細胞・遺伝子治療の製造をロボットで自動化するMultiply Labsは10月6日、シリーズBで7500万ドルを調達したと発表しました。主導したのはパトリック・スン=シオン氏とNantWorksで、AstraZeneca、Lingotto、Teradyne、Strange Venturesが新たに加わりました。Casdin Capital、Lux Capital、Founders Fundなどの既存の投資家も参加しています。2016年の創業からの調達額は1億ドルを超えました。
手作業の置き換え先はロボットの「クラスター」
同社のシステムは、製造の中で繰り返す作業を、ロボットの集まり(クラスター)に任せるものです。細胞治療では、患者1人分ごとに細胞の播種や培地の交換、サンプリングといった手作業を繰り返します。人が行う限り、作業者の数と熟練が製造量の上限を決め、操作のばらつきも品質の振れになります。閉鎖・自動化が進められてきたのは、この2つを抑えるためです。
製薬会社は、このシステムを外部に委託するのではなく、自社の施設に置いて動かします。今回の資金は、製造能力の拡大と製品開発の前倒し、技術・規制・営業の人員の増強に充てます。細胞・遺伝子治療から始めた対象を、抗体やウイルスベクター、mRNAにも広げる方針です。
AstraZenecaとの二重の関係
同社は、ロボット化で1回分あたりの製造コストを74%下げ、手作業の最大100倍の処理量を出せると説明しています。74%は、同社が2025年に査読研究として報告した数字です。AstraZenecaとは2026年1月に、商業規模の細胞治療製造に向けてGMP対応のロボットシステムを評価する協業を始めており、今回は出資者にも加わりました。評価する側が同時にお金も出す形です。
ロボットは製薬会社の工場に置かれるので、コストと処理量の数字は、各社の工場でのバリデーションを通じて確かめられていきます。資金調達そのものが、製造や規制上の成果を示すわけではありません。
細胞治療では、患者1人分ごとに繰り返す手作業が費用を押し上げてきました。今回の調達は、その手作業をロボットに移す動きに、製薬会社自身が出資した例です。
※ 本ページは2026年10月6日のMultiply Labsの発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。