ターンダウン比が大きい槽を選べば、種培養の段は自動で減る?
ターンダウン比20対1をうたう槽のカタログを見て、「この槽なら中間スケールの段を1つ飛ばせる」と判断してよいか迷うことがあります。比の数字だけで段数を決めると、あとで培養が立ち上がらないという事態にぶつかりかねません。
自動では減りません。ターンダウン比が許しても、その最小容量で撹拌翼が液に浸かり、酸素が十分に溶け込むかは別の実測が要ります。比は「入れられる」ことを示す数字で、「同じように育つ」ことは保証していません。
なぜそうなるのか
ターンダウン比は最大作動容量を最小作動容量で割った値にすぎません。2,000 L級の槽でも、Sartorius Biostat STR撹拌翼で機械的に混ぜ、スパージャーで通気する最も標準的なバイオリアクターの型式。詳しく →は4対1で最小500 L、Thermo Fisher HyPerforma DynaDrive(500 L機)は20対1で最小25 Lです。同じ2,000 L級という括りでも、下限は20倍違います。この差は、撹拌の駆動を槽の底に置くか上から差し込むかという構造の違いから来ています。
比が大きくても、下限の容量で酸素移動(kLa)と混合時間添加した成分が槽内で均一になるまでの時間。大スケールほど延び、濃度勾配を生む。詳しく →が満量時と同じように機能するとは限りません。液深が浅くなるほど、気泡が液中を上がる時間が短くなり、酸素が溶け込む余地が減ります。ここが崩れると、比の数字は「入る」ことしか保証していなかったと分かります。
現場で分かれるところ
メーカーに聞くべきは「比はいくつか」ではなく、「その最小容量でのkLaと混合時間はいくつか」です。公表されていなければ、スケールダウンモデルで自社の細胞株を使って確かめます。
もう1つ、比が許しても細胞側が許さない場合があります。拡大率を大きく取りすぎると播種密度が下限を割り、増殖の立ち上がりが遅れます。段を飛ばせるかどうかは、槽の下限と自社のシードトレイン目的物質を作る細胞をあらかじめ大量に凍結保存し、製造のたびに同じ素性の細胞を使えるようにした細胞の在庫(MCB/WCB)のことです。詳しく →の拡大率、両方の掛け算で決まります。
もっと詳しく知るなら
Biostat STR・HyPerforma S.U.B./DynaDrive・Xcellerex XDRの実際の比の値、下限で先に壊れる混合と酸素移動の中身、比が一定であることがスケールアップ小型培養で確立した条件を、より大きなバイオリアクターへ拡大する取り組みです。酸素供給の指標kLaなどを揃え、性能を再現します。詳しく →に持つ意味までは、ターンダウン比とは?種培養の段を減らす指標で扱っています。導入前に確かめる手順もそちらにまとめてあります。
比の数字は段を減らせる可能性を示すだけで、減らせると決めるのは、その容量での実測と自社の細胞株です。
参考文献
- Thermo Fisher Scientific, Streamlining seed train scale-up through utilization of the HyPerforma DynaDrive S.U.B. turn down ratio(Application Note)
- Sartorius, Biostat STR 製品情報(各スケールの作動容量とターンダウン比)
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