Protein Aレジンは何サイクルで交換すればいい?
次のロットの樹脂を発注する段になって、購買から「このカラムはあと何回使えるのか」と聞かれることがあります。手元にあるのはメーカーのアルカリ耐性樹脂やリガンドが、CIPで使う水酸化ナトリウムなどの強アルカリ条件に繰り返し耐えられる性質。詳しく →データくらいで、その回数をそのまま答えてよいのか迷う場面です。

決まった回数はありません。寿命は樹脂そのものの属性ではなく、樹脂と自社の運転条件の組み合わせで決まるもので、スケールダウンで回す寿命検証の結果から、基準を割ると予測される回数に安全余裕を見て置きます。回収率やリガンド漏出の日常モニターが先に基準を割れば、その回数に届く前でも替えます。
なぜそうなるのか
メーカーの数字は、決まった緩衝液とCIP条件で得たものです。CytivaはMabSelect PrismAについて、0.5 M NaOHで定置洗浄(CIP)した条件では150サイクル後も初期の動的結合容量実際に液を流しながら測る、担体が破過するまでに結合できるタンパク質量。樹脂の使い切りの指標。詳しく →(DBC)の約90%を保ったというデータを公開しています。同じ比較で、1.0 M NaOH強アルカリの洗浄剤。タンパク質や核酸を分解する力が強く、Protein A樹脂のCIP・消毒に使われます。詳しく →では約80%まで下がり、0.1 M NaOHでは146サイクルまでに40%を超える容量を失いました。洗浄を強めても弱めても寿命は縮み、しかもこれは同社の条件での結果にすぎません。実際の工場では培養液の汚れ方も、溶出pHも、負荷量も違います。2015年にBioPharm Internationalに載った業界調査でも、経済的に成り立たせるには50〜300サイクルの再使用が要るとされ、回答者の約8割が、回数とともにDBCの低下と破過曲線樹脂が飽和し目的物が素通りし始める様子を記録した曲線。DBCはこの曲線から読み取ります。詳しく →の傾きの鈍化を見ていました。幅が6倍もあること自体が、回数が運転条件で動く数字だという証拠です。
劣化の現れ方も1つではありません。DBCの低下は収量に、リガンド漏出樹脂からリガンド(Protein A)が離れて溶出液に混じること。後工程で除去・管理する不純物です。詳しく →は品質と安全性に、落ちない汚れの蓄積は圧やピーク形状といった運転の安定に効き、DBCがまだ十分でも、漏出が先に基準へ達することがあります。
現場で分かれるところ
寿命検証本番と同じ運転を小型カラムで何百回も繰り返し、劣化の推移から使えるサイクル数を見極める試験。では、ベッド高クロマトグラフィーで担体を充填した層の高さ。分離は液が担体層を通る距離に依存するため、スケールをまたぐときに一定に保つ基本パラメータです。詳しく →、滞留時間、負荷比、CIPタンクや配管を分解せず設置したまま洗浄(CIP)し、蒸気などで滅菌(SIP)する仕組みです。詳しく →条件を本番とそろえた小さいカラムで、想定寿命を超える回数まで先回りして回します。樹脂が1サイクルで受けるダメージは体積あたりで決まるため、この条件がそろっていれば小スケールの結果を本番に当てはめられます。たとえば120サイクル目で漏出が基準に達したなら、寿命を120とは置かず、100のように手前に引きます。
交換基準に「100サイクル」と書くなら、その横に、回収率・リガンド漏出・圧のどれが管理基準を割ったら回数に関係なく止めるかを並べて書いておきます。回数だけの基準は、実機で詰め方や洗浄液の行き渡りが変わったときに気づけません。
もう1つの分かれ目は、使い切るか余裕を持って替えるかという経済判断です。上限近くでは劣化が加速し、ロット不良や再洗浄の手間が増えるので、樹脂代を節約したつもりが手戻りで失うこともあります。
もっと詳しく知るなら
Protein Aレジン抗体のFc領域に特異的に結合するリガンドを固定した担体で、抗体を高い純度で一度に捕捉できる精製用レジンです。詳しく →が高価な理由、劣化の3つの顔、スケールダウンで寿命を語れる根拠、CIPと保管が寿命を削りつつ守る仕組み、そして交換判断の3つの軸までは、Protein Aレジンの寿命とコスト:いつ交換するかにまとめています。連続キャプチャ複数のクロマトカラムを切り替えて休みなく捕捉を続け、装置と担体を効率よく使う連続精製の方式(PCC/MCC)です。詳しく →のように樹脂を使い倒す運転での寿命管理も、そちらからたどれます。
何サイクルで替えるかは、自社条件で回した寿命検証と日常モニターの両方で決まり、先に替えどきを告げたほうに従います。カタログの耐久データは、その出発点にすぎません。
参考文献
- Cytiva, MabSelect PrismA resin: cleaning in place with 0.5M NaOH
- Re-use of Protein A Resin: Fouling and Economics. BioPharm International. 2015;28(3):28-33.
- EMA, Guideline on process validation for the manufacture of biotechnology-derived active substances and data to be provided in the regulatory submission
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