共通基礎知識・製造工程

無菌コネクターと溶着機はどう使い分けるか

シングルユース使い捨ての樹脂製バッグや容器を用いる製造方式です。洗浄・滅菌の手間を減らせる一方、ステンレス設備と比べて特徴が異なり、目的に応じて選び分けます。詳しく →の流路を設計していると、どこをコネクターでつなぎ、どこを溶着で継ぐかという分岐が必ず出てきます。培地の移送、サンプリング、収穫液の受け渡し、製剤への送り。接続の数は工程が閉鎖系外気と触れずに培地交換やサンプリングを行う閉鎖された流路。無菌を保ち汚染を防ぐ。詳しく →に寄るほど増えていきます。1バッチで数十か所を開け閉めする工程では、1か所あたりの手順の差が、そのまま作業時間と汚染の機会の差になります。

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無菌コネクターと溶着機はどう使い分けるか

両者は同じ「無菌でつなぐ」手段ですが、性質がまるで違います。コネクターは器具が要らないかわりに、部品が流路の中に残ります。溶着は装置が要るかわりに、継いだあとは1本のチューブになります。⁠この差は、抽出物の評価と、液のよどむ行き止まり(デッドレグ配管などで液がよどむ袋小路。洗いにくく、洗浄バリデーションのワーストケース箇所になりやすい。詳しく →)の設計に、そのまま跳ね返ります。⁠しかも溶着はチューブの材質を選ぶので、シリコーンを使いたいなら最初から選択肢に入りません。装置の側にも制約があり、1接続あたり1分半から2分半かかるうえ、太いチューブほど長くなります。

本稿では、コネクターと溶着のそれぞれが何を担うかから、オスメスの有無という設計思想の対立、対応するチューブ材質の制約、抽出物とデッドレグの扱い、繰り返し接続という第三の選択肢、そして設計段階で決めておく項目まで、順に整理します。

この記事の要点
  • コネクターは器具が要らず速い一方、部品が流路に残るので抽出物とデッドレグの評価対象が増えます。
  • 溶着は継いだあと1本のチューブになりますが、対応するのは TPE・ポリ塩化ビニル・ポリウレタンで、シリコーンは熱で溶けないため継げません。
  • オスメスを分ける型と分けない型は、間違えない設計と在庫を減らす設計のどちらを採るかの違いです。

2つの方式が担っているもの ― 器具の有無と、残るものの違い

無菌コネクター無菌状態を保ったまま2本のチューブや流路をつなげる接続部品です。開放せずに滅菌済みの液経路を接続でき、外部からの汚染リスクを抑えます。詳しく →は、滅菌済みの部品どうしを手で結合させます。

CPC の AseptiQuik を例にすると、保護キャップをめくり、差し込み、隔膜を引き抜くという3動作で終わります。クランプも治具も要りません。シャットオフ弁を内蔵しているので、外しても液がこぼれない構造になっています。作業は数秒で、クリーンルーム空気中の塵埃・微生物を規定レベル以下に管理した、医薬品・細胞製品の製造に用いる専用室。詳しく →の外でも成立するとうたう製品もあります。

熱溶着は、チューブそのものを溶かして継ぎます。Sartorius の Biowelder TC は外径 1/4 から 1 インチまでの熱可塑性エラストマー(TPE)を対象にし、1回あたり1分半から2分半かかります。太いチューブほど時間が伸びます。Terumo BCT の TSCD-Q は刃を約300℃まで上げ、切ると同時に継ぐことで無菌を保ちます。

継いだあとに何が残るかは、両者で正反対になります。溶着は部品が流路に残らないので、抽出物もデッドレグも増えません。コネクターは本体とシールと隔膜が、そのまま流路の一部として残ります。

接続にかかる時間で比べるとコネクターが速く、継いだあとに残るもので比べると溶着が軽い。この2つは同じ表では並びません。

オスメスを分けるか、分けないか

ここで設計思想が正面からぶつかります。

分けない側の代表が CPC細胞培養加工施設。清浄度区分や空調・差圧・動線・環境モニタリングを備え、再生医療等製品を製造する施設。詳しく → の AseptiQuik と Cytiva の ReadyMate DAC です。同じ形の部品どうしが結合するので、在庫は1種類で済みます。ReadyMate DAC はさらに、口径の違うもの同士もつなげます。組み立ての段階でどちらを付けるか決めなくてよいぶん、無菌室に運び込んだあとで「つながらない」と気づく事故が起きません。

分ける側の代表が Sartorius の Opta SFT と Merck の Lynx です。オスとメスが別部品なので、⁠流れの向きが部品の形で決まります。⁠作業者がつなぎ間違える余地がありません。片側だけを単品で買えるので、手持ちのチューブ径に合わせやすいという利点もあります。

どちらが正しいという話ではありません。接続の点数が多く、作業者が多い工程なら在庫を減らす側が効きます。向きを間違えると取り返しがつかない工程なら、部品の形で縛る側が効きます。閉鎖系での細胞製造のように、1人ぶんの材料を1回で処理する場面では、後者の思想が選ばれやすくなります。

POINT
オスメスの有無は好みではなく、失敗の形を選ぶ設計です。分けなければ「間違ってつながる」可能性が残り、分ければ「必要なときにつながらない」可能性が残ります。どちらの失敗が自社の工程で重いかで決まります。

材質でふるいにかけられる ― シリコーンは溶着できない

溶着を選ぶときに最初に効くのは、チューブの材質です。

Biowelder TC が対応するのは C-Flex 374、TuFlux TPE、AdvantaFlex、SaniPure BDF、PharMed BPT といった TPE 系です。Biowelder S はポリ塩化ビニルと TPE を継げますが、⁠シリコーンは熱で溶けないので、この方式では継げません。⁠シリコーンは柔らかくガス透過性が高いので培養の周辺でよく使われますが、そこを溶着でつなぐ設計は成り立ちません。

Terumo BCT の系譜では材質が入れ替わっています。TSCD-II はポリ塩化ビニル専用で、外径 3.86〜4.60 mm、肉厚 0.508〜0.800 mm の範囲を対象にします。後継の TSCD-Q はポリウレタンが主役で、外径 4.75 mm・肉厚 0.787 mm が標準。ポリ塩化ビニルは外径 5.5 mm・肉厚 0.84 mm のものだけ強度と無菌性の試験が済んでいます。

つまり溶着機を選ぶことは、チューブの材質と寸法をほぼ決めてしまうことに等しい。逆にコネクター側は、Pall の Kleenpak Presto のように BPA を含まないポリエーテルスルホン除菌フィルターなどに広く使われる膜素材。親水化処理で濡れ性や低吸着を高めた製品もある。詳しく →製を選ぶ、といった材質の幅があります。ポリカーボネートを避けたい工程では、この差が効いてきます。

溶着機を1台選ぶことは、その工程で使えるチューブを先に決めてしまうことでもあります。

抽出物とデッドレグ ― 残る部品は評価の対象になる

コネクターは流路に残るので、抽出物・浸出物の評価の対象になります。

AseptiQuik なら本体がポリカーボネート、シールがシリコーン、隔膜がポリエチレンで、この3つを別々に見ます。高温向けの HT では隔膜だけがポリエーテルスルホンに替わるので、そこだけ評価をやり直すことになります。Opta SFT は本体がポリカーボネート、隔膜がポリエーテルスルホン、シールがサントプレーンという構成です。

もう1つがデッドレグです。継手の内径とチューブの内径に段差があると、そこに液がよどみます。Saint-Gobain の Pure-Fit SC は同社の Pure-Fit SIB と組んだときに段差が出ない設計で、つなぎ目の要をシリコーンの弁にして隙間と残留物を出さない形にしています。液だまりを嫌う工程では、この点が選定理由になります。

溶着はここが単純です。継いだあとは1本のチューブなので、段差も部品も増えません。⁠評価の手間で見るなら、溶着のほうが安く付きます。

1回きりか、何度も開けるか

見落とされやすいのが、同じ場所を繰り返し開けたい場面です。

Merck の Lynx S2S は、滅菌済みの流路どうしを1回だけつなぐ型です。ガンマ線とオートクレーブ高温高圧の飽和蒸気を使い、器具や培地などに付いた微生物を死滅させて滅菌する装置です。詳しく →のどちらにもかけられます。これに対して Lynx CDR抗体可変領域のうち抗原と直接接触するループ状の領域。重鎖・軽鎖に3本ずつあり、標的にはまり込む。詳しく → は、1つの口で無菌の接続と切断を何度か繰り返せます。サンプリングのように同じ場所を開け閉めする用途を想定した型です。

溶着機も、切ると同時に継ぐ方式なら繰り返せます。TSCD-Q は乾いた側と液の入った側のどちらの組み合わせでも継げるので、途中で分岐を足すような使い方ができます。

汚染管理戦略の中でどこを何回開けるかは、工程の設計そのものです。開ける回数が決まって初めて、1回きりの部品で足りるのか、繰り返せる型が要るのかが決まります。

POINT
接続の設計は「何でつなぐか」より先に「何回開けるか」を数えます。1回きりの接続は部品が安く、繰り返す接続は装置か専用部品が要ります。回数を数えないまま部品を選ぶと、後から流路ごと組み直すことになります。

設計段階で決めておくこと

最後に、決める順番を整理します。

まずチューブの材質を決めます。シリコーンを使うなら溶着は外れます。次に、流路全体で系列を1つに揃えられるかを見ます。AseptiQuik は C・G・L・S・X と系列が分かれていて口径がそれぞれ違うので、混ぜるとつながりません。揃わない場合は、変換をどこに置くかを設計に入れます。

そのうえで、接続ごとに1回きりか繰り返しかを割り振り、コネクターと溶着のどちらを当てるかを決めます。溶着を使うなら、装置の台数と、1接続あたり1分半から2分半という時間を工程の所要時間に足します。

最後に、残る部品の材質を並べて抽出物の評価の範囲を確定します。ここまでやって、初めて流路図が閉じます。

参考文献

  • CPC, AseptiQuik Sterile Connectors 製品情報
  • Sartorius, Biowelder TC / Biowelder S 製品情報(対応チューブ材質と外径範囲)
  • Terumo BCT, TSCD-Q / TSCD-II Sterile Tubing Welder 製品情報(対応チューブの外径・肉厚)
  • Merck, Lynx S2S / Lynx CDR Aseptic Connectors 製品情報(1回接続型と繰り返し接続型の違い)
  • BioPhorum, Extractables材料に実使用より厳しい条件をかけて意図的に引き出した成分。出うる成分の候補プールにあたる。詳しく → Testing of Polymeric Single-Use Components Used in Biopharmaceutical Manufacturing(単回使用部材の抽出物試験プロトコル)

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、共通に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。