固相抽出(SPE)とは?前処理が回収率とばらつきを決める
固相抽出(Solid Phase Extraction:SPE)とは、試料を吸着剤に通し、目的成分を保持させたうえで夾雑物を洗い流し、最後に溶出させる前処理細胞移植の前に患者へ行う処置。生着の場を空けるために既存の骨髄細胞を減らす目的で実施される。の手法です。
分析装置の性能が上がるほど、測定そのものより測る前の工程が結果を左右するようになります。SPEはその代表格にあたります。

- SPEは「保持させて、洗って、出す」の3段階を担体との相互作用で制御する手法です。
- 回収率そのものより、回収率のばらつきが分析法の精度を決めます。
- 流速は事実上の測定条件です。制御されていなければ、条件を振った検討も成立しません。
なぜ前処理が要るのか
生体試料や製剤製剤。原薬を処方・充填して、最終的な投与形態に仕上げた製品。を、そのまま分析装置に入れられることは多くありません。
- 夾雑物が多すぎる。血漿ならタンパク質、製剤なら賦形剤有効成分以外の添加剤。鉱物由来のものは元素不純物の由来として注目される。。カラムを傷め、検出を妨げます
- 濃度が低すぎる。目的成分が定量限界に届かない
- マトリックス効果がある。LC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →では、共存成分がイオン化薬分子が水溶液中で電荷を帯びたイオン型と電荷を持たない非イオン型に分かれる現象で、体内のpH環境によって割合が変化する。を抑制または増強します
SPEは、この三つに同時に効きます。夾雑物を減らし、溶出液量を絞ることで濃縮し、結果としてマトリックス分析対象物が含まれる試料の背景成分(緩衝液・血清・細胞培養液など)の総称で、測定値に影響を与えうる。効果も下がります。
液液抽出との違い
古くからある前処理として液液抽出(LLE結合の強さを分子サイズ(重原子数)や脂溶性で割り引いて評価する効率指標。ヒットを次の最適化へ進めるかの判断に使う。)があります。水層と有機層の間で分配させる方法です。
| 液液抽出(LLE) | 固相抽出(SPE) | |
|---|---|---|
| 分離の原理 | 二相間の分配 | 固相との相互作用 |
| 選択性目的物と不純物を、溶出位置をどれだけ離して分けられるかの度合い。分離の分解能を左右する。の調整 | 溶媒と pH | 担体カラムに充填する多孔質ビーズ。表面のリガンドと成分の相互作用差で目的物と不純物を分離する。の種類、洗浄・溶出条件 |
| 溶媒使用量 | 多い | 少ない |
| 自動化 | しにくい | しやすい |
| エマルション | 生じることがある | 生じない |
SPEは、洗浄と溶出という2つの独立した段階を持つ点で選択性の設計自由度が高くなります。その代わり、段階が増えるぶん条件の数も増えます。
4つの段階
標準的なSPEは、次の順に進みます。
- コンディショニング細胞移植の前に患者へ行う処置。生着の場を空けるために既存の骨髄細胞を減らす目的で実施される。:担体を溶媒で濡らし、官能基が働ける状態にする
- 負荷(ローディング):試料を通し、目的成分を担体に保持させる
- 洗浄:目的成分を保持したまま、夾雑物だけを流す
- 溶出:条件を変えて、目的成分を回収する
三番目が設計の要になります。洗浄を強くすれば夾雑物は減りますが、目的成分も一緒に流れ始めます。純度と回収率添加した既知量の標準物質に対して試験で実際に測定された値の割合を示す指標で、試験の正確さを表す。の取引がここに現れます。
洗浄溶媒の強さを段階的に変え、各画分での目的成分と夾雑物の量を測ります。目的成分が流れ出す直前が、実務上の最適点になります。この検討を省くと、回収率が低いのか洗いすぎなのか判別できません。
担体の選び方
担体は、目的成分との相互作用で選びます。
- 逆相(C18、C8、ポリマー系):疎水性相互作用分子表面の疎水性の差で分けるクロマトグラフィー。。汎用性が高く、最初に検討されます
- イオン交換分子の電荷の違いを利用して分離するクロマトグラフィー。フラグメントなど定型ツールが効かない分子でも使える。(強/弱、陽/陰):荷電状態を利用。pHで保持と溶出を切り替えられます
- 混合モード:疎水性分子が水と親和せず、油脂や非極性溶媒と相互作用しやすい性質で、二本鎖RNAと一本鎖RNAではその程度が異なり分離の指標となる。とイオン交換を併せ持つ。洗浄を強くできるため、夾雑物の除去に優れます
- 分子鋳型(MIP):特定の分子を認識する。選択性は高いが用途が限られます
精製用レジンの選択と考え方は同じですが、SPEでは一度きりの使い捨て使い捨ての樹脂製バッグや容器を用いる製造方式です。洗浄・滅菌の手間を減らせる一方、ステンレス設備と比べて特徴が異なり、目的に応じて選び分けます。詳しく →である点が違います。再生や寿命の管理は不要な代わりに、ロット差が結果に直接効きます。
流速は測定条件である
見落とされやすいのが流速です。
固相抽出では、試料が担体と接している時間が保持の程度を決めます。速く通せば吸着しきらず、遅すぎれば拡散で帯が広がります。接触時間が回収率を決めるという関係があります。
真空マニホールドで複数検体を同時処理する構成には、ここに弱点があります。
- 穴ごとにカートリッジペン型インジェクターなどに装填する円筒容器。複数回投与や特定デバイスとの組合せで選ばれる。の充填処方済みの溶液をバイアルやシリンジなどの容器へ無菌的に充填し、封止する製造工程。状態や試料の粘度液体の流れにくさを表す物理的性質で、タンパク質濃度の上昇に伴い非線形に増大する。が違い、同じ減圧をかけても流速が揃わない
- 液面が下がるにつれて条件が変わる
- 乾いたかどうかの判断が目視になる
つまり、検体ごとに違う条件で前処理している状態が生じます。近年、外部の真空源を使わずに流速を規定する装置が出てきているのは、この変動源を設計で消すためです。
回収率とばらつき
SPEの性能は、しばしば回収率で語られます。しかし実務で効くのは、回収率の絶対値より、そのばらつきです。
- 回収率70%でも、日をまたいで68〜72%に収まっていれば補正できます
- 回収率90%でも、50〜95%で振れていれば補正できません
分析法バリデーションでは、真度と精度を日内・日間で示します。前処理の変動は、そのまま精度の項に現れます。
内標準物質を加えれば一部は補正できますが、内標準が目的成分と同じ挙動を示す範囲でしか働きません。条件が大きく振れる領域では、補正しきれない差が残ります。
頑健性と移管
条件を意図的に振って、どこまで結果が変わらないかを確かめるのが頑健性の検討です。SPEでは、次を振ることになります。
- 試料のpH、イオン強度溶液中のイオンの量の指標。塩を加えると静電的な引力を覆い隠し、粘度を下げられることがある。
- 洗浄溶媒の組成比
- 溶出溶媒の量
- 流速
- カートリッジのロット
最後の2つが厄介です。流速が制御されていなければ、振れ幅そのものを測れません。ロット差は供給者管理と受入試験の枠組みで扱いますが、SPEカートリッジの受入試験を毎ロット行う体制は多くありません。
分析法の施設間移管でも、装置と手技の両方が変わります。移管先で回収率が再現しない原因が、担体なのか流速なのか作業者なのかを切り分けられるようにしておくことが、実務上は重要になります。
自動化へ向かう理由
分注、希釈、抽出——測定の前段は、いずれも「誰がやっても同じになる」ことが後段の精度の前提になります。
装置化の価値は、速度より人が介在する余地を減らすことにあります。アッセイの品質指標がスクリーニングで重視されるのと同じで、分離しにくい変動は実験を始める前に押さえるしかありません。
ただし、装置を入れれば前処理が標準化されるわけではありません。カートリッジのロット差、溶媒の品質、試料の保存状態は残ります。装置で消せる変動と、消せない変動を分けて考えることが、設計の出発点になります。
まとめ
固相抽出は、原理としては単純な操作です。難しいのは、洗浄と溶出の境界をどこに置くか、そしてその条件を毎回同じように実行できるかという点にあります。
分析法の精度が出ないとき、装置や検出条件を先に疑いがちですが、多くの場合、原因は前処理側にあります。回収率の数字だけでなく、そのばらつきがどこから来ているかを追えるようにしておくことが、再現性の確保につながります。
※ 本記事は一般的な技術解説です。具体的な分析法の設定・バリデーションにあたっては、一次情報および所轄当局のガイダンスをご確認ください。
この分野の新着を、メールで受け取る
こうした製造・分析・品質の解説記事と、装置・試薬の新製品ニュースを月数回お届けします。登録は無料で、いつでも解除できます。
登録によりプライバシーポリシーに同意したものとみなします。