無菌製造基礎知識・品質管理

フィルター完全性試験とは?バブルポイント・拡散流とPUPSIT

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選び方ガイド無菌ろ過フィルターの選び方——候補カテゴリ・選ぶ理由・メーカーと製品
フィルター完全性試験とは?バブルポイント・拡散流とPUPSIT
この記事の要点
  • フィルター完全性試験は、無菌ろ過フィルターが健全かを非破壊で確かめ、その値は細菌保持性と相関します。
  • バブルポイントは最大細孔径に対応して局所欠陥に敏感、拡散流は規定圧での気体透過量を測ります。
  • PUPSITは滅菌後・使用前の完全性試験で、EU GMP Annex 1が求めています。

フィルター完全性試験とは何か

ろ過が終わった後、フィルターが本当に健全だったかどうかを確かめる手段はあるか——無菌製剤を製造する現場では、これが切実な問いになります。ろ液の無菌性を一本ずつ直接証明することはできない。だからこそ、「使ったフィルターに欠陥がなかった」ことを物理的に示す必要があります。それがフィルター完全性試験(integrity testろ過フィルターに欠陥や損傷がなく、設計どおりの細菌保持性を保っているかを確認する試験。)です。⁠無菌ろ過に使うフィルターが、破れやピンホールなどの欠陥なく健全(インテグリティ分子が分解・途切れなく全長で揃っている度合いで、mRNAでは翻訳効率を左右する一次CQA。が保たれている)であることを、非破壊で確かめる試験であり、無菌ろ過という決め手の工程における無菌保証の裏づけとなります。

この試験が意味を持つのは、試験値が細菌保持性フィルターが規定の細菌を高濃度で負荷されてもろ液側に通さない能力のこと。と相関しているからです。フィルターのバリデーションでは、規定菌(Brevundimonas diminuta除菌ろ過の指標菌。規定量を負荷して完全に除去できることで除菌グレードが定義される。)を高濃度で負荷し、「通さない」ことを実証します。完全性試験除菌フィルターに欠陥がなく所定の孔径を保っているかを確認する試験。無菌ろ過の信頼性を裏づける。はその細菌保持性に対応する物理的なしきい値(規格値)を測定することで、間接的に「このフィルターなら細菌を止められる」ことを担保する——相関があって初めて、この間接証明が成り立ちます。

POINT

完全性試験は「フィルターが健全か」を測る非破壊の物理試験。その値は、細菌チャレンジで実証した保持性に紐づいています。だから規格を外れた完全性値は、そのまま「無菌保証が崩れうる」というサインになります。

代表的な試験方法

親水性の無菌ろ過微細な孔のフィルターに液を通し、菌などの微生物を取り除く工程です。加熱できない製品を無菌にする手段で、0.22µm前後の膜が広く使われます。詳しく →フィルター(水系をろ過するもの)では、まず膜を液で濡らし、そこに気体の圧力をかけて、その挙動を見ます。

バブルポイント試験

膜を液で完全に濡らすと、細孔は液で満たされ、表面張力で保持された状態になります。ここに気体の圧力を少しずつ上げていくと、⁠最も大きな細孔の液がまず押し出され、気体が一気に流れ出す圧力に達します。この圧力がバブルポイント湿った膜の孔から気体が押し出され始める圧力。完全性試験で孔径や欠陥の有無を測る指標になる。です。

  • バブルポイントは膜の最大細孔径フィルター膜に存在する細孔の公称上の大きさを示す値で、保持できる粒子・微生物の最小サイズの目安となる指標(ただし実際の保持性能はバクテリアチャレンジ試験で実証される)。と対応します。規格より低いバブルポイント=どこかに大きな孔や欠陥がある、というサインです。
  • 「最大の孔」に着目するため、局所的な欠陥に敏感なのが特長です。

拡散流(フォワードフロー)試験

バブルポイントより低い圧力でも、気体はわずかに膜を透過します。濡れた膜に溶け込んだ気体が反対側へ拡散するためで、この気体流量を規定圧力で測るのが拡散流(フォワードフロー)試験です。

  • 規格より大きい拡散流=膜のどこかで気体が通りやすくなっている(欠陥)、と判断します。
  • 膜面積の大きいフィルターやシングルユースのセットアップでは、より低い試験圧で済む拡散流試験一定圧力下で膜を透過する気体の流量を測り、膜全体の健全性を確認する完全性試験。が好まれます。

このほか、上流側の圧力低下を時間で追う圧力保持(プレッシャーホールド)試験は拡散流の考え方の派生です。疎水性分子が水と親和せず、油脂や非極性溶媒と相互作用しやすい性質で、二本鎖RNAと一本鎖RNAではその程度が異なり分離の指標となる。のベント(ガス)フィルターには、水の浸入を見る水侵入試験疎水性フィルターに所定の圧力をかけた水を接触させ、フィルター内部への水の侵入有無または侵入圧力を測定してフィルターの完全性を評価する試験法。WIT疎水性フィルターに所定の圧力をかけた水を接触させ、フィルター内部への水の侵入有無または侵入圧力を測定してフィルターの完全性を評価する試験法。)⁠が使われます。どの方式を選ぶかは、フィルター選定の考え方や機器仕様に沿って決めます。

使用前と使用後:PUPSITとは

完全性試験は、⁠使用後(ろ過が終わった後)⁠に行うのが基本です。ろ過の途中でフィルターが損傷していなかったことを確認するためです。ただ、使用後だけでは見逃せないリスクがある——その問題意識から生まれたのがPUPSIT除菌フィルターを使用する前、滅菌後にろ過膜の完全性を確認する試験。無菌性を担保する管理。です。

PUPSIT(Pre-Use Post-Sterilization Integrity Test:使用前・滅菌後の完全性試験)は、⁠フィルターを滅菌した後、製品をろ過する前に完全性を確認する試験です。滅菌(例:インラインの蒸気滅菌)の過程で生じた微小な欠陥が、製品のろ過中に目詰まり(ファウリング細胞や破片、製品成分が膜面や細孔に溜まって透過抵抗が上がる現象。回収率低下を招く。)などで塞がれると、使用後試験では見逃されるおそれがあります。「使用中に欠陥が覆い隠される」というリスクに備えることが、PUPSITの狙いです。

EU GMP欧州の医薬品製造・品質管理の基準。第1章の品質システムのなかでPQRの実施を求めている。Annex 1(無菌医薬品の製造)は、2022年の改訂(2023年発効)でPUPSITを求めています(該当条項は8.87項)。ただし、リスク評価工程や製品に潜在するリスクの種類・発生可能性・影響度を系統的に特定・分析し、優先的に管理すべき項目を決定する手続き。に基づく正当化があれば代替も議論されており、実装の負担と便益をめぐる論点は続いています。どちらの試験においても、⁠その値が細菌保持性と相関することがバリデーション試験法が目的に合う性能を持つことを立証する妥当性確認。正確さ・精度などを評価する。で示されていることが大前提です。

まとめ

  • フィルター完全性試験ろ過フィルターに欠陥や損傷がなく、設計どおりの細菌保持性を保っているかを確認する試験。=無菌ろ過フィルターが健全かを非破壊で確かめる試験。値は細菌保持性と相関する。
  • バブルポイントは最大細孔径に対応(局所欠陥に敏感)、拡散流は規定圧での気体透過量を測る(大面積・単回使用向き)。
  • PUPSITは滅菌後・使用前の完全性試験。使用中に欠陥が覆い隠されるリスクに備え、EU GMP Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。が求めている。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、無菌製造に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。