米GE HealthCareは10月5日、PET検査に使う放射性医薬品の受託製造会社(CMO)である米SOFIE Biosciencesを、投資会社のTrilantic North Americaから9億4,500万ドルの現金で買収することで合意したと発表しました。SOFIEは米国内に15か所の製造拠点を持ち、放射性核種をつくる加速器(サイクロトロン)を21基動かしています。セラノスティクス(診断と治療を組み合わせる核医学)向けの受託開発・製造(CDMO)拠点も1か所あります。買収の完了は2027年上半期の見込みで、規制当局の承認などが条件です。SOFIEの売上高や従業員数は公表していません。
半減期110分が決める工場の置き方
今回の買収の中心にあるのは、フッ素18(18F)という放射性核種で標識したPET用の放射性医薬品です。その半減期は110分です。製造して数時間のうちに患者に投与するので、大きな工場でまとめて作って在庫し、遠くへ運ぶことができません。サイクロトロンと製造設備を、使う病院の近くに分けて置く必要があります。工場を大きくしても届く範囲は広がらず、拠点の数がそのまま供給の範囲を決めます。放射性リガンド療法(RLT)の製造でも、半減期が製造と出荷の段取りを縛る点は同じです。
GE HealthCareは今回の買収を、米国のPET用放射性医薬品の供給の「ラストワンマイル」に足場を築くものだと説明しています。SOFIEはすでに、GE HealthCareのPET診断薬「Flyrcado」(flurpiridaz F18)を米国向けに製造しています。自社製品の委託先を、拠点網ごと傘下に収める形です。あわせて、SOFIEが第3相試験を進めるPET診断薬「FAPI-74」の米国での権利も得ます。米国外の権利は、GE HealthCareがすでに持っています。
競合の製品も作り続ける受託先
発表によると、買収の完了後もSOFIEは独立した製造パートナーとして、他の放射性医薬品メーカーの製品を含む既存の品目の供給を続けます。GE HealthCareの側も、SOFIE以外の受託製造会社との取引を続ける方針です。同社によれば、業界全体では約20のPET診断薬と30を超える放射性治療薬が開発中で、受託先の拠点網は新しい薬の供給にも欠かせません。
一方、SOFIEに製造を任せている開発企業から見ると、委託先の親会社が、自らもPET診断薬を売る大手企業に変わります。製造枠の優先順位や、渡した技術情報の扱いは、受託先の持ち主が替わるときに確かめ直したい点です。半減期の短い薬では、委託先を替えようにも近くに代わりの拠点があるとは限りません。Lantheusのタウ診断薬のように新しいF18製剤の承認が続くほど、こうした拠点網の重みは増します。
PET用の放射性医薬品では、工場の大きさではなく、病院までの距離が供給力を決めます。GE HealthCareの今回の買収は、その距離を21基のサイクロトロンごと手に入れる取引です。
※ 本ページは2026年10月5日のGE HealthCareの発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。