CDMOとCMOの違いとは?受託製造の範囲と選び方
開発が進んで、そろそろ治験薬を作らなければならない段階に来た。自社に製造設備は無い。だから受託先を探し始めます。ところが検索してみると「CDMO医薬品の開発・製造を他社から受託する企業。設備投資を負わずに専門能力を使える。詳しく →」と「CMO製造をCDMOやCMOなど外部の製造所へ委託すること。委託しても品質への最終的な責任は委託者に残る。詳しく →」が混在していて、同じ会社が両方を名乗っていることさえあります。似たような紹介資料を出してくるので、どちらに何を頼めるのかが、最初の一歩で分からなくなります。言葉がそろっていないと、候補を並べても比べる土俵がそろいません。

受託製造は、医薬品を作る工程を外部の専門会社に任せる仕組みです。設備も人も分析体制もゼロから抱えるには重いので、多くのチームが委託を選びます。核心は一点にあります。その会社が、渡された製法を「回すだけ」なのか、それとも「作り直せる」のか。この差が、製法のまだ固まっていないチームには効いてきます。
本稿では、CDMOという言葉の指すもの、CMO・CROとの違い、受託の範囲、モダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →による相手の違い、そして選定の観点と技術移管ある試験室の分析手順を、別の試験室でも同じ結果が出せることをデータで確かめて引き継ぐ作業。詳しく →との関係までを整理します。どれも定義と範囲の話で、数字を比べるより先に言葉をそろえるための回です。内製と外注のどちらを選ぶかという判断そのものは、別稿にゆずります。ここでは先に、言葉と範囲をそろえます。
- CDMOは開発から製造までを請け負い、CMOは確定した製法を製造だけ請け負います。Dは開発機能を指します。
- 受託は原薬・製剤・分析・充填で分かれ、原薬と製剤は別の会社になることが多く、1社選びでは終わりません。
- バイオと低分子では設備も相手も別で、選定はまずモダリティ適合から入ります。
CDMOとは何か ― 開発から製造までの受け皿
まず言葉の整理からです。
CDMO は Contract Development and Manufacturing Organization の略で、受託開発製造機関と訳されます。医薬品の製法開発から商用製造までを、委託者に代わって担う会社です。前臨床の少量から、治験薬臨床試験(治験)において被験者に投与するために製造された、未承認または既承認の医薬品のこと。詳しく →、そして商用ロットまで。開発の段階に沿って関わります。
請け負う範囲は広い。製法の開発、スケールアップ小型培養で確立した条件を、より大きなバイオリアクターへ拡大する取り組みです。酸素供給の指標kLaなどを揃え、性能を再現します。詳しく →、原薬原薬。精製を終えた有効成分そのもので、製剤化する前の段階を指す。詳しく →や製剤製剤。原薬を処方・充填して、最終的な投与形態に仕上げた製品。詳しく →の製造、分析、そして申請資料の一部まで及ぶこともあります。自社でゼロから持つには重い機能を、丸ごと外に置けます。
重さは数字で見ると分かります。抗体を作るなら細胞培養槽が要ります。使い捨ての樹脂バッグを使うシングルユース使い捨ての樹脂製バッグや容器を用いる製造方式です。洗浄・滅菌の手間を減らせる一方、ステンレス設備と比べて特徴が異なり、目的に応じて選び分けます。詳しく →方式で 2,000 L 級が主流で、機種によっては 5,000 L まで広がります。培養液あたりの抗体が 5 g/L 級に届くいま、2,000 L の1バッチから取れる原薬はおよそ 10 kg。この設備と人をゼロから建てる代わりに、すでにある施設を時間で借りる形です。
ただし借りているのは、設備と人だけではありません。製法を育てる工程ごと預けます。 CDMOは施設を貸す会社ではなく、開発の段階から製法を預かって育てる会社です。
CMOとCDMOの違い ― 「D」が指す開発機能
違いは真ん中の「D」だけです。
CMO は Contract Manufacturing Organization、受託製造機関です。CDMO との差は、足された Development、つまり開発を指します。CMO は、渡された製法をそのまま回す会社です。製法は委託者の側で確立済みで、CMO は設備と人とスケールを提供して作ります。登場するのは、開発が終わって治験後期や商用に入ってからが多い。
CDMO はもっと手前から関わります。製法がまだ固まっていない段階で受け、プロセス開発とスケールアップをやったうえで製造する。前臨床から商用まで一続きで見るのが CDMO です。
ここで取り違えやすい点があります。「CDMO のほうが上位互換だ」とは限りません。製法がすでに確定していて、あとは量を作るだけなら、開発機能に対価を払う理由は薄い。逆に、製法が未成熟なまま CMO に渡すと、現場で問題が出ても直す主体がいません。
だから候補に聞くべきは「CMO ですか、CDMO ですか」ではありません。「うちの製法のこの工程を、そちらで作り直せますか」です。 製法が固まっていないなら、名乗りではなく、製法を作り直せる機能があるかで選びます。
ProgLoopで調べるこの製品・工程、ProgLoopで実務者に聞く関連製品や他社の使用経験とあわせて引けます。迷えば、そのまま質問も投げられます。ProgLoopで調べるCROとはどう違うのか ― 作る側と調べる側
もう一つ、よく混ざる略語があります。
CRO は Contract Research Organization、受託研究機関です。臨床試験の設計・実施・モニタリング・データ解析や、前臨床の試験を請け負う会社を指します。CRO はモノを作りません。作るのが CMO・CDMO で、調べるのが CRO です。
関わる時期も重なりながらずれます。CRO は探索から治験の前後にかけて動き、CDMO は製法開発から商用製造までを受け持つ。大手のなかには両方の機能を抱えるところもあり、境目はぼやけますが、納める成果物そのものは別です。 CROが納めるのはデータで、CDMOが納めるのは出荷できる現物です。
受託の範囲 ― 原薬・製剤・分析・充填
受託と一口に言っても、工程ごとに会社が分かれます。
大きく四つに分けられます。原薬(drug substance、DS)、製剤(drug product、DP)、分析(試験・品質管理)、充填(fill-finish処方済みの溶液をバイアルやシリンジなどの容器へ無菌的に充填し、封止する製造工程。詳しく →、無菌充填除菌ろ過した薬液を無菌の環境で容器に充填し、無菌のまま封をする工程。最終滅菌できない製品で用いる。詳しく →)です。原薬は、抗体なら細胞培養と精製、低分子なら化学合成にあたります。製剤は、その原薬を注射剤や錠剤などの最終的な形にする工程。分析は力価・純度製品にどれだけ目的物質だけが含まれ、不純物や変性体が少ないかを示す指標です。抗体では単量体の割合やサイズの異なる成分の量などを見ます。詳しく →・不純物・無菌などの試験で、充填はバイアルやシリンジに無菌で詰める工程です。
ここが見落とされます。原薬と製剤は、得意な会社が分かれるのが普通です。抗体の培養に強い会社が、無菌充填まで同じ水準で持っているとは限らない。だから1つの医薬品で、原薬はA社、製剤と充填はB社、というように複数社をまたぐことが珍しくありません。
またいだ瞬間、A社からB社へバルク最終的な充填・包装を行う前の、大量にまとめられた状態の原薬または製剤中間体。詳しく →原薬を渡す「受け渡し」が生まれます。その境目は、それ自体が独立した技術移管の点です。CDMO 選定が「1社を選ぶ」話で終わらないのは、このためです。無菌充填には EU GMP Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく → が効き、設備も運用も重くなります。
受託を頼む前に、工程を四つに分けて、どこを自社に残しどこを出すかを紙に書いてください。原薬と製剤を別の会社に出すなら、その受け渡し点でだれが規格を保証し、だれが出荷を止められるのかを先に決めます。ここを曖昧にしたまま契約すると、不具合が出た日に責任の所在でもめます。
受託の設計は「どの1社か」ではなく、「どこで工程を切り、誰から誰へ渡すか」です。
バイオと低分子で分かれる受託市場 ― 培養槽と反応器
モダリティが変われば、相手の顔ぶれも変わります。
低分子の原薬は化学合成で作ります。反応器は数百 L から、1,000 L を超える規模まで。GMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく → 原薬のサプライヤーは世界に多数あり、二次供給も立てやすい。製剤は錠剤やカプセルが中心で、設備の標準化も進んでいます。
バイオは勝手が違います。抗体や組換えタンパク質遺伝子組換えで微生物や細胞に作らせた目的タンパク質。宿主により折りたたみやコスト、糖鎖が異なる。詳しく →は細胞培養で作るので、シングルユースで 2,000 L、ステンレスの商用槽なら 15,000〜20,000 L という設備が要ります。重い設備を持てる会社は限られ、だから少数の大手に集中します。Lonza、Samsung Biologics、WuXi Biologics、Catalent、FUJIFILM Diosynth Biotechnologies、AGC Biologics といった名前がこの層に並びます。
さらに新しいモダリティでは、培養槽とは別の基盤が要ります。細胞治療・遺伝子治療・核酸医薬では、ウイルスベクター治療用の遺伝子を細胞へ運ぶために改変したウイルス。AAVやレンチウイルスが代表で、遺伝子・細胞治療に使う。詳しく →の製造や細胞加工、mRNA 合成の専用設備が中心になる。CDMO 側が独自の製造プラットフォームを持っていること自体が、選定の決め手になることもあります。ウイルスベクターの場合の具体的な選び方は別稿で扱っています。
低分子の感覚でバイオの CDMO を探すと、候補の少なさと枠の逼迫で止まります。 モダリティが受託市場を分けており、選定はまず「その分子を作れる層」を見つけるところから始まります。
何を見てCDMOを選ぶか ― 能力・キャパ・品質
層が絞れたら、個々の会社を見ます。
見る軸は六つです。モダリティ適合として、自社の分子に近い製造の実績。キャパシティとして、必要な時期に枠が空いているか。品質として、医薬品品質システム製品ライフサイクル全体で品質を維持・改善するマネジメント体制。逸脱・CAPA・変更管理を束ねる器。詳しく →の成熟度と当局査察の履歴。技術移管として、工程を受け入れて同じ品質で作れるようにする体制。地理として、拠点の場所と時差と物流、そしてどの規制圏に属するか。最後にコストです。
ここで誤読しやすいのが「生産能力」です。カタログに書かれた能力は、いま空いている枠とは別のものです。良い会社ほど先まで埋まっています。枠をいつ、どう押さえるかという論点は受託枠の長期契約の側で整理しています。
だから聞くべきは「作れますか」ではありません。「いつから、何バッチ、どの品質水準で空いていますか」です。費用の内訳をさらに分けたいなら製造原価の記事が手がかりです。
候補を比べるときは、六つの軸を一行ずつ書き出して、同じ質問を全社に投げます。最初に効くのはモダリティ適合と空き枠で、ここで落ちる会社は技術が合っても候補になりません。品質と技術移管は後期ほど重くなるので、商用を見据えるなら査察歴と移管の体制まで降りて聞きます。
選ぶ軸は能力だけではなく、必要な時期に空いた枠を、求める品質水準で出せるかどうかです。
選定を進める順番
最後に、順番を並べます。
先に決めるのは範囲です。原薬を出すのか、製剤と充填だけか、分析まで渡すのか。工程のどこを切るかで、探すべき相手の種類が変わります。範囲が決まらないうちに会社名を集めても、比べる土俵がそろいません。
次に、モダリティで層を絞ります。低分子なら多数の候補、バイオなら少数の大手、新しいモダリティなら専用の基盤を持つ会社。同じ分子種で実績のある相手だけを残します。
そのうえで、残った個社を能力・キャパ・品質・地理・コストで比べます。ここで技術移管の体制を必ず見ます。工程を渡して同じ品質で作れる状態にするのが移管で、受託の成否はしばしばここで決まるからです。送り出す側に製法の履歴がどれだけ残っているかで、移管の重さが変わります。
最後に、品質協定と責任分界を書きます。製造を委託しても、品質・供給・知識の責任は委託者に残る。ICH Q7原薬(API)製造へのGMP適用を国際調和したICHの指針。出発物質の定義や工程管理、バリデーションなどを示す。詳しく → は受託製造者の章(第16章)で、EudraLex 第4巻は委託活動の章で、いずれも責任の文書化を求めています。内製と外注の判断そのものと、委託しても残る責任の中身は、内製と外注の判断に厚く書いてあります。 範囲を先に切り、モダリティで層を絞り、個社を比べ、最後に責任の線を引く。この順番が、受託を一度で決めきるための土台です。
参考文献
- ICH Q7「Good Manufacturing Practice Guide for Active Pharmaceutical Ingredient化学合成などで得られる分子量が比較的小さい医薬品の有効成分。構造が明確で再現性よく合成できる。詳しく →s(原薬GMP、第16章 Contract Manufacturers を含む)」 ICH Quality Guidelines
- ICH Q10医薬品品質システムを定めた国際ガイドライン。ライフサイクルを通じた品質マネジメントの考え方を示す。詳しく →「Pharmaceutical Quality System(医薬品品質システム、委託時の知識管理を含む)」 ICH Quality Guidelines
- FDA「Contract Manufacturing Arrangements for Drugs: Quality Agreement委託者とCDMOの役割・権限・責任分界を定めた文書。逸脱や出荷可否の分担を明確にする。詳しく →s(委託製造の品質協定)」 FDA Guidance Documents
- EudraLex Volume 4「EU Guidelines for Good Manufacturing Practice(Chapter 7: Outsourced Activities)」 European Commission
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