シングルユースアッセンブリーを頼むとき、メーカーに何を渡すのか

カスタムのシングルユースアッセンブリーを頼むときにメーカーへ渡すのは、流路図、部品表、使い方の条件をまとめた要求仕様の3つです。図と表で「何をどうつなぐか」を、要求仕様で「どんな液を、どんな条件で流し、どんな書類が要るか」を伝えます。
しかし、図と部品表をそろえても、メーカーからの質問が何往復も続くことがあります。戻される理由の多くは、部品の名前ではなく、寸法の基準と使い方の条件が書かれていないことです。
この記事では、仮の依頼文を例に、メーカーが何を聞き返すのか、依頼の前に何を決め、図と部品表に何を書けばよいのかを順に説明します。
- メーカーには何を渡すのか:流路図、部品表、使い方の条件をまとめた要求仕様の3つです。
- 何度も戻されるのは、どこが抜けているときか:寸法の基準、端の相手、滅菌の条件、求める書類が抜けているときです。
- 図はどう作ればよいのか:流れの順に番号を振り、部品表の行と1対1で対応させます。
1. 「1/4インチのチューブ2 m」で、メーカーは図を描けるのか
製造の担当者が、次の依頼をメーカーに送ったとします。説明用の仮の例です。
「培地を20 Lのバッグから滅菌フィルターを通してバイオリアクター細胞や微生物を、温度・pH・溶存酸素などを制御しながら培養する槽です。数リットルの開発用から数千リットルの商業生産用まであり、ステンレス製と使い捨て(シングルユース)があります。詳しく →へ送るラインを1式。チューブは1/4インチで長さ2 m、バイオリアクター側は無菌コネクター無菌状態を保ったまま2本のチューブや流路をつなげる接続部品です。開放せずに滅菌済みの液経路を接続でき、外部からの汚染リスクを抑えます。詳しく →。」
部品の名前はそろっていますが、メーカーはこの文面からは図を描けません。返ってくる質問は、たとえば次のとおりです。
| 依頼に書いたこと | メーカーが聞き返すこと |
|---|---|
| チューブは1/4インチ | 内径か外径か。材質と外径(肉厚)は何か。ポンプに掛ける区間はあるか |
| 長さ2 m | どこからどこまでの長さか。区間ごとの長さと許容差はいくつか |
| 無菌コネクター | どの製品の、どの系列か。相手側はオスかメスか |
| 滅菌フィルター | 膜の種類と面積、両端の接続は何か。使う前の完全性試験の配管は要るか |
| (書いていない) | 滅菌の方法と線量の範囲、要る書類、使う圧力と温度 |
表の右側は、部品を選ぶ前に決まっていなければならない条件で、依頼する側にしか答えられません。 メーカーは、図を描く前にこれらを確かめる必要があります。
この表は、依頼で伝えるものが3つに分かれることも示しています。部品のつながり方を描いた流路図、部品ごとの型式と寸法を並べた部品表、そして液や圧力、滅菌、書類といった使い方の条件です。3つ目を文書にしたものを、要求仕様(URSそのシステムに何をさせたいかを定義する文書。Vモデルで検証項目をひもづける起点になる。詳しく →:User Requirements Specification)と呼びます。
2. 聞き返しが続くと、何が困るのか
往復のたびに図が描き直され、そのたびに社内の承認と見積もりがやり直しになるからです。
カスタムの図面は、使う側の会社の中で承認を受けてから製作に進むと報告されています(Ding, 2015)。チューブの寸法を1か所直しただけでも、図の版が変わり、承認をもう一度回します。
承認した図面は、納品のときの基準にもなります。EU GMP Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく → の8.138は、届いたシングルユースシステムを、承認した仕様どおりに作られ、届けられたかを確かめるべき(should)としています。外装とラベルを目で見ることと、添付の書類(適合証明書や滅菌の証明など)を確かめることも、使う前に行い、記録に残すべきとしています。
つまり、図面にあいまいな箇所を残したまま承認すると、届いた品が仕様どおりかを受け入れのときに判断できません。書類の種類も依頼の段階で決めておかないと、受け入れに必要な書類が届かないことがあります。
3. 依頼の前に、何を決めておくのか
部品を選ぶ前に、液と流し方、圧力と温度、滅菌、書類の4つを決めます。 どれも、部品の材質や型式を絞り込む条件になるためです。
- 用途と工程の位置:何の液を、どこからどこへ送るか、ためるか。1回に流す液量と流量も書きます。液量はバッグの容量を、流量はチューブの内径とポンプを決めます。
- 圧力と温度:使うときの圧力と温度に加え、凍結や輸送のような厳しい条件があるかを書きます。Annex 1 の8.137は、凍結と融解や輸送のような条件で、部品と無菌接続チューブや容器を無菌状態を保ちながら接続する操作で、専用の溶着装置などを用いて行う。詳しく →の部分が壊れないことを確かめるべきとしています。
- 滅菌:ガンマ線かX線か、線量の範囲を決めます。線量の下限は無菌を保証するための値で、上限は材料が性能を保てるかを試した線量より低く置きます(STERIS)。1つのアッセンブリーにまとめて照射するため、中のすべての部品がその範囲に耐える必要があります。
- 書類と試験:ロットごとに付く適合証明書(CoC:Certificate of Conformance)と滅菌の証明、部材の検証資料(Validation Guide)、抽出物の資料を、どれだけ求めるかを決めます。
抽出物の資料は、BPOG(BioPhorum Operations Group。現在の BioPhorum)がまとめた抽出物試験の標準プロトコルや、プラスチック部材の評価を扱う USP〈665〉製造に用いるプラスチック部材・システムの評価に関する米国薬局方の一般試験法。詳しく →に沿っているかを確かめます。資料を自社の工程にどう当てはめるかは、浸出物の安全性評価の記事にあります。
試験の頻度も分けて聞きます。BPSA(Bio-Process Systems Alliance)の品質試験の一覧表は、物理・機能・生物・化学・規制・滅菌の6つの区分の試験を、材料の評価、製品の評価、ロットごとの出荷のどこで使うかに分けて示しています。粒子やエンドトキシングラム陰性菌の外膜由来の発熱性物質(LPS)で、注射剤では厳しく管理し、LAL試験などで測定します。詳しく →など、清浄度にかかわる試験がロットごとに行われるのか、評価のときだけなのかで、受け入れで確かめることが変わります。
これらの項目を書き出す型としては、BioPhorum と BPSA が2026年4月に改訂した SUUR(Single-Use User Requirements)ツールキットがあります。要求を書く雛形と、部品の供給元の情報を聞く雛形、使い方の手引きで構成され、ASTM E3051-25 や Annex 1 に合わせてあります。メーカーが同じ型で答えるため、2社目と比べるときにも並べて読めます。
4. 流路図と部品表には、何を書くのか
流路図には部品のつながりと向きを、部品表には部品ごとの型式と寸法を書き、2つを同じ番号で結びます。 図だけでは型式が、表だけではつながり方が伝わらないためです。
流路図に書くのは、次の4つです。
- 流れの順と番号:液が流れる順に部品を並べ、1つずつ番号を振ります。
- 向き:フィルターの入口と出口、逆止弁の流れの向き、バッグのどのポートにつなぐかを描きます。
- 長さの基準:区間ごとの長さを、どこからどこまでかが分かるように書きます。
- 端の処理:開いたままの端、キャップ、閉じたクランプなど、出荷するときの状態を書きます。
部品表には、番号ごとに部品の名前、メーカーと型式、材質、寸法、数量を並べます。チューブなら材質と内径×外径と長さを、継手なら種類と呼び径、オスかメスかを書きます。
インチの数字がどこを測っているかはチューブのインチとトリクランプ、継手の種類はつなぎ手の選び方、クランプの出荷時の状態はクランプとバルブの選び方の記事で詳しく読めます。
5. メーカーとのやり取りで、何度も戻されやすいのはどこか
戻されやすいのは、数字や名前は書いてあっても、その意味が1通りに決まらない箇所です。 依頼する側は分かっているつもりでも、メーカーには複数の読み方が残ります。
- 寸法の基準:「1/4インチ」が内径か外径か、「2 m」がどこからどこまでかが書かれていません。
- 端の相手:無菌コネクターの系列や、継手のオスとメスが、つなぐ相手の機器と合っているかが確かめられていません。
- 滅菌と部品の組み合わせ:指定した部品の中に、決めた滅菌の方法や線量の範囲に対応していないものが含まれています。
- 書類の範囲:どの部品の抽出物の資料が要るか、変更があったときに知らせてもらう取り決めを結ぶかが決まっていません。
- 図の版:直した図と古い図が並行して回り、どれが最新かが分からなくなります。
図の上では合っていても、実物にすると長さや配置が合わないこともあります。充填装置用のアッセンブリーを導入した事例では、試作品で水を流して試したところ、最終の図面の前に小さな変更が2つ必要だと分かったと報告されています(Gross ら, 2014)。
6. 図は、どう作ればやり取りが減るのか
図を描く前に要求仕様を1枚にまとめ、流れの順に番号を振った図と部品表をそろえてから送ると、最初の問い合わせで答えられる質問が増えます。 次の順に進めます。
- 標準品から探す:メーカーの標準のアッセンブリーや部品の一覧から使えるものを先に探し、足りない所だけをカスタムにします。
- 要求仕様を1枚にする:3節の4つ(液と流し方、圧力と温度、滅菌、書類)を1枚に書きます。
- 流れの順に図を描く:手書きでもかまいません。部品に番号を振り、向き、長さの基準、端の処理を書き込みます。
- 部品表を番号でそろえる:図の番号と表の行を1対1で対応させ、型式と寸法を埋めます。
- 版と日付を入れる:直すたびに版を上げ、どこを変えたかを1行残します。
- 承認の前に試作品で確かめる:長さや配置が気になる箇所は、水を流す試作品で確かめてから図を承認します。
3と4の手間を減らすなら、Proglenth のアッセンブリー依頼図ツールを使う方法もあります。部品を置いてつなぐと、番号付きの図、部品表、問い合わせ文のたたき台が出ます。登録は要りません。メーカーに渡す依頼用の図なので、製作の図面はメーカーが描き、依頼する側が承認します。
依頼の段階で条件がそろっていれば、図の往復は寸法や配置の確認に絞られます。承認した図面は、納品のときに品を照らす基準としても使えます。
完成品はシングルユース・アッセンブリーとシングルユース流路の製品ガイドで比べられます。
参考文献
- European Commission. EudraLex Volume 4, Annex 1: Manufacture of Sterile Medicinal Products(2022). 8.131〜8.139(シングルユースシステム。8.137 厳しい条件での完全性、8.138 受け入れのときの確認)
- ASTM International. E3051-25 Standard Guide for Specification, Design, Verification, and Application of Single-Use Systems in Pharmaceutical and Biopharmaceutical Manufacturing. 2025.
- BPSA. Updated Single-Use User Requirements (SUUR) Toolkit Published by BioPhorum & BPSA. 2026年4月1日.(要求の雛形、供給元の情報を聞く雛形、手引き)
- BPSA. Bio-Process Systems Alliance Releases the 2023 Single-Use Manufacturing Component Quality Test Matrices. 2023.(6つの試験の区分と、材料の評価・製品の評価・ロットの出荷での使い方)
- STERIS AST. Overview of a Gamma Irradiation Validation.(ISO 11137 の3部と、線量の範囲の決め方)
- Ding W. Best Practices in Qualification of Single-Use Systems. BioPharm International. 2015;28(9).(要求仕様から始めること、カスタムの図面の社内承認)
- Gross R, Nink A, Breitenbach F, et al. Establishing Single-Use Assemblies on Filling Equipment. BioProcess International. 2014.(試作品での確認と図面の承認)
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