半固形製剤(軟膏・クリーム・ゲル)の製造とは?剪断と温度が物性を決める
半固形製剤製剤。原薬を処方・充填して、最終的な投与形態に仕上げた製品。とは、軟膏・クリーム・ゲル・ローションのように、流れるほど柔らかくはないが固体でもない剤形の総称です。皮膚や粘膜に塗って使います。
錠剤や注射剤と比べたときの特徴は、同じ組成でも作り方で別物になるという点にあります。処方箋どおりに混ぜれば同じものができる、とは限りません。

- 半固形製剤の物性は、組成だけでなく剪断履歴と温度履歴で決まります。
- 乳化物の内部構造は非平衡状態であり、作り方が変われば安定性も放出性も変わります。
- ラボと製造機で同じ物性を得るのが難しく、スケールアップが最大の関門になります。
基剤の種類
まず、何をベースにするかで大きく分かれます。
| 種類 | 構成 | 特徴 |
|---|---|---|
| 油脂性軟膏 | ワセリンなどの油性基剤 | 閉塞性が高く保湿的。べたつく。水を含みにくい |
| 水中油型(O/W)クリーム | 水が外相、油が内相 | 伸びがよく、さっぱりする。水で洗い流せる |
| 油中水型(W/O)クリーム | 油が外相、水が内相 | しっとりする。閉塞性がO/Wより高い |
| ゲル | 水性基剤を高分子で増粘 | 油分がなくべたつかない。乾燥しやすい |
どれを選ぶかは、有効成分の溶解性、狙う放出・透過の挙動、患部の状態、患者の使用感で決まります。同じ薬物でも基剤が変われば効き方が変わるため、基剤の選択は処方設計の中心にあります。
乳化:混ざらないものを混ぜておく
クリームは、水と油という本来混ざらないものを共存させています。界面活性剤タンパク質の凝集や容器壁への吸着を防ぐため製剤へ少量加える添加剤で、細胞培養で細胞を保護する目的でも使われます。詳しく →を使って、一方を微細な液滴として他方の中に分散させた状態です。
この状態は熱力学的には不安定です。放っておけば液滴どうしが合一し、やがて2層に分離します。製剤として成立しているのは、分離が進む速度を十分に遅くしているからにすぎません。
分離を遅くする要因は複数あります。
- 液滴が小さい:小さいほど浮上・沈降が遅くなる
- 外相の粘度液体の流れにくさを表す物理的性質で、タンパク質濃度の上昇に伴い非線形に増大する。が高い:液滴が動きにくくなる
- 界面膜が強い:界面活性剤や高分子が液滴表面を覆い、合一を防ぐ
- 静電反発:液滴が同じ電荷を帯びていれば近づきにくい
つまり乳化物の安定性は、どれだけ細かく、どれだけ均一に分散させられたかに大きく依存します。ここが製造条件の話につながります。
剪断履歴と温度履歴
半固形製剤の製造で決定的なのが、この2つです。
剪断(せん断流れの中で分子にかかる物理的な力。強すぎると抗体の凝集や微粒子発生を招く。)は、液滴を引きちぎって細かくする力です。ホモミキサーの回転数、翼の形状、ギャップの狭さ、処理時間——これらが液滴径の分布を決めます。
ただし剪断は強ければよいわけではありません。
- 弱すぎれば液滴が粗く、分離しやすい
- 強すぎれば発熱し、成分が分解しうる。空気を巻き込むこともある
- かけすぎると、いったん形成された構造が壊れる場合もある
温度は2つの意味を持ちます。ひとつは乳化のしやすさ。多くの処方では、油相と水相を加温して混合します。もうひとつが冷却の速度です。
冷却の過程で、ワックスや高級アルコールが結晶化溶液中の目的物質を固体の結晶として析出・単離する精製操作で、不純物の除去にも利用される。し、網目構造を作ります。この構造が製品の硬さと安定性を支えます。冷却が速いか遅いかで、できる結晶の形と大きさが変わるため、同じ組成でも最終的な硬さが変わります。
O/WとW/Oの間で相が入れ替わる転相を利用する処方では、この温度制御がさらに繊細になります。転相を経ると微細で均一な液滴が得られやすい一方、経路が少しずれると狙った構造になりません。
スケールアップが難しい理由
ここまでを踏まえると、なぜスケールアップ小型培養で確立した条件を、より大きなバイオリアクターへ拡大する取り組みです。酸素供給の指標kLaなどを揃え、性能を再現します。詳しく →が難所なのかが見えてきます。
- 剪断は装置固有:ラボのホモジナイザー高い圧力で試料を細い隙間に通し、その力で細胞や菌体を壊す装置です。中の目的物を取り出す破砕工程に使います。詳しく →と製造機のミキサーでは、剪断の強さも分布も違います。回転数を合わせても同じにはなりません
- 冷却速度が変わる:容器が大きくなると表面積/体積比が小さくなり、冷えにくくなります。同じ設定でも冷却曲線が変わります
- 混合の均一性:大型容器では場所による温度差・剪断差が生じます
- 時間が延びる:投入や昇温に時間がかかり、その間の熱履歴が加わります
規格試験は通るのに使用感が違う、あるいは放出プロファイルだけが変わる——という形で問題が現れます。含量製品にどれだけの目的物質が含まれるか(含量)や、その生物学的な効き目の強さ(活性)を示す指標です。培養液中の産生量を指す場合もあります。詳しく →や外観だけを見ていると気づけません。
このため技術移転では、組成ではなく工程パラメータをどう対応づけるかが中心の作業になります。剪断の強さを装置間で比較する指標(先端速度、単位体積あたり投入エネルギーなど)を使い、あわせて実測で確認する形が取られます。
レオロジーで物性を捉える
半固形製剤の品質を数値にするには、粘度計やレオメータによる測定が使われます。
半固形製剤の多くは非ニュートン流体であり、単一の「粘度」では表せません。かき混ぜれば柔らかくなり、置いておけば戻る(チキソトロピー)といった性質を持ちます。
測る項目としては、
- せん断速度を変えたときの粘度曲線:塗り広げやすさに関係する
- 降伏応力:チューブから押し出すのに要する力、垂れにくさ
- 貯蔵弾性率・損失弾性率:構造の強さと、固体的か液体的かの度合い
などがあります。これらは使用感に直結すると同時に、内部構造が想定どおりにできているかの指標になります。ロット間で粘度曲線がずれていれば、製造条件のどこかが動いています。
容器と充填
最後に見落とされやすい点です。
- 充填処方済みの溶液をバイアルやシリンジなどの容器へ無菌的に充填し、封止する製造工程。時の剪断:ポンプやノズルを通るときに剪断がかかり、構造が変わりうる
- 容器との相互作用:有効成分や界面活性剤が容器内面に吸着する。チューブの内面樹脂との相性を確認する
- 含気:混合中に巻き込んだ空気が残ると、充填量のばらつきや酸化の原因になる
- 均一性の担保:大きな釜から充填する間に、上下で組成が変わっていないか
半固形製剤は、作った直後の状態が最終品質ではないという点で扱いが独特です。冷却が進み、構造が落ち着くまでに時間がかかるため、製造直後と数日後で物性が違うことがあります。試験のタイミングまで含めて手順に書いておく必要があります。
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