ドイツの受託開発製造大手(CDMO)である Vetter が、9月28日、注射剤の無菌充填・仕上げ(フィル&フィニッシュ)の生産網を広げると発表しました。新たに10本の商用充填ラインを加える計画で、そのうち7本を既存拠点に、残る3本をドイツ・ザールラント州に新設するザールルイの商用工場に置きます。プレフィルドシリンジを充填する最初の1本はすでに稼働を始めており、生産能力を一度に建て替えるのではなく、需要の伸びに段階的に応じる形をとります。
既存拠点に7本、新設ザールルイに3本
既存拠点に置く7本のうち、2本目は2026年末までに立ち上げ、無菌充填の5本を2028年までに順に加えます。ザールルイの3本は、2031年の稼働を見込む新工場に据えます。増設の中心はドイツ南部にあるVetterの商用フィル&フィニッシュ拠点で、ここには従来から充填ラインが集まっています。ザールルイは第1期だけで約4億8000万ユーロ(約800億円)を投じる40ヘクタールの敷地で、長期には最大2,000人規模の雇用を見込みます。Vetterは、需要の伸びに合わせて追加の生産能力を段階的に用意し、拡張性のある生産体制と管理の行き届いたサプライチェーンで顧客の成長を支える構えです。先に動くのは既存拠点の7本で、新工場の3本は2031年まで待つという時間差が、この計画の骨格です。
プレフィルドシリンジから始める段階投資
今回の10本は、Vetterがここ数年で進めてきた総額15億ユーロ(約2,500億円)規模の世界拡張の一部にあたります。米イリノイ州デスプレインズでは延べ床面積約16万平方フィート(約1万5000平方メートル)の新拠点を建設中で、2029年の稼働を予定しています。既存拠点でも、秤量室や無菌エリアの調製室、目視検査、原薬用の冷凍・冷蔵設備を増やす工事が同時に進んでいます。注射剤の充填はEU GMP Annex 1が求める汚染管理の水準が高く、プレフィルドシリンジやアイソレーター/RABSの選定のように容器や設備で難しさも変わります。能力をまとめて足すよりも、用途に合わせて1本ずつ積み増すほうが現実に合います。Vetterは、継続的な投資によって国際市場での供給力を厚くし、現在と将来の製品を支えるパートナーであり続ける方針を掲げています。巨大工場を一気に立ち上げるのではなく、既存拠点への積み増しと2031年稼働の新工場を組み合わせる点に、Vetterの読みが表れています。
抗体医薬やGLP-1系の注射剤が広がり、無菌充填の枠は世界的にひっ迫してきました。Vetterが選んだ段階的な積み増しが、需要の伸びに遅れず、しかも過剰な設備を抱え込まずに応えられるのか。専業CDMOの拡張の巧拙が、そこで問われます。
※ 本ページは公開情報をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。