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落下菌と浮遊菌の違いとは?平板とエアサンプラーの使い分け

無菌充填除菌ろ過した薬液を無菌の環境で容器に充填し、無菌のまま封をする工程。最終滅菌できない製品で用いる。詳しく →のラインでは、同じ場所の空気を2つの方法で測っています。エアサンプラーで空気を吸い込んで菌を数える浮遊菌空気を一定量吸引して培地平板に当て、空気中の微生物数を測る指標。詳しく →の測定と、寒天培地の平板を開けて置いておく落下菌開放平板に自然沈降した微生物を測る環境モニタリングの指標。詳しく →の測定です。装置なら10分ほどで空気を吸い終えるのに、なぜ平板を何時間も置き続けるのでしょうか。

答えは、2つが同じものを測っていないからです。エアサンプラーの結果は、空気 1 m³ に菌がいくつ含まれていたかを示します。落下菌の結果は、開いた容器の口に落ちてくる菌の数に近い値です。前者は部屋の空気の状態を、後者は製品が受けうる汚染を見ています。

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落下菌と浮遊菌の違いとは?平板とエアサンプラーの使い分け

EU GMP Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく →(2022年改訂)は、グレードA充填点周辺など無菌操作の中心となる最高清浄度区域。作業中も連続監視される。詳しく →で作業の全時間にわたって微生物を監視するよう求めています。2つの違いが分かると、平板をどこに置き、何時間で替え、1つのコロニーをどう扱うかの判断が変わります。測定計画を書く人にも、結果を判定する人にも、装置を選ぶ人にも関わる話です。

2つの測り方の違い ― 吸い込む空気と落ちてくる粒子

エアサンプラーは空気を吸い込み、平板は粒子が落ちてくるのを待ちます。この差が、結果の単位にそのまま出ています。

エアサンプラー(アクティブエアサンプラー)は、決まった流量で空気を吸います。多くの機種は、小さな穴の並んだ蓋から寒天の表面に吹き付けて、空気中の粒子を培地に付けます。Merck の MAS-100 NT は流量を毎分 100 L に保つ機種で、1 m³ を吸うのに10分かかります。Cherwell が扱う SAS Super 180 は毎分 180 L で、1 m³ を6分足らずで吸い終えます。培養して出たコロニーの数は、コロニー形成単位(colony forming unit培養した際に1つのコロニー(集落)を形成する微生物の単位で、生菌数を表す際に用いられる。詳しく →、CFU)で数え、吸った空気の量あたりの CFU/m³ で表します。

落下菌の測定は、直径 90 mm の平板(セトルプレート、settle plate)のふたを開けて置くだけです。空気中の粒子のうち、重さで落ちてきたものが培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →に乗ります。結果は平板1枚あたりのコロニー数で、Annex 1 は4時間あたりの数で上限を決めています。

クリーンルーム空気中の塵埃・微生物を規定レベル以下に管理した、医薬品・細胞製品の製造に用いる専用室。詳しく →の菌は、たいてい単独では漂っていません。作業者の皮膚のかけらのような粒子に乗って運ばれます。大きな粒子ほど早く落ち、開いたバイアルの口に入るのも、こうして落ちてきた粒子です。グラスゴー大学の W. Whyte は1996年の論文で、充填処方済みの溶液をバイアルやシリンジなどの容器へ無菌的に充填し、封止する製造工程。詳しく →した容器が空気から受ける汚染を見積もるには、落下菌の平板がいちばん適していると論じました。

図1 エアサンプラーと落下菌の平板が数えているものの模式図。左のエアサンプラーは、上から空気を吸い込み、穴の並んだ蓋を通して下の寒天培地に粒子を吹き付け、ポンプの横から排気する。結果は CFU/m³ で、この空気 1 m³ に菌がいくつあるかに答える。毎分 100 L の機種では 1 m³ を吸うのに約10分かかり、空気の濃さを場所や時刻で比べやすい。右の落下菌の平板は、直径 90 mm の平板のふたを開けて開いたバイアルの横に置き、重さで落ちてきた粒子を受ける。結果は CFU/4時間(1枚あたり)で、開いた容器の口に菌がいくつ落ちるかに答える。作業の間さらし続けて最長4時間で交換し、空気を吸わないので空気の濃さは分からない
図1 エアサンプラーと落下菌の平板が数えているものの模式図

その代わり、平板は空気を吸わないので、空気の濃さは分かりません。部屋の空気が汚れ始めたのか、近くで人が動いただけなのかを数字で比べたいときは、体積あたりで測れるエアサンプラーが向いています。

浮遊菌の数字は空気の状態を、落下菌の数字は製品の口に落ちる量を表すので、片方の結果でもう片方を代わりにはできません。

換算できない2つの上限 ― Annex 1 の表の読み方

Annex 1 の表では、浮遊菌と落下菌の上限が同じ行に並んでいます。並んでいても、互いに換算できる値ではありません。

グレードBを例にとると、浮遊菌は 10 CFU/m³、落下菌は 90 mm の平板で 5 CFU/4時間です。見比べると「空気 1 m³ に10個なら、平板には4時間で5個落ちる」と読みたくなります。

ところが Whyte らは2016年、手術室とクリーンルームで空気中の菌の濃さと平板への落ち方を測り、両者を結ぶ値が一定ではないことを示しました。空気中の菌が少ない場面ほど、濃さの割に多くの菌が平板に落ちていました。同じ論文は、Annex 1 がグレードの上限を決めるときに前提にしてきた、濃さと落下数の対応にも見直しを提案しています。

グレードAでは話がもっと単純です。浮遊菌も落下菌も上限は「no growth」で、コロニーが1つでも出れば調査の対象です。グレードの区分そのものはクリーンルームのグレード分類で解説しています。

浮遊菌が0だった時間帯に落下菌が1つ出ても、測り間違いの証拠にはなりません。2つの方法は、別々の問いに答えているからです。

表の2つの数字は換算表ではなく、それぞれ別に守る上限です。

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時間の覆い方 ― 作業の全時間と10分の切り取り

2つ目の違いは、作業のどれだけの時間を見ているかです。

Annex 1 の 9.24 は、グレードAの微生物の監視を、無菌の組み立て(セットアップ)から重要な作業が終わるまで切れ目なく続けるよう求めています。手段の例に挙がっているのは、エアサンプラーと落下菌の平板です。介入(intervention)や一時的な乱れを取りこぼさないこと、監視の操作そのものが汚染の原因にならないことも条件に入っています。

平板は、この要求に合わせやすい方法です。置いておけば作業の間ずっと測り続け、電源も配管も要りません。Annex 1 の表の注記は、90 mm の平板を作業の間さらし続け、最長4時間で交換するよう求めています。

エアサンプラーで 1 m³ を吸う10分は、作業全体から見れば一場面にすぎません。充填が4時間続けば、測っていない時間に起きたことは数字に残りません。

そこで、吸い続けるための機種があります。Particle Measuring Systems の BioCapt Single-Use は、推奨流量を毎分 25〜50 L に抑えた使い捨ての衝突式サンプラーです。狙いは、アイソレーター外気と隔てた無菌の作業空間をつくり、その中で無菌操作を行う装置です。RABSも作業域を囲うバリアの一種です。詳しく →や RABS、グレードAでの連続監視です。同社は、毎分 25 L で4時間吸い続けても菌を回収できるとしています。ただし同社自身が、その時間は使う側の現場の条件で検証してから使うよう断っています。Lighthouse の ActiveCount25H も毎分 25 L の機種です。

流量を抑えるのには理由があります。勢いよく吸えば、グレードAの一方向流(unidirectional airflow)を乱しかねません。Annex 1 の 9.22 は、選んだサンプリング方法がグレードAとBの気流を乱さないことを示すよう求めています。長く吸うほど、吹き付けられる空気で寒天も乾いていきます。

図2 作業の全時間をどう覆うかの概念図。グレードAの無菌充填1回分を、無菌の組み立て、充填、介入、充填の順に横に並べている。1段目の落下菌の平板(90 mm)は、1枚目(最長4時間)、2枚目、3枚目と切れ目なく続き、2か所の交換のたびに手が入る(これも介入)。2段目のエアサンプラー(毎分 100 L)は、組み立ての始まり、介入の最中、終わり近くに約10分ずつ測るだけで、その間は数字に残らない。体積あたりの数字をとる場面を選んで測る。3段目の低流量の連続サンプラー(毎分 25〜50 L)は作業の間ずっと吸い続け、捕集部の交換の間隔は自社の検証で決める。横幅は時間に比例していない
図2 作業の全時間をどう覆うかの概念図

作業の全時間を覆う役は平板か低流量の連続サンプラーに、体積あたりの数字をとる役は通常のエアサンプラーに、と役割を分けて組みます。

平板の乾燥と交換 ― 4時間という上限の根拠

平板も、いつまでも置いておけるものではありません。

一方向流の下では、寒天の水分が少しずつ抜けていきます。乾いた培地では、落ちてきた菌が育ちにくくなります。Annex 1 の表の注記も、さらす時間は菌を回収できることを確かめた検証にもとづいて決め、培地の性能を損なわない長さにするよう求めています。

交換にも代償があります。平板を替えるたびに、作業者がグレードAに手を入れます。これも介入の1つです。

交換を減らす工夫も出てきました。ドイツの注射剤 CDMO医薬品の開発・製造を他社から受託する企業。設備投資を負わずに専門能力を使える。詳しく →、Vetter は、直径 150 mm の大きな平板を使い、さらす時間を延ばす運用を約10年続けていると説明しています。2026年9月に無菌充填ラインを10本増やす計画を発表した会社です。同社がこの運用の裏づけに挙げるのは、社内の Martin Falke が2025年に PDA Journal に発表した論文です。150 mm の平板は、湿度が中程度のクリーンルームなら、一方向流の下で最長8時間さらしても培地の性能が落ちませんでした。凍結乾燥製剤凍結乾燥した注射剤などが適切な状態かを確かめる試験で、残った水分量や、使う前に溶かし直したときの溶けやすさ(再溶解性)などを調べます。詳しく →の充填に使うような湿度のごく低い部屋では、最長6時間でした。

ただし、Annex 1 の表は 90 mm の平板を前提にしていて、150 mm の平板には推奨がありません。取り入れるなら、自社の部屋の湿度と気流で回収率添加した既知量の標準物質に対して試験で実際に測定された値の割合を示す指標で、試験の正確さを表す。詳しく →を確かめ、上限の置き方もそのデータで説明します。

交換を減らせば介入は減りますが、そのぶん、乾いても菌が育つことを自社のデータで示す仕事が増えます。

よくある失敗 ― 平均での判定、置き場所、回収率の資料

失敗は、測り方そのものより、読み方と置き方で起きています。

PMDA が2023年6月に出した GMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく → 指摘事例速報(オレンジレター)No.8 は、グレードAで無菌充填を行う製造所の事例です。この製造所は落下菌と、機器表面や作業者の付着菌表面をぬぐう、または押し当てて測る、器具や表面に付いた微生物。詳しく →をそれぞれ複数の地点で測り、測定項目ごとの平均値が 1 CFU 未満なら基準内としていました。そのため、グレードAの複数の地点で菌が出ていたのに、平均に埋もれて判定に表れていませんでした。PMDA は、地点の結果を単純に平均して汚染リスクを小さく見積もっていないか、グレードAで菌が出たときに製品品質への影響を評価しているかを確かめるよう求めています。

置き場所も外しやすいところです。平板は、開いた容器や滅菌済みの部材が空気に触れる場所の近くに置いて初めて意味を持ちます。手の届きやすい場所や、製品から離れた気流の下流に置けば、数字はきれいでも製品の口で起きていることは見えません。逆に、平板やサンプラーの吸い込み口が気流を遮り、製品の上に乱れを作ることもあります。置いた状態で気流の可視化(スモークスタディ気流を可視化して汚染が入りやすい弱点を把握し、監視地点の選定に使う試験。)を撮り、流れを確かめておきます。

資料の側では、回収効率のデータが抜けがちです。Annex 1 の 9.29 は、選んだサンプリング方法の回収効率を裏づけるデータを用意するよう求めています。エアサンプラーのメーカーは、どの大きさの粒子まで捕まえられるかを d50(半分を捕まえられる粒子径)という値で示しています。メーカーに聞くべきは「流量はいくつか」ではなく、「その流量で、どの大きさの粒子まで、何時間、菌を生かしたまま捕まえられるか」です。

POINT
グレードAでコロニーが1つ出たら、平均や合計に混ぜずに、地点と時刻をそのまま記録して調査を始めます。同じ時間帯の浮遊菌が0でも、落下菌の検出を打ち消す理由にはなりません。

装置と平板の選び方 ― メーカーに確かめる点

製品は環境モニタリングで横断できます。Particle Measuring Systems と Lighthouse は、微粒子の計数器から微生物のサンプラーまでをそろえています。Cherwell は、エアサンプラーと Redipor の平板の両方を扱います。

アイソレーターの中で環境モニタリング無菌製造区域の空気・表面・作業者を微粒子や微生物で継続監視し、汚染管理の状態を記録する活動。詳しく →を自動で回す構成も出てきました。OPTIMA pharma は、アイソレーター一体型のシリンジ充填機 H6-10 を、自動化した環境モニタリングと組み合わせてInterpack 2026 で披露しました。充填の囲い方はアイソレーターと RABS の選び方で解説しています。

選ぶときは、メーカーに次の点を確かめておくと、検証の材料がそろいます。

  • 流量と、1 m³ を吸うのにかかる時間
  • d50 などの捕集の性能と、菌を使った回収率のデータ
  • 連続で吸える時間と、その時間でも菌を回収できることを示すデータ
  • アイソレーターや RABS に固定する吸い込み口の有無と、気流への影響
  • 平板の直径と培地、さらせる時間を検証したデータ

測定計画を決める順番

計画は、装置からではなく、製品が空気に触れる時間から組み立てます。

先に、開いた容器や滅菌済みの部材が空気に触れる場所と時間帯を書き出します。無菌の組み立てから充填の終わりまでが対象で、介入が起きる場所もここに含めます。

次に、その時間を切れ目なく覆う手段を決めます。平板なら交換の間隔を決め、交換の手順を介入として手順書作業の手順を定めた文書。品質システムの要素を具体化し、査察でも運用が確認される。詳しく →に書きます。アイソレーターや RABS で手を入れる回数を減らしたいなら、低流量の連続サンプラーの吸い込み口を固定する方法もあります。

そのうえで、エアサンプラーで体積あたりの数字をとる場面を決めます。無菌の組み立ての直後、介入の最中、作業者の多い時間帯のグレードBなどです。吸い込み口を置いた状態で、気流を乱していないことを可視化で確かめます。

最後に、判定と記録のルールを決めます。グレードAの検出は1つでも調査に回し、地点ごとに記録して、平均で丸めません。監視計画の全体は、環境モニタリングと培地充填と汚染管理戦略(CCS)の中に位置づけます。

エアサンプラーと落下菌、両方で測っている場所はどこですか。ProgLoop で、ほかの現場の組み方も聞いてみてください。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、共通に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。