共通基礎知識・規制

PFAS規制は製造部材にどう効いてくるか

PFAS(有機ふっ素化合物)は、水も油もはじき、熱と薬品に強く、摩擦が小さい。この性質のおかげで、⁠医薬品製造の部材にも広く入り込んでいます⁠。規制が進むにつれて、「うちの工程のどこに使われているか」を答えられるかが問われ始めました。

この記事の要点
  • 部材への用途は、ろ材、チューブ、シール、ガスケット、離型剤など多岐にわたります。
  • 分析には総量法と個別法があり、まず総量で振り分けて個別法へ回すのが実務的です。
  • 単回使用部材では、抽出物・浸出物の評価に PFAS の視点が加わります。
  • 供給者に聞くべきは「含有の有無」だけでなく、変更時に知らせてもらえるかどうかです。
  • 代替に動くと、部材の性能が変わります。変更管理の対象になります。

どこに使われているのか

PFAS は総称で、1万種を超える化合物を含むとされます。医薬品製造の現場で関係が深いのは、フッ素樹脂の部材です。

除菌ろ過に使う PTFE や PVDF の膜、通気フィルタータンクやバイオリアクターの通気・排気ラインに付け、出入りする空気を除菌して内部の無菌を保つ疎水性フィルターです。詳しく →、チューブとその継手、バルブのシートやダイアフラム、O リングやガスケット。さらに、錠剤を作る工程の離型剤や、容器の内面処理にも使われてきました。⁠化学的に不活性で溶け出しにくいという、まさに医薬品向きの性質が理由です。

その不活性さが、環境側では問題になりました。分解されずに残り続けるためです。規制は欧州を中心に段階的に進んでおり、製造部材がどこまで対象になるかは流動的ですが、「使っていません」と言えるかどうかを聞かれる場面は確実に増えます。

総量で振り分けて、個別で確かめる

分析の話をしておきます。性格の違う2つの方法があり、使い分けます。

個別法LC-MS/MS液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせ、断片を一つずつ読んで配列や修飾部位を特定する手法。 で、PFOS や PFOA など物質ごとに定量します。規制値と直接突き合わせられるので、最終的な判断にはこちらが要ります。ただし測れるのは、標準品力価の基準に定めた品。検体と同じアッセイで並べて測り、相対力価の基準にする。があって分析法が確立している物質だけです。1万種のすべてに標準品はありません。

総量法は AOF(吸着性有機ふっ素)のように、試料を燃やして出てくるふっ素をまとめて測ります。何が入っているかは分かりませんが、⁠有機ふっ素として全部でどれだけあるかは分かります。個別法の合計より総量が大きければ、「測れていない何かがある」という手がかりになります。

実務では、⁠まず総量でふるいにかけ、引っかかったものを個別法に回すという順序になります。総量法は前処理細胞移植の前に患者へ行う処置。生着の場を空けるために既存の骨髄細胞を減らす目的で実施される。が長く値が振れやすい工程だったため、燃焼から注入までを自動で繋いだ装置が出てきているのは、この流れに沿った動きです。

単回使用部材での見方

単回使用と固定設備を比べると、PFAS の論点は単回使用側に集まります。使い捨て使い捨ての樹脂製バッグや容器を用いる製造方式です。洗浄・滅菌の手間を減らせる一方、ステンレス設備と比べて特徴が異なり、目的に応じて選び分けます。詳しく →の流路は、樹脂部材の塊だからです。

もともと抽出物・浸出物(E/L)の評価では、部材から何がどれだけ出てくるかを調べています。溶媒と条件を変えて抽出し、出てきた成分を同定して、製品に入った場合の影響を評価する。そこに PFAS という視点が加わる形です。

注意したいのは、⁠E/L で検出されないことと、部材に含まれないことは別だという点です。フッ素樹脂は溶け出しにくいので、抽出条件によっては出てきません。規制側が問うているのが含有なのか溶出なのかで、答え方が変わります。

供給者にどう聞くか

供給者管理と受入試験の枠組みで扱いますが、聞き方に工夫が要ります。

「PFAS を含みますか」だけでは、答えが返ってきにくい。供給者自身が、さらに上流の部材メーカーに聞かないと分からないためです。実務的には、⁠部材ごとに材質を開示してもらうほうが早い場合があります。材質が分かれば、フッ素樹脂かどうかは判断できます。

もう一つ重要なのが、⁠変更時に通知されるかです。供給者が PFAS を避けて材質を替えれば、それは部材の性能が変わるということです。知らないうちに替わっていた、という事態を防ぐには、契約に変更通知を入れておく必要があります。

代替に動くときに起きること

PFAS を避けた部材に替えると、性能が変わります。フッ素樹脂が選ばれてきたのは、他に代わりがなかったからです。

耐薬品性、耐熱性、摩擦。どれかが落ちれば、工程の条件を見直すことになります。ろ材であれば流量と目詰まり微粒子や凝集体、タンパク層が膜の孔を塞いでろ過が落ちる現象。プレフィルターでの前段保護が効く。の挙動が変わり、シールであれば交換頻度が変わります。変更管理の対象として扱い、同等性変更前後が完全に同一でなくても、品質・安全性・有効性で高い類似性を保ち差異が悪影響しないと言える状態。を確認したうえで切り替えます。

規制の動きに先回りして替えるか、要求が確定してから動くか。どちらにも理があります。確実に言えるのは、⁠どこに何が使われているかの一覧を先に作っておくほうが、どちらを選ぶにしても速いということです。

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、共通に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。