共通基礎知識・製造工程

ピンチクランプ・ピンチバルブ・ストップコック・チェックバルブの違い

培地をバッグからバイオリアクター細胞やウイルスの培養を制御された環境下で大規模に行うための培養槽で、商業規模の製造に用いられる。詳しく →へ送る流路の図に、「ここで止める」部品を1つ描き足すとします。ピンチクランプでもストップコックでも、図の上では同じ位置に置けます。ところが部品表に移すと、片方は液に触れず、もう片方は液に触れる部材として抽出物の資料を求められます。

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ピンチクランプ・ピンチバルブ・ストップコック・チェックバルブの違い

分かれ目は一点です。ピンチクランプとピンチバルブは、チューブを外から押しつぶして流れを止めるので、液に触れる部品が増えません。ストップコックとチェックバルブは流路の途中に入り、本体も弁体も液に触れます。製造に使うプラスチック部材の評価を定めた USP〈665〉製造に用いるプラスチック部材・システムの評価に関する米国薬局方の一般試験法。詳しく →は、公式化日を2026年5月1日と告知しています。ストップコックとチェックバルブには、どの条件で取った抽出物データがあるかを、見積もりの段階で聞く必要があります。

外から押す部品にも分かれ道があります。チューブの外径、肉厚、硬さが合わなければ閉じきらず、長く締めたままにすると、チューブが元に戻らなくなります。自動化スキッドの仕様を詰める技術者にも、部品を発注する購買にも、提案する営業にも、使える問いが2つあります。「液に触れるか」と「相手のチューブの寸法はいくつか」です。この2つを聞き返せると、仕様の手戻りが減ります。

4つの部品 ― 外から押す部品と流路に入る部品

4つの部品は、流れに何をするかと、液に触れるかどうかで分かれます。

手で止めるのがピンチクランプ(pinch clamp)とスライドクランプで、チューブの外側に付けます。装置で止めるのがピンチバルブ(pinch valve)で、駆動部がチューブを挟みます。向きを切り替えるのがストップコック(stopcock)、逆流を防ぐのがチェックバルブ(check valve、逆止弁)です。

前の2つは、チューブより内側に何も入れません。後の2つは流路の途中に入り、本体や弁体が液に触れます。

概念図。左のグループは「外から押す部品」で、ピンチクランプ(手で止める)とピンチバルブ(装置で止める。駆動部がチューブを挟む)。チューブを外から押しつぶして流れを止めるだけで、液に触れる部品は増えない。問われるのはチューブの寸法。右のグループは「流路に入る部品」で、ストップコック(向きを切り替える。栓を回す)とチェックバルブ(逆流を防ぐ。流れは一方向)。本体や弁体が液に触れる接液部材で、問われるのは抽出物のデータ。
ピンチクランプ・ピンチバルブ・ストップコック・チェックバルブを、液に触れるかどうかで二つに分けた概念図

液に触れる部材が増えるのはストップコックとチェックバルブで、ピンチクランプとピンチバルブでは、押される側のチューブの扱い方が問われます。

手で止める部品 ― ピンチクランプとスライドクランプ

構造が単純なので、選び方の勘どころは寸法と使い方に集まります。

ピンチクランプはねじやラチェットでチューブを挟み、スライドクランプはチューブを細くなる溝へ滑り込ませて潰します。Masterflex(Avantor)の単回使用ピンチクランプは、内径0.187〜0.500インチ(約4.75〜12.7 mm)のチューブ用です。推奨する肉厚は0.085〜0.200インチ(約2.2〜5.1 mm)、硬さの上限はショアA 70です。内径が合っていても、肉厚や硬さが範囲を外れれば、閉じきらないおそれがあります。

失敗はむしろ使い方で起きます。

ゴム状の材料は、押しつぶした状態が続くと、手を離しても元の形に戻りきらないことがあります。圧縮永久ひずみ(compression set)と呼ばれる性質です。チューブ材料のデータシートには、ASTM D395 の方法Bで、たとえば22時間、70 ℃で圧縮した後の値が載ります。高温の加速試験温度などを上げて劣化を早め、短期間で安定性の傾向を調べる試験。長期保存試験を補完する。詳しく →なので、室温で数日締めた戻りを表す数字ではなく、材料による違いの目安です。

対策は、閉じておく時間を手順書作業の手順を定めた文書。品質システムの要素を具体化し、査察でも運用が確認される。詳しく →に書くことと、閉じる位置を継手から離れた真っすぐな部分に置くことです。長く止める端は、熱封止して切り離す方法もあります(無菌コネクターと溶着機の選び方)。

締めた位置を忘れる失敗は、依頼図に各クランプの出荷時の状態を書き、組み立て後の確認表にも同じ行を作って防ぎます。チューブポンプは閉じたクランプに向かっても押し続けるので、回す前に全クランプを確かめる項目が要ります(送液ポンプの選び方)。

ピンチクランプは液に触れない代わりに、閉じた時間と位置がチューブに残るので、いつ、どこを、何時間閉じるかを先に決めておきます。

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装置で止める部品 ― ピンチバルブと常閉・常開

ピンチバルブは、手で挟む動作を駆動部に任せた部品です。

液に触れるのはチューブだけで、チューブは使い捨て、駆動部と本体は繰り返し使えます。Sartorius の BioPAT Pinch Valve は電動で、専用の使い捨て部材が要りません。Emerson(ASCO)の Series 273 は空気圧式で、駆動の空気は4.8〜10 bar、チューブの中の液圧は、サイズとチューブの材質によって最大6 bar(90 psi)までです。用途に挙がるのは、バイオリアクター、TFF(接線流ろ過)膜表面に培養液を接線方向へ一方向で流し続け、細胞を通さず溶液を透過させるろ過方式。詳しく →、クロマトグラフィー固定相と移動相の間での物質の相互作用(分配・吸着・イオン交換など)の差を利用して、混合物中の成分を分離・精製する操作の総称。詳しく →のスキッドです。

空気圧式には、駆動が止まると閉じる常閉(NC)と、開く常開(NO)があり、Series 273 はどちらも選べます。基準は、空気や電源を失ったとき、その線をどちらの状態にしたいかです。ただし常閉は、運転していない間もチューブを挟み続けるので、取り付けから運転までが長いほど、圧縮永久ひずみが効きます。Sartorius の応用ノート(2024年7月)は、Biostat STR撹拌翼で機械的に混ぜ、スパージャーで通気する最も標準的なバイオリアクターの型式。詳しく → と Flexsafe STR バッグで、圧力センサーの信号により追加の排気ラインを開ける例を扱い、貼りつきやすいチューブでも確実に開けることを、設計の狙いに挙げています。

ピンチバルブの性能は、チューブを挟み続けた時間に左右されるので、常閉か常開かは、停止時の状態と挟む時間の両方から決めます。

閉じきらない原因 ― 外径、肉厚、硬さの適合範囲

ピンチバルブが閉じきらないとき、疑うのはバルブよりチューブの寸法です。

押しつぶされたチューブは、2枚の壁が重なります。閉じるには、爪の間の隙間を、2枚分の肉厚より狭くしなければなりません。肉厚の薄いチューブを厚いチューブ用の隙間で挟むと、壁の間に流路が残ります。逆に肉厚が厚く硬いチューブは、駆動部が爪を押し切れません。外径が大きすぎると、潰れて広がった幅が爪の長さを超え、端が挟まれずに残ります。

概念図。上下の爪でチューブを挟んだ断面を並べている。左は適合範囲のチューブで、外径・肉厚・硬さが合う場合。爪の間の隙間が2枚分の肉厚より狭く、2枚の壁が重なって流路が残らず、閉じる。右は適合範囲を外れたチューブで、どれも閉じきらない。肉厚が薄い場合は、厚いチューブ用の隙間で挟むので、壁の間に流路が残る。肉厚が厚く硬い場合は、駆動部が爪を押し切れず、隙間が広いまま中央に流路が残る。外径が大きすぎる場合は、潰れた幅が爪の長さを超え、爪からはみ出した両端が挟まれずに流路として残る。厚さと幅は誇張した簡略図。
押しつぶしたチューブの断面で、閉じる場合と、流路が残る場合を比べた概念図

適合範囲は、各社が外径、肉厚、硬さで示しています。Sartorius の BioPAT Pinch Valve は、本体がA・B・Cの3サイズで、内径1/8〜1インチのチューブに対応し、品番はチューブの寸法ごとに分かれます。内径×外径で、3/8 × 5/8 インチ用、1/2 × 7/8 インチ用、3/4 × 1-1/8 インチ用などがあります。3/8 × 5/8 インチ用が認定しているチューブは、TuFlux SIL、Dow Corning の Pharma 50、Sani-Tech の STHT-R、C-Flex 374 の4種です。ASCO の Series 273 は、硬さを55〜80 ショアAとしています。

「3/8インチのチューブ」と言われても、内径か外径かで肉厚はまるで違います。外径、肉厚、硬さを仕様書の規格値で確定し、適合範囲の端でなく真ん中に近いかを見ます。端にあたるなら、実機で閉じきりと開きを試験します。

POINT
認定の一覧にないチューブへ替えるときは、替える前にメーカーへ試験を依頼します。

ピンチバルブの型式は、バルブ単体ではなく、外径・肉厚・硬さが決まったチューブとの組み合わせで決まります。

切り替える部品 ― ストップコックと分岐クランプ

向きを切り替える方法は2つあります。栓を回すストップコックと、枝ごとにクランプを置く方法です。

ストップコックは、ハンドルの付いた栓を回して、3つの口のうち2つをつなぎます。操作は1か所で済みます。カタログの品は、ポリカーボネート製の本体にルアーの口が付くものが中心で、栓は流路の中にあるので接液部材です。製造用途で使えるグレードかは、メーカーに聞きます。

分岐クランプは、T字やY字の分岐継手に、枝の数だけクランプを付ける方法です。操作は2か所で、同時に開ければ液が混ざります。その代わり、液に触れる部品は継手とチューブだけで、可動部のシールがありません。

接液部材を増やしたくなければ分岐とクランプ、操作を1か所にしたければストップコックと、増やしたくないものを先に決めて選びます。

逆流を防ぐ部品 ― チェックバルブと開き圧

チェックバルブは、止める部品ではなく、戻さない部品です。

弁が開くのに要る圧力を、開き圧(cracking pressure)と呼びます。Qosina のダックビル型(品番 80065、ルアーロックの入口と出口)は 0.433 psi(換算で約0.03 bar)で、本体はポリカーボネート、弁はシリコーンです。同社のルアー式(品番 80136)は 4.2 psi(同約0.29 bar)と、10倍近く違います。水の柱に換算すると約30 cm と約3 m で、バッグを高く置いて重力で流す流路に後者を入れると、液面の高さが生む圧だけでは開きません。

置く場所は主に2つです。止まると逆向きにも流れうる磁気浮上式(マグレブ)遠心ポンプ羽根車で送液する低せん断のポンプ。TFFで蠕動ポンプの代わりに使い細胞への負荷を下げられる。詳しく →の出口側と、2本の線が合流する点の手前です。インライン希釈のように濃縮液と水を合流させる流路では、ポンプが止まると、片方の液がもう片方の線へ入る経路ができます。チェックバルブはその経路を断つ手段のひとつで、順方向を止める役は果たさないので、止めたい線にはクランプかピンチバルブを併せて置きます。

チェックバルブは、開き圧がその流路の駆動圧より十分に低いことを確かめてから置き、止める役はクランプかピンチバルブに任せます。

接液する部品 ― USP〈665〉とBPOGの資料

液に触れる部品が増えるなら、その抽出物の資料も要ります。

米国薬局方米国で医薬品・原料・試験法の公式基準を定める公定書で、製薬用水に関する規格も収載されている。詳しく →(USP)の〈665〉は、製造に使うプラスチックの部材とシステムの評価を定めた章で、公式化日は2026年5月1日と告知されています。評価の組み立て方は手引きの〈1665〉にあります。2016年の草案〈661.3〉は対象の例にバルブも挙げていたので、流路の中で液に触れるストップコックとチェックバルブにも、同じ枠組みで資料を求めます。ただし〈665〉は、ダイヤフラム、ガスケット、Oリングのようなゴム系のエラストマーを範囲の外に置いています。

もう1つの物差しが、BPOG(BioPhorum部材を比べられるよう抽出条件と報告方法を標準化した業界標準。規制上の合否を直接定めるものではない。詳しく → Operations Group)が2014年にまとめた抽出試験のプロトコルです。水、50%エタノール、0.1 M リン酸、0.5 N 水酸化ナトリウム、1%ポリソルベートタンパク質の凝集や容器壁への吸着を防ぐため製剤へ少量加える添加剤で、細胞培養で細胞を保護する目的でも使われます。詳しく →80、5 M 食塩水の6種類を溶媒に、40 ℃では最長70日まで抽出します。メーカーの資料が〈665〉、BPOG、独自のどの条件かを、最初に見ます。読み方はシングルユースのE&L、閾値は浸出物の安全性評価とAETにあります。

聞くのは「抽出物のデータはありますか」ではなく、「液に触れるのは本体のどの部分か。そのデータはどの溶媒で何日か。弁体の材質が違えば、弁体のデータもあるか」です。ダックビル型は、ポリカーボネートの本体とシリコーンの弁体が別の材料なので、分けて聞きます。シリコーンの弁体はエラストマー側の扱いになりうるので、資料がどの基準に沿うのかも確かめます。

資料の外にあるのは、クランプ本体だけです。押しつぶされるチューブは外れません。ガンマ線を当てて届くアッセンブリーに付けるなら、クランプ本体もその線量に耐えなければなりません。

クランプは資料の外に置けますが、ストップコックとチェックバルブは、本体と弁体のデータがどの条件で取られたかまで見てから採用します。

仕様を決める順番

先に、線ごとに役割を決めます。止めるのか、切り替えるのか、戻さないのか。手で操作するか、装置に任せるか。液に触れる部品を増やしたくない線は、ピンチクランプかピンチバルブに寄せます。

次に、その線のチューブを確定します。材質、内径、外径、肉厚、硬さを仕様書から拾い、クランプやバルブの適合範囲と並べます。ここを固める前にバルブを選ぶと、閉じきらない組み合わせを発注します。

そのうえで型式を選びます。ピンチバルブは、駆動の方式(空気圧なら4.8〜10 bar、電動なら専用のドライブ)と、常閉か常開かです。チェックバルブは、開き圧とその線の駆動圧を比べます。液に触れる部品には、溶媒と日数、弁体の材質、滅菌の方法と線量を、見積もりの段階で書面にしてもらいます。

最後に、状態を書きます。各クランプとバルブの出荷時の状態、閉じておく時間の上限、チェックバルブの流れの向きを、依頼図と手順書に入れます。クランプとバルブは、無料のアッセンブリー依頼図ツールで図に置けます。製品はシングルユース流路(チューブ・アセンブリ)で横断できます。

自動化スキッドでチューブを替えるたびに、ピンチバルブの何を確かめ直していますか。ProgLoop で、ほかの現場のやり方も聞いてみてください。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、共通に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。