共通基礎知識・培養

培養槽からどうやって無菌でサンプルを取る?方法と落とし穴

流加培養培養の途中で栄養(フィード)を追加しながら細胞を高密度まで育てる培養方式。詳しく →を2週間続けると、サンプリングは1日1回でも14回です。1回ごとに無菌の流路を開けてつなぎ、流路に残った液を捨て、測る分を抜いて、閉じます。どの1回で手順が崩れても、培養全体に響きます。

自動サンプリング装置のカタログは、最大8系統、最大16槽と、つなげる台数を前面に出します。けれども、手で取るか装置に任せるかを分けるのは台数ではありません。流路を開ける回数と、1回で槽から出ていく液の量の2つです。

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培養槽からどうやって無菌でサンプルを取る?方法と落とし穴

培養を担当するオペレーターにも、結果を待つ分析担当にも、装置を提案する営業にも、この2つで見ると候補の差がはっきりします。

手で取る3通りの方法 ― ポート・マニホールド・溶着

手で取る方法は、サンプルが通る場所の違いで3通りに分かれます。

一つ目は、ニードルフリー(針を使わない)のポートに注射器をつなぐ方法です。シングルユースのバイオリアクター細胞やウイルスの培養を制御された環境下で大規模に行うための培養槽で、商業規模の製造に用いられる。詳しく →では、サンプリング用のポートに Clave のようなルアーロックのコネクターが付きます。BioProcess International の解説は、注射器を押し込んでひねってつなぐ方法として紹介しています。注射器を外せばコネクターは閉じ、ポートは槽に付いたまま残ります。1回ごとに増えるのは注射器1本です。針を使う型もあります。Merck の NovaSeptum は、採取用の針でシリコーンの隔膜を貫いて液をバッグに受け、バッグを圧着して切り離します。

二つ目は、サンプリング用のバッグをマニホールド(枝分かれの管)に束ねておく方法です。滅菌済みのバッグを枝ごとにつないでおけば、時間をおいて何回も、同じ流路から別々のバッグに採れます。使い終えた枝は封じたままにして、次の枝を使います。製品はサンプリングバッグで比べられます。

三つ目は、熱可塑性エラストマー(TPE)のチューブを溶着してバッグをつなぎ、採ったあとでチューブシーラーで封じて切り離す方法です。Sartorius の BioWelder TC と BioSealer TC が、溶着と封止を受け持つ装置の一例です。毎回、新しい切り口ができるので、バッグごとに流路を作り直せます。そのかわり、溶着機とシーラーを現場に置く必要があります。コネクターと溶着の使い分けは無菌コネクターと溶着機の選び方で解説しています。

違いは、1回ごとに何が増えるかです。ポート方式は、同じコネクターの面を毎回開け閉めします。マニホールド方式は、束ねた枝を1本ずつ使います。溶着方式は、毎回チューブを継いで切ります。手が速いのはポート方式で、枝の数を先に決める必要があるのがマニホールド方式です。

どの方法も、取るたびに無菌の境界を一度またぎます。違いは、またぐ場所がコネクターの面か、枝の先か、チューブの切り口かという点です。

流路に残った液 ― 捨てる量と取る量

サンプルの最初の数 mL は、槽の中の液ではありません。

ポートから先の管には、前回の液が残っています。これを混ぜたまま測ると、数字は前回の時点に引きずられます。流路に残って新しい液と入れ替わらない液の量を、死容積(デッドボリューム容器やデバイスに残って投与に使われない液量。過充填量を決める際に考慮する。詳しく →)と呼びます。手で取る場合も装置の場合も、測る分を取る前に、これを捨てるか押し戻すかして、槽の液で置き換えます。

捨てる量は、管の内径と長さで決まります。断面積に長さを掛けた本稿の計算では、内径 1/4 インチ(6.35 mm)の管は1 m あたり約32 mL、1/8 インチなら約7.9 mL、内径 1 mm なら約0.8 mL です。内径が半分になれば、容積は4分の1です。同じ長さのポートでも、太い管で組めば、1回に捨てる量は桁で変わります。

概念図。管の断面を、内径に比例した大きさの円で3つ並べ、1 m あたりの容積(本稿の計算)を棒の長さで示す。内径 1/4 インチ(6.35 mm)の管は約32 mL、内径 1/8 インチの管は約7.9 mL、内径 1 mm の管は約0.8 mL。内径が半分になれば、容積は4分の1になる。太い管ほど、流路に残る液の量は桁で大きくなる。
管の内径ごとの、1 m あたりの容積を並べた概念図(本稿の計算)

自動サンプリング装置は、細い流路と空気でこの量を絞ります。Flownamics の Seg-Flow は、サンプルを空気で区切って流す分節流(セグメンテッドフロー)という方式で、採取のたびに流路を洗浄または滅菌します。Agilent がオンラインLCとの接続を解説した技術概要には、Seg-Flow S3 に希釈モジュールの Sample-Mod をつないだ構成の設定として、サンプルに先立つプレサンプル量が 0.5 mL、サンプル量が 3 mL と載っています。これは1つの構成での設定で、装置共通の仕様ではありません。Securecell の Numera は、旧版の案内で1回の採取量が 2〜3 mL、後継の Numera 3 では 2.7 mL からです。

分析装置の試料量と、槽から出ていく量は、別の数字です。Nova Biomedical の BioProfile FLEX2 が最大16項目を測るのに使うのは 275 µL ですが、Numera 3 の採取量は 2.7 mL からで、その約10倍です(本稿の計算)。差の内訳は、メーカーの資料から確かめられていません。流路を満たす量や希釈に使う分が含まれると推測します。

POINT
メーカーが示す採取量は、自社の流路で同じになるとは限りません。立ち上げのときに、水か培地で同じ手順を回し、捨てた量と取った量を量り直します。その数字を手順書に mL で書いておくと、あとで人が替わっても同じ量を取れます。

取った量は、そのまま培養から消えます。Ambr 15 のような小型の容器は作動容量が 10〜15 mL です。本稿の計算では、10 mL の容器から 275 µL を毎日1回、7日続けて抜くと、合計で約1.9 mL、約19%です。捨てる分は別に数えます。小さな槽ほど、測る項目と頻度を先に絞る理由がここにあります(マイクロ/ミニバイオリアクター)。

捨てる量は管の内径と長さで決まるので、サンプルの量を削る前に、ポートから先の管を細く短くできないかを見ます。

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自動サンプリングの仕組み ― 槽と分析装置をつなぐ流路

自動サンプリング装置は、槽と分析装置を流路でつなぎ、人が液を抜く操作を装置に置き換える設備です。

Flownamics の Seg-Flow S3 は、最大8系統から採取して、最大4台の分析装置へ送ります。Securecell の Numera は最大16槽が対象で、Numera 3 は最短6分間隔の採取をうたっています。どちらも決めた時刻に採って測るので、夜間や休日の測定、多槽の並行運転で効きます。

最初の分かれ目は、細胞を含んだまま運ぶか、除いて運ぶかです。Flownamics は、槽に差すプローブ(FISP)の膜で細胞を除いた液を運べます。グルコース微生物発酵でエネルギー源となる糖類などの炭素源と、目的遺伝子の発現を促す誘導物質のことです。詳しく →や乳酸を測る分析装置なら、細胞のない液で足ります。細胞数や生存率細胞集団のうち生きている細胞の割合。凍結・培養の品質を示す基本指標。詳しく →を測る Beckman Coulter の Vi-CELL BLU は、細胞が入った液でないと測れません。Seg-Flow S3 とつなぐ構成が用意されているので、この場合は細胞を含んだまま運ぶ流路を選びます。

もう一つの分かれ目は、無菌をどこで守るかです。手で取る場合は、人がポートを開ける操作が無菌の境界でした。装置に任せると、その操作は消えます。かわりに、槽側の接続と、採取のたびに洗浄や滅菌をする流路が、守る場所です。装置が増やすのは、点検する場所の数です。

概念図。(a) 手で取る場合は、バイオリアクターから、前回の液が残った流路(死容積)を通ってポートに注射器をつなぐ。取るたびに無菌の境界を一度またぎ、先に流路の液を捨てて槽の液で置き換え、次に測る分を取る。(b) 自動サンプリング装置に任せる場合は、バイオリアクターから、必要なら細胞を除く膜を通り、採取のたびに洗浄や滅菌をする自動サンプリング装置を経て分析装置へ液が流れる。分析装置の測定値はソフトウェアに戻り、使い方の例として、フィードを足す制御を槽へ返す。
手で取る流れと、自動サンプリングの流れの概念図

装置に任せて減るのは、人がポートを開ける回数です。無菌の守り方は、槽側の接続と流路の洗浄や滅菌に移ります。

分析装置との連携 ― アットラインとオンライン

測り方は、サンプルをどう扱うかで3つに分かれます。

FDA の PAT主に低分子製造で、化学反応の進み具合(転化率など)を製造中にその場で追跡する手法です。こうしたリアルタイム測定・制御の技術はPATと呼ばれます。詳しく → ガイダンス(2004年)の区分では、サンプルを抜いて工程の近くで測るのがアットライン、工程から分けて測り、戻すこともあるのがオンライン、工程の中で測るのがインラインです。自動サンプリング装置が受け持つのは、前の2つです。

連携の例に、Ambr と BioProfile FLEX2 の組み合わせがあります。Sartorius の資料によると、Ambr 15 と Ambr 250 の装置台にあるサンプルカップから、Nova の外部サンプリングモジュールが培養液を FLEX2 へ送り、測定値は Ambr のソフトウェアに戻ります。グルコースの値に応じてフィードフェドバッチで追い足す濃縮した栄養液。いつ・どれだけ・どう入れるかが生産性と品質を左右する。詳しく →を足す制御も、使い方として紹介されています。FLEX2 は 275 µL、約4.5分で最大16項目を測ります(BioProfile FLEX2 の製品トピック)。Ambr は Sartorius、FLEX2 とモジュールは Nova の製品なので、接続は使う側の研究室で行う分担です。

台数が増えると、測定の間隔は伸びます。ここは本稿の試算です。1本の流路を順番に使う構成を仮定し、旧版の Numera の案内にある約8分を1回の採取時間に置くと、16槽を回すサンプリングだけで一巡に約2時間です。分析の時間は別に足されます。その構成では、カタログの台数は同時に測れる数ではなく、順番を待つ槽の数です。

メーカーに聞くのは、台数ではありません。「その台数で、1つの槽に次の測定が回ってくるまで何分か。1回に槽から出る量は何 mL か」です。分析装置そのものの選び方、特に採ってから測るまでの置き時間は、代謝物アナライザーの選び方で解説しています。

つなぐ相手は、細胞が入ったままでよいか、1回に使える量はいくつか、1回の測定に何分かかるかの3つで決まります。

取る回数の削減 ― インラインの測定

汚染の機会を減らすもう一つの手は、取る回数そのものを減らすことです。

ラマン分光光を当てて分子固有の散乱スペクトルを捉え、培養液中の糖や代謝物などの濃度を無菌のまま連続監視する手法です。抜き取り不要で測れます。詳しく →のプローブを槽に浸せば、無菌の境界を開けずに、グルコースや乳酸を連続して推定できます。Endress+Hauser の Raman Rxn2 のようなラマン分析計があり、Sartorius の BioPAT Spectro は、Ambr や Biostat STR撹拌翼で機械的に混ぜ、スパージャーで通気する最も標準的なバイオリアクターの型式。詳しく → の培養槽にラマンを載せる構成として用意されています。原理と導入前の落とし穴は、ラマン分光によるバイオプロセスPATで解説しています。

ただし、ラマンが出すのは濃度ではなく、スペクトルからモデルが推定した値です。モデルを作るにも、合っているかを確かめ続けるにも、オフラインの分析値が要ります。FDA が2025年1月に出した 21 CFR 211.110 のガイダンス案は、サンプルを物理的に抜かなくても、インラインやオンラインの測定で工程内の確認を行ってよいとしながら、モデルだけに頼る管理では足りないとしています。対象は製剤製剤。原薬を処方・充填して、最終的な投与形態に仕上げた製品。詳しく →の製造ですが、考え方は培養にも参考にできます(工程内管理(IPC))。

サンプリングは、ゼロにはなりません。毎日の測定の代わりに、モデルを作る期間と、運用中に照合する日の採取へ、役割が変わります。回数が減るぶん、残った1回を同じ手順で確実に取ることが、モデルの信用を支えます。

インラインの測定で減るのは日々の測定で、モデルを照合するための採取は残ります。

サンプリング計画の手順 ― 決める順番

計画は、装置からではなく、回数と量から組み立てます。

先に、測る項目と回数を書き出します。その数字で何を判断するのか、フィードの量か、収穫の時期かまで書きます。判断に使わない項目は、取る理由がありません。

次に、槽から出ていく液の総量を計算します。「捨てる量と採る量の合計」に回数と日数を掛け、いちばん小さい槽の作動容量で割った割合です。許せる割合は、工程ごとに先に決めておきます。

そのうえで、ポートから先の管の内径と長さを決めます。捨てる量はここで決まり、1回の合計量が出ます。続けて、細胞を含んだまま測る項目と、細胞を除いてよい項目を分けます。

手か装置かは、そのあとで決めます。槽が少なく、回数が限られ、夜間や休日に測らなくてよいなら、手で取る3通りのどれかで足ります。槽が多く、夜間も測りたいなら、装置の出番です。装置なら、組み合わせる分析装置を決めて、前の節で挙げた間隔と量をメーカーに確かめます。

最後に、インラインで減らせる回数を見積もり、モデルを照合する採取を計画に残します。

培養槽から分析装置までの流れを図にして確かめたいときは、無料のバイオプロセス設計ツールが使えます。装置の候補は自動サンプリング装置とバイオプロセスアナライザの製品ページで比べられます。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、共通に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。