抗体医薬基礎知識・培養

なぜ今みんな「灌流」に動くのか──連続生産の現実味

ここ数年、上流(培養)の話題は「いかに濃く、長く回すか」に寄っています。その中心にあるのが灌流(パーフュージョン)。新鮮な培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。を入れ続け、老廃物を抜き続けることで、細胞を高密度のまま長期間走らせる方式です。なぜ今、各社がここに動くのでしょうか。

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なぜ今みんな「灌流」に動くのか──連続生産の現実味
この記事の要点
  • 上流培養で灌流が注目され、2022年のICH Q13確定で連続生産が承認の道として現実味を帯びています。
  • 灌流の魅力は設備の小ささで、2,000L級が20,000L規模のfed-batchに匹敵する年間生産量を出しうるとされます。
  • 一方で酸素供給の律速や乳酸蓄積、ATFなどの細胞保持装置が必要で、日々の管理項目も増えます。

規制の追い風

大きかったのは、2022年に確定したICH Q13原薬・製剤の連続生産に関する品質・規制の考え方を整理した国際調和ガイドライン。連続生産培養から精製までを区切らず流れとしてつなぐ生産方式。ICH Q13が承認の道筋を示す。のガイドライン。Step 4到達は2022年11月)です。連続生産が「正式に承認を取れる商用の道」として認められたことで、移行のハードルが下がりました。技術的に可能、というだけでなく、出口(承認)が見えたことが効いています。

設備が小さくて済む、という現実的な魅力

灌流の魅力は、突き詰めると「設備が小さくて済む」ことに集約されます。ある解説では、80×10⁶ cells/mL級で回す2,000Lの灌流バイオリアクター細胞やウイルスの培養を制御された環境下で大規模に行うための培養槽で、商業規模の製造に用いられる。が、20,000L規模のfed-batchトレインに匹敵する年間生産量を出しうるとされています。

設備が小さければ、建屋も投資も小さくなります。さらにシングルユースの灌流構成なら、洗浄バリデーション設備を洗浄した後、前の製品の残留がないことを検証し交叉汚染を管理する活動。の負担も大きく減ります。多品種・変動する需要に、身軽に応えたい——その要請と灌流の特性がかみ合っています。

現場目線での注意点

もちろん良いことずくめではありません。高密度になるほど酸素供給が律速になりやすく、乳酸の蓄積や代謝の破綻と隣り合わせです。細胞保持にはATF灌流培養で使用済みの培地を入れ替えつつ、細胞は培養槽に残すための装置です。中空糸膜などで細胞と液をより分けます。詳しく →(交互タンジェンシャルフロー)などの装置も要ります。fed-batchの「決まった日に仕込んで、最後に回収」という分かりやすさを手放す覚悟も必要です。

運用面では、生産培養に入る前のシード拡大にも灌流の考え方が広がっています。生産の一段手前の工程を灌流で回して高密度の種細胞を用意するN-1灌流のような手法は、生産リアクターを高い細胞密度で立ち上げ、立ち上がりにかかる時間を縮める狙いで採り入れられます。連続運転を前提にすると、装置を止めずに動かし続ける保守や無菌性の維持といった、日々の管理項目品質に影響しうる要素を、規格や手順で規定し・実行し・記録し・検証する対象として管理するもの。GMPでは原材料から出荷判定まで多岐にわたります。詳しく →も相応に増えます。

それでも、設備効率という一点で灌流が持つ引力は強く、シングルユース使い捨ての樹脂製バッグや容器を用いる製造方式です。洗浄・滅菌の手間を減らせる一方、ステンレス設備と比べて特徴が異なり、目的に応じて選び分けます。詳しく →市場全体(2030年に約337億ドル規模との予測もある)の拡大と歩調を合わせて、選択肢として定着しつつあります。

※ 本記事は学術・業界メディア細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。および市場調査の公開情報をもとにした解説です。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、抗体医薬に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。