めて分離を良くするため移動相に加える試薬です。詳しく →としての性質を持つためです。

ペプチドは塩基性の残基を持ち、酸性条件では正に帯電します。TFAが解離して生じるトリフルオロ酢酸イオンは、この正電荷と対をなして中和低pH条件で溶出されたサンプルに緩衝液を加えてpHを中性付近に戻し、製品へのダメージを防ぐ操作。します。中和されたペプチドは全体として疎水性が増し、逆相の固定相により強く保持されるようになります。

この効果には2つの利点があります。

  • 保持が強くなる⁠:親水的で保持されにくいペプチドも、十分に保持されるようになります。
  • ピークが鋭くなる⁠:電荷の状態が揃うため、分子ごとの保持のばらつきが減ります。

分離能とピーク形状の両面で優れるため、UV検出でペプチドの純度製品にどれだけ目的物質だけが含まれ、不純物や変性体が少ないかを示す指標です。抗体では単量体の割合やサイズの異なる成分の量などを見ます。詳しく →を見る用途では、TFAが標準的な選択肢であり続けています。ペプチドの固相合成の工程管理でも、この組み合わせが定番です。

質量分析につなぐと立場が逆転する

ところが、検出器を質量分析分子の質量を精密に測る手法。鎖の組み合わせ違いを分子量差として捉え純度評価に使う。(MS)に替えると、TFAの長所が短所に変わります。

エレクトロスプレーイオン化薬分子が水溶液中で電荷を帯びたイオン型と電荷を持たない非イオン型に分かれる現象で、体内のpH環境によって割合が変化する。(ESI)では、噴霧した液滴から溶媒を飛ばし、分析対象をイオンとして気相に送り出します。ここでTFAが強く邪魔をします⁠。

  • イオン対を作ったまま離れない⁠:TFAとイオン対を形成した分析対象は電荷を失った状態にあり、気相でイオンとして検出されにくくなります。
  • 表面に集まりやすい⁠:TFAは液滴表面に濃縮されやすく、分析対象がイオンとして脱出するのを妨げます。

この現象はイオンサプレッションと呼ばれ、感度が1桁下がることも珍しくありません。せっかく分離できても、検出できなければ意味がありません。

そこで、MSにつなぐ系ではギ酸(フォルミック酸)⁠を使うのが一般的です。ギ酸もpHを下げますが、イオンペア試薬としての働きは弱く、イオン化の妨げになりにくい性質を持ちます。

代わりに失うものもあります。イオンペア効果が弱いぶん、⁠ピークの形はTFAより崩れやすく、保持も弱くなります⁠。分離が足りなければ、グラジエント塩濃度やpHを段階的・連続的に変化させ、担体に結合したタンパク質を順に溶出させる操作。を緩やかにする、カラムを変えるといった別の手当てが要ります。

選び分けの基準

判断は次の順で考えると整理できます。

  1. MSにつなぐか⁠:つなぐならギ酸が基本。TFAはイオンサプレッションで感度を落とします。
  2. UV検出で分離を優先するか⁠:分離とピーク形状が最優先で、MSを使わないならTFAが有利です。
  3. 中間的な選択⁠:酢酸を使う、ギ酸を主体にごく少量のTFAを併用する、といった折衷もあります。ただし併用は分離と感度の両方が中途半端になることもあり、目的を決めて選ぶほうが結果は安定します。

mRNAのようなオリゴ核酸の分析では、対象が負に帯電しているため、正電荷を持つアミン系のイオンペア試薬を使う逆向きの設計になります。同じ「イオンペア」でも、対象の電荷によって加えるものが変わります。

装置に残る影響

TFAには運用上の注意もあります。⁠系に残りやすいという性質です。

TFAを使った後にギ酸系の分析を行うと、配管やカラムに残ったTFAが溶出して、MSの感度を落とし続けることがあります。原因が分かりにくく、装置の不調と誤認されやすい問題です。

対策としては、TFAを使う系とMS用の系で装置や配管を分ける、切り替え時に十分な洗浄を行う、といった運用になります。カラムも同様で、TFAを通したカラムをMS用途に転用するのは避けるのが無難です。

そのほか、実務で押さえておく点を挙げます。

  • UV検出の下限波長⁠:TFAもギ酸も低波長域に吸収を持ちます。210nm付近でペプチドを検出する場合、酸の濃度がベースラインとノイズに影響します。
  • グラジエントでのベースライン変動⁠:水と有機溶媒で酸の吸光が異なるため、グラジエント中にベースラインが動きます。両方の移動相に同じ濃度の酸を入れることで抑えられます。
  • 調製の再現性⁠:濃度のわずかな違いが保持時間を動かします。分析法の頑健性培養時間や試薬ロットなど条件を少し振っても、アッセイの値が耐えて安定する性質。を評価する際は、酸の濃度も変動要因として振っておくと、後の分析法の移管とバリデーションで慌てずに済みます。

まとめ

  • 酸を加える目的は、pHを下げて残存シラノールの解離を抑え、テーリングを防ぐこと。
  • TFAはイオンペア試薬としても働き、保持を強めピークを鋭くする。UV検出での分離には有利。
  • MSではTFAがイオンサプレッションを起こし感度を大きく落とす。MS接続時はギ酸が基本。
  • TFAは系に残ってその後の分析に影響する。装置・配管・カラムを用途で分ける運用が確実。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、共通に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。