再生医療等製品の条件及び期限付承認、8品目はその後どうなったか

条件及び期限付承認(報道では「条件・期限付き承認」)は、再生医療等製品の効き目を確かめきる前に、期限を付けて販売を認める承認です。認める時点で求めるのは有効性の「推定」までで、期限は7年以内、使い方の条件も付きます。この記事では、承認の要件と期限、これまでに承認を受けた8品目のその後、本承認を分けた比較の相手、アクーゴの出荷制限、条件付きの期間の受託と供給を順に解説します。最後に、計画の段階で決めておく順番をまとめます。
2026年10月15日、厚生労働省の薬事審議会の部会が、ニプロの「ステミラック注」の本承認を了承しました。条件及び期限付承認から本承認へ進む、初めての再生医療等製品です。制度が始まった2014年から、12年かかりました。同じ承認を受けた8品目のうち、テルモの「ハートシート」とアンジェスの「コラテジェン」は本承認に届かず、2024年に販売を終えています。
期限の内側で改めて承認を取れなければ、製品は市場に残れません。この承認は、売ってよいという許可である前に、期限の決まった試験の始まりです。試験の範囲は臨床にとどまりません。サンバイオの「アクーゴ」は、承認から1年4か月、製造の条件を満たすまで出荷できませんでした。8品目の経過は、期限、出荷、量の3点で計画の前提を変えます。日本で細胞・遺伝子治療の製品を計画する開発企業にも、その製造を受けるCDMO医薬品の開発・製造を他社から受託する企業。設備投資を負わずに専門能力を使える。詳しく →や、培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →や資材を納める供給者にも関わる話です。
条件及び期限付承認の要件と期限
再生医療等製品のために作られた承認の形です。
根拠は、医薬品医療機器等法(薬機法)の第23条の26です。要件は3つあります。製品が均質でないこと、効能・効果または性能を持つと推定されること、そして著しく有害な作用のために使う価値がないと推定されるものでないことです。品質がそろいにくいことを前提にした制度で、そろわないこと自体が1つ目の要件に書かれています。厚生労働大臣は薬事審議会の意見を聴き、適正に使うための条件と、7年を超えない期限を付けて承認します。
期限は製品ごとに決まります。中外製薬の「エレビジス」は3年でした。期限は、審査のために特に必要なときに限り3年まで延ばせます。ハートシートは、5年の期限を3年延長しています。
条件の中心は、使った患者全員のデータです。住友ファーマの「アムシェプリ」は、本承認を申請するまでのあいだ、使う全症例を製造販売後調査などで評価することが条件に入っています。使う場所を絞る条件もあります。第一三共の「デリタクト」は、緊急時に対応できる施設で、悪性神経膠腫の治療と脳神経外科の経験を持つ医師が使うと決められました。発売の当初は、治験をした施設にだけ供給されています。
期限の内側で、改めて承認を申請する義務があります(第5項)。申請していれば、期限が来ても処分が出るまで承認は効力を保ちます(第6項)。コラテジェンの期限は2024年3月25日でしたが、本承認の審査中だったので、6月27日に申請を取り下げるまで承認は続きました。
8品目のその後 ― 本承認1、撤退2、期限内5
2024年3月に厚生労働省がこの制度のガイダンスを出した時点で、承認を受けていたのは4品目でした。その後の4品目を足して、2026年10月までに8品目です。
最初の1品目がハートシートです。テルモが患者自身の骨格筋から作る細胞のシートで、重症心不全の心臓に貼ります。2015年9月に承認され、2023年9月7日に本承認を申請しました。2024年7月19日、部会は、設定した達成基準を満たしていないと判断します。安全性に新たな問題は見つかっていません。テルモは販売を終えました(細胞シートが心筋で届かなかった理由)。
ステミラック注は、ニプロが札幌医科大学と共同で開発した、脊髄損傷に使う細胞の製品です。患者の骨髄液から採った間葉系幹細胞を培養して増やし、点滴で体に戻します。2018年12月28日に期限7年で承認され、使った患者と使わなかった患者の情報を比べる使用成績比較調査を進めて、2025年11月14日に本承認を申請しました。その答えが2026年10月15日の了承です。厚生労働大臣の承認は、このあとに出ます。
コラテジェンは、アンジェスのHGF遺伝子を使った国内初の遺伝子治療用製品で、慢性動脈閉塞症による潰瘍の改善に使います。2019年3月26日に期限5年で承認され、2023年5月に本承認を申請しましたが、2024年6月27日に取り下げました。承認は効力を失い、市場にあった製品は回収されています。
残る5品目は、期限の内側にいます。腫瘍溶解性ウイルスがん細胞で選択的に増殖して細胞を破壊するよう設計されたウイルス。強い免疫応答を治療に利用する。のデリタクト(第一三共、悪性神経膠腫)は、2021年6月に期限7年で承認されました。アクーゴ(サンバイオ)も、2024年7月に同じ7年の期限で承認されています。エレビジス(中外製薬、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)は2025年5月に期限3年です。2026年3月6日には、iPS細胞体細胞を初期化して作る多能性幹細胞。同一株から繰り返し分化・製造でき均質性を高めやすい。詳しく →から作った2製品が期限7年で承認されました。住友ファーマのアムシェプリ(パーキンソン病)と、クオリプスの「リハート」(重症心不全)です。次に期限が来るのは、2028年のエレビジスとデリタクトです。

本承認での比較の相手と達成基準
ハートシートとステミラック注には、同じ形の宿題が出ていました。使った患者と、使っていない患者を比べることです。
ハートシートは承認の条件に沿って、全症例の使用成績調査と、移植しなかった心不全患者の臨床研究を進めました。部会は両者の比較から、設定した達成基準に届かないと判断しています。ステミラック注は、承認の条件である使用成績比較調査で、使った人と使わなかった人を比べました。こちらは部会の了承を得ています。同じ宿題で、結果が分かれました。
厚生労働省は2024年3月29日、条件及び期限付承認と、その後の有効性評価計画の立て方をまとめたガイダンス(医薬機審発0329第3号)を出しました。承認を受けるときに、本承認までの評価の計画も一緒に決める、という考え方です。間葉系幹細胞を原料とする製品には、同じ主題の評価指標もあり、できるだけ早い段階でPMDA(医薬品医療機器総合機構)の対面助言を使うよう求めています。2025年10月6日の通知(医薬機審発1006第1号)は、対面助言でよく出る相談をもとに、申請の手続きの扱いを整理したものです。
比べる相手は承認の条件で決まるので、本承認の準備は承認の前から始まっています。
アクーゴの出荷制限
承認条件は、臨床のデータだけを求めるものではありません。アクーゴは、製造の条件のために、承認されても出荷できませんでした。
アクーゴ(一般名:バンデフィテムセル)は、健康な成人の骨髄液から採った間葉系幹細胞を加工して作る製品で、外傷性脳損傷による慢性期の運動まひに使います。サンバイオは2022年3月に申請しました。先駆け審査指定制度の対象で、通常なら申請から6か月ほどで承認に届く枠組みです。実際の承認は2024年7月31日、申請から2年4か月後でした。
遅れの理由は製造にありました。PMDAの審査報告書によると、申請前の事前評価で製品に異物の混入が見つかり、PMDAは混入を防ぐ管理戦略工程を管理された状態に保つための管理の束。工程条件や試験、規格などを組み合わせて設計する。詳しく →を求めていました。製法を変える対策は申請のあとになり、実生産の規模で検証が始まったのは2022年7月です。異物のリスクは下がりましたが、今度は収量の大きな落ち込みが続き、製法をもう一度見直しています。申請時の製法の製品との同等性・同質性の評価を出せたのは、申請から1年9か月後の2023年11月末でした。
審査の中では、市販用の製品と治験に使った製品の同等性・同質性を確かめきれませんでした。そこで承認には、同等性・同質性を評価し、必要な一部変更承認を得るまで出荷しないという条件が付きます。製造は、再生医療のCDMOであるミナリスアドバンストセラピーズ(横浜市)が受けています。凍結した製品は、液体窒素で−150℃以下に保管します。
サンバイオは、市販品を2回ほど作って評価する計画でした。2024年11月、1回目の製造は規格値の1項目で不適合となり、同社は出荷できる時期の見込みを3か月遅らせます。ほかの規格値はすべて適合し、細胞の不均一性からある程度の規格外試験結果が規格の範囲を外れること。原因調査の対象になる。詳しく →品が出ることは想定の範囲内だと説明しました。2回目と3回目は基準に適合しました。2025年6月12日に一部変更承認を申請し、10月16日に部会が了承し、12月9日に承認を発表しています。
2024年の承認時の条件には、本承認の申請までに、作用機序薬が効果を発揮する仕組み。抗体医薬ではADCCやCDCなどが該当し、アッセイで裏づける。詳しく →を反映する生物学的特性の情報を集め、品質管理の戦略を改良することも入っています。効き目を測る力価試験細胞や生体分子に実際に作用させ、医薬品の生物活性(どれだけ効くか)を数値化する試験。詳しく →は、承認のあとも作り込みが続きます(細胞治療の力価試験)。
申請のあとに製法を変えると、変える前の製品で取った臨床のデータと、変えたあとの製品をつなぐ説明が要ります。その評価を承認後に持ち越すと、出荷を待つあいだも7年の期限は進みます。
条件付きの期間の受託と供給
条件付きの期間は、量が少なく、値段も抑えられます。CDMOと供給者の見積もりは、この2つから始まります。
量は、条件そのものが絞ります。アムシェプリは当面、製造販売後臨床試験に協力する医療機関にだけ供給されます。住友ファーマは7施設で18〜65歳の30人に移植したあと、65歳を超える5人へ広げる計画です。2026年5月に中央社会保険医療協議会(中医協)へ示されたピーク時の投与患者数の予測は、アムシェプリが133人、アクーゴが39人でした。アクーゴは治験をした5施設から始め、将来は100施設ほどに広げる考えです。
値段は、上乗せが付きにくい仕組みです。2026年1月14日の中医協で決まった運用では、原価計算方式で値を付けるとき、営業利益率に平均の0.5倍を使います。画期性加算などの有用性系加算は、本承認のときに改めて判断します。アムシェプリの薬価は18瓶1組で5,530万6,737円、アクーゴは1回分で7,271万6,528円で、どちらも原価計算方式でした。
それでも採算は合っていません。住友ファーマの木村徹社長は2026年5月の決算説明会で、「現状のコスト構造からすると明らかに赤字だ」と述べました。ステミラック注も患者数が伸びず赤字が続いていたと報じられ、ニプロは本承認を機に2029年ごろの黒字化をめざしています。受託の側には、少ない量のまま原価を下げる相談が来ると考えられます。
量が少なくても、供給は止められません。サンバイオは2025年1月、適応の拡大と米国での展開を見据え、供給を安定させて製造を複線にするため、JCRファーマとも製造の委受託契約を結びました。
製造の基準は、条件付きでも軽くなりません。製造所は、再生医療等製品の製造管理と品質管理の基準を定めたGCTP再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準。日本で細胞培養加工施設での製造に適用される省令。詳しく →省令(平成26年厚生労働省令第93号)に従い、PMDAが国内と海外の製造所を調べます。培地の添加物のようにヒトや動物に由来する原料は、生物由来原料基準に合わせます。供給者の側は、PMDAの再生医療等製品材料適格性相談を使えます(原材料の適格性評価)。条件付きの期間に原料を替えると、製法の変更として同等性の説明を求められることがあります(変更管理)。
条件付きの製品を受託するなら、少ない量、抑えた値段、変えにくい製法の3つを前提に、契約と原価を組みます。
計画の段階で決めておく順番 ― 比較の設計から契約まで
先に決めるのは、本承認で何と何を比べるかです。条件及び期限付承認を狙うなら、比較の相手と達成基準を、承認の前にPMDAの対面助言で詰めます。ハートシートとステミラック注を分けたのは、この比較の結果でした。
次に、申請の前に市販の製法を固めます。異物、収量、規格の課題を申請のあとに持ち越すと、アクーゴのように出荷の条件が付き、7年の期限が出荷の前から減っていきます。製法を変えるなら、変える前と後の同等性変更前後が完全に同一でなくても、品質・安全性・有効性で高い類似性を保ち差異が悪影響しないと言える状態。詳しく →・同質性を、どの試験で示すかを先に決めます(比較可能性試験(ICH Q5E)、自家細胞治療の同等性評価)。
そのうえで、CDMOとの契約に、評価のための製造の回数と、規格外が出たときの扱いを書き込みます。細胞の製品では、アクーゴの1回目のように1回の不適合を見込んでおくと、日程に無理が出ません。第二の製造所を持つかどうかも、ここで決めます(CDMOとCMOの違い)。
最後に、期限から逆算した日付を契約に入れます。本承認の申請の予定日、供給者に求める変更通知の期間、本承認が得られなかったときの契約の扱いの3つです。受託や供給の相談を受けたら、製造販売業者に聞くべきは「承認はいつ取れたか」ではなく、「期限はいつで、何と比べて本承認を取りにいくのか」です。
参考文献
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第23条の26(条件及び期限付承認)
- 厚生労働省, 再生医療等製品に係る条件及び期限付承認並びにその後の有効性評価計画策定に関するガイダンス(医薬機審発0329第3号、2024年3月29日)(3つの要件、全症例の評価の原則、それまでの承認4品目)
- 厚生労働省, 再生医療等製品の条件及び期限付承認の取扱いについて(医薬機審発1006第1号、2025年10月6日)
- PMDA, ヒト由来の間葉系幹細胞若しくは間葉系間質細胞を原料とするヒト細胞加工製品の条件及び期限付承認並びにその後の有効性評価計画に関する評価指標
- 日経バイオテクONLINE, 条件及び期限付承認から正式承認に至る再生医療等製品が初めて登場、ニプロのステミラックが正式承認へ(2026年10月16日)
- ニプロ, 再生医療等製品「ステミラック注」本承認申請のお知らせ(2025年11月17日)(使用成績比較調査の定義)
- 日本経済新聞, ニプロの再生医療製品、条件付きから初の本承認へ 29年めど黒字化(2026年10月16日)
- MONOist, 再生医療等製品が販売終了、薬事審議会が承認は不適切と判断(2024年8月8日)(ハートシートの比較と達成基準)
- 厚生労働省, 薬事審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会への報告資料(2024年7月。コラテジェン筋注用4mgの承認日、承認期限5年、申請取下げ日)
- AnswersNews, サンバイオの「アクーゴ」審査報告書で明らかになった「異例の承認遅れ」の背景(2024年9月24日)(異物の管理戦略と製法変更、同等性評価製造プロセス変更の前後で原薬・製剤の品質特性が実質的に同等であることをデータにより確認する評価手順。詳しく →の提出時期)
- PMDA, アクーゴ脳内移植用注 審査報告書(2024年)(承認条件。作用機序を反映する生物学的特性の情報収集と品質管理原料・資材・中間体・製品を規格に照らして試験し、使ってよいか、出荷してよいかの合否を決める仕事です。GMPでは製造部門から独立させます。詳しく →戦略の改良)
- AnswersNews, 「アクーゴ」出荷3カ月先送り、1回目製造「不適合」/「レケンビ」欧州で承認勧告、否定的見解から一転 など(製薬業界きょうのニュースまとめ読み、2024年11月15日)
- AnswersNews, サンバイオ「アクーゴ」発売目前、製造・供給への自信アピール…委託先の施設公開(2025年6月23日)(受託製造製造をCDMOやCMOなど外部の製造所へ委託すること。委託しても品質への最終的な責任は委託者に残る。詳しく →先、保管温度、JCRファーマとの契約)
- 薬事日報, 【生物由来技術部会】アクーゴの出荷制限解除‐サンバイオ再生薬一変了承(2025年10月20日)
- AnswersNews, 再生医療等製品「アムシェプリ」「アクーゴ」など20日薬価収載…造影剤「アムベルビスト」など4新薬も(2026年5月13日)(薬価、算定方式、ピーク時の投与患者数)
- 産経新聞(ITmedia NEWS), iPS医療製品、年内にも実用化 アムシェプリ開発の住友ファーマが挑むコスト回収の壁(2026年5月14日)
- 薬事のこと, [2026年1月から]条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品の価格算定(2026年1月15日)(中医協の運用と、エレビジスの期限3年)
- 第一三共, デリタクト注の国内での条件及び期限付承認取得に関するニュースリリース(2021年6月11日)(期限7年、使用する施設と医師の条件)
- 住友ファーマ, アムシェプリの条件及び期限付承認取得に関するご案内(2026年3月6日)(全症例を対象にした承認条件の評価)
- 住友ファーマ, アムシェプリに関するご案内(2026年6月26日)(薬価収載、当面の供給先)
- 日刊薬業, リハートが条件・期限付き承認取得 クオリプス、重症心不全のiPS細胞由来心筋細胞シート(2026年3月6日)
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