Contract Pharma の報道によれば、バイオ医薬企業のほぼ半数が哺乳類細胞による生産キャパシティの確保に難しさを感じており、細胞・遺伝子治療ではさらに制約がきついという。
新設拠点の発表は続いている。それでも「空いている枠が見つからない」という声が消えないのはなぜか。
発表される能力と、明日使える能力は別物である
工場の建設が発表されてから、実際に他社の製品を受託できるようになるまでには、いくつもの段階がある。
- 建設・据付
- 適格性評価(DQ/IQ/OQ/PQ)
- プロセスバリデーションと当局査察
- 個別案件ごとの技術移転
つまり、発表された能力は数年先の話であり、いま枠を探している開発企業の役には立たない。報じられている逼迫は、この時間差がそのまま表面化したものと読める。
さらに、能力は「リットル」だけでは測れない。同じ2,000Lでも、フェドバッチ専用か灌流に対応しているか、シングルユースか固定設備かで、受けられる案件が変わる。総容量に空きがあっても、条件の合う枠がないという事態は普通に起きる。
細胞・遺伝子治療がより厳しくなる理由
制約が抗体よりきついと報じられているのは、この領域の作り方に理由がある。
- 1バッチが1患者分になりうる:自家細胞治療では、処理数がそのまま治療できる患者数になる。装置の台数と作業者の人数が上限を決める
- 交差汚染を避けるため区画を分ける:ウイルスベクターや遺伝子改変を扱う区画は、他製品と同居させにくい。空いていても使えない区画が生じる
- 工程がまだ標準化されていない:抗体のように「プラットフォーム工程に乗せる」ができず、案件ごとに条件を作り込む。受託側の立ち上げ工数が大きい
- 人が育つのに時間がかかる:無菌操作と細胞培養の両方を高い水準でこなせる要員は、短期間では増やせない
設備を増やしても、この4つのうち後ろ2つは設備投資では解けない。逼迫が長引く理由はここにある。
委託する側が取れる手
枠が取れないという前提で計画を組むなら、打てる手は限られるが存在する。
- 早く押さえる:臨床の結果が出てから枠を探すのでは遅い。予約に費用が伴うとしても、遅延の損失と比べて判断する
- 複数拠点を申請に含める:1拠点が止まっても供給が続く。ただし各拠点でバリデーションが要るため費用は増える
- 工程を移しやすく作る:特定の装置構成に依存しない設計にしておくと、移管先の選択肢が広がる
- 自社で持つか委託するかを再検討する:稼働率を埋められる見込みがあるなら、自社設備が選択肢に戻る
製造コスト(COGS)の議論では単価が中心になりやすい。しかし枠が取れないとき、実際に効いてくるのは「いつ作れるか」のほうである。開発計画の遅れは、単価の差より大きな金額として跳ね返ることがある。
※ 本ページは公開情報(Contract Pharma の報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。調査の実施主体・対象範囲・具体的な数値は一次情報をご確認ください。