Scintica Instrumentation と Indus Instruments が、前臨床の血行動態評価向けのデータ収集システム 「PulSAR MD」 を投入した。発表によれば、内容は次のとおりである。
- Mモードに加え、カラードプラ、ドプラ・スペクトログラム、全自動解析を一体化した
- 血流速度、血管の硬さの指標、拍動指数(pulsatility index)、抵抗指数(resistivity index)を含む血管動態のパラメータを自動算出する
- 動脈・静脈・心機能の各指標に対応する解析アルゴリズムを備える
- 心電図・血圧・呼吸などの生理信号をリアルタイムに取り込む
- 長年使われてきた同社らのドプラ血流速度計測システム(DFVS)の後継にあたる
前臨床で使う測定装置の話だが、「測るのは誰か」という問題を製品側で引き取ろうとしている点に、この分野の変化が出ている。
手技依存の測定は、そのままばらつきになる
小動物の超音波計測は、実験動物の姿勢、プローブの当て方、角度、呼吸のタイミングで値が動く。測定者が変われば値も変わる、という性質を持つ。
これは疾患モデル動物を使う評価全般に付いて回る問題である。
- 群間差を見たいのに、測定者差のほうが大きいことが起こる
- 期間をまたぐ試験では、担当者の交代がそのまま系統誤差になる
- 施設が複数になると、施設間の差を評価から切り分けられない
自動解析を装置側に持たせるのは、この読み取りの自由度を減らすための設計といえる。取得した波形から誰が計算しても同じ値が出るなら、少なくとも解析段階の差は消える。
拍動指数・抵抗指数が「自動」で出ることの意味
拍動指数と抵抗指数は、いずれもドプラ波形から計算する指標である。収縮期・拡張期の速度をどこで読むかで値が変わるため、波形上の点をどう取るかが実質的な測定条件になる。
これを手で取る運用では、次のような問題が起きる。
- 波形の質が悪いサイクルを、採用するか捨てるかの判断が人に委ねられる
- 平均を取るサイクル数が揃わない
- 結果として、検出限界・定量限界に相当する「どこまでの差を見分けられるか」が定義できない
自動化はこれを解決するわけではないが、規則を明示して固定することはできる。装置が採用した規則が妥当かどうかは別途評価が要るとしても、少なくとも同じ規則が全データに適用される。
生理信号を同時に取ることが効く場面
心電図・血圧・呼吸をリアルタイムで取り込む構成は、測定値を解釈するための文脈を同時に記録するという意味を持つ。
小動物の測定では、麻酔深度が循環動態を大きく動かす。心拍数が違えば、同じ血管でも速度波形は変わる。
- 麻酔条件が群間で揃っていたか
- 測定時点の心拍・呼吸が想定範囲内だったか
- 外れ値が、薬効ではなく生理状態の変動で説明できるか
これらを後から確認できる形で残すかどうかは、安全性薬理の中核試験や心血管系の評価で結果を読む際の前提になる。データそのものより、データが取られた条件の記録が効くという構図は、製造側の工程内管理と同じ形をしている。
装置を入れ替えるときに問われること
既存システムの後継という位置づけは、導入する側にとっては過去のデータとの接続が論点になることを意味する。
- 新旧で同じ検体を測ったときに、値が一致するか
- 一致しない場合、その差は系統的か(換算できるか)、それとも予測できないか
- 過去に取得した基準値を、そのまま使えるか
これは分析法を切り替えるときの同等性の議論と同じ構造である。前臨床試験はGLPの枠組みで動くことが多く、GLP・GMP・GCPの区別のうちGLPでは、装置の適格性評価と手順の妥当性確認が求められる。
自動解析が入ることで、検証と妥当性確認の区別も改めて論点になる。装置の演算が仕様どおり動くことの確認と、その演算結果が目的に照らして意味を持つことの確認は、別の作業だからである。
動物実験の代替法の議論が進む一方で、循環動態のように生体全体の応答を見る評価は当面残る。そこでの測定を、人の手技から装置側へ寄せる動きの一例といえる。
※ 本ページは公開情報(News-Medical の記事および両社の発表)をもとにしたProglenth編集部による整理です。仕様・対応機能・適用範囲の詳細は一次情報および両社の公式発表をご確認ください。本文中の解説は前臨床の測定一般の構造に関する説明であり、同製品の具体的な性能や検証内容を示すものではありません。