グレードAとISOクラス5は同じ意味?
無菌医薬品のバリデーション試験法が目的に合う性能を持つことを立証する妥当性確認。正確さ・精度などを評価する。詳しく →文書に「グレードA充填点周辺など無菌操作の中心となる最高清浄度区域。作業中も連続監視される。詳しく →(ISOクラス5)」と並記されているのを見て、この2つはただの言い換えだと思っていないでしょうか。査察官に「稼働中もISOクラス5相当ですか」と聞かれたとき、数字が同じだからと即答すると、根拠を問われて詰まることがあります。
一致するのはat-rest(非稼働時)の状態だけです。ISO 14644-1はどの状態でも粒子数の等級を定義しますが、稼働中(operational)に同じ限度を保つよう求めているのはEU GMP Annex 1のほうで、しかもグレードAだけがその対象です。「グレードA=ISOクラス5」と丸めて覚えると、稼働中の挙動という一番大事な差が抜け落ちます。
なぜそうなるのか
ISO 14644-1:2015は、0.5µm以上の粒子が1立方メートルあたり3,520個以下という基準でISOクラス5を定義します。この基準自体は、部屋が動いているかどうかを問いません。一方でEU GMP Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく →のTable 1は、at-restとoperationalの両方に別々の限度を置きます。グレードAは0.5µm以上の粒子が3,520個以下という限度を、at-restでもoperationalでも変えません。ところがグレードBは、at-restでは同じ3,520個なのに、operationalになると352,000個まで許容されます。数字にして100倍の開きです。
つまり「グレードA=ISOクラス5」という等式が崩れずに成り立つのは、グレードAという等級固有の設計のおかげです。一方向気流と厳格な介入管理によって、人が動いてもほとんど粒子数が動かない。グレードBは同じat-restの数字からスタートしても、稼働中は別の部屋のような数字に跳ね上がります。
現場で分かれるところ
証明書に「ISOクラス5」とだけ書かれていたら、次に聞くのは「at-restか、operationalか」です。グレードA以外の等級では、この1語で数字の意味がまったく変わります。
分かれ目は、重要区域がグレードAかどうかです。無菌充填除菌ろ過した薬液を無菌の環境で容器に充填し、無菌のまま封をする工程。最終滅菌できない製品で用いる。詳しく →のようにグレードA環境で製品や容器がむき出しになる工程では、稼働中の実測がそのままバリデーションの合否に直結します。支援区域や周辺区域(グレードB〜D)では、稼働中の限度がそもそも別の数字として最初から設計に織り込まれているので、「ISOクラス5からどれだけ外れたか」という聞き方自体が的外れです。
もっと詳しく知るなら
at-restとoperationalの限度がグレードごとにどう変わるか、5.0µmの分類限度が2022年改訂でTable 1から外れた経緯、分類試験とモニタリングの違いまでは、クリーンルームと清浄度クラス(グレードA〜D)とは?にまとめています。証明書の数字をどう読むかで悩んだら、そちらが出発点です。
「グレードA=ISOクラス5」が崩れずに成り立つのはグレードAだけで、それ以外の等級では、稼働中かどうかを聞かないと数字の意味は決まりません。
参考文献
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