抗体医薬基礎知識・製造工程

無菌ろ過と除菌ろ過の違いとは?0.2µmでも役割が違う理由

除菌フィルター(0.2µm)#無菌ろ過#除菌ろ過#sterilizing filtration#bioburden reduction
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無菌ろ過と除菌ろ過の違いとは?0.2µmでも役割が違う理由

まず結論:目的が違う(無菌化 vs 量を下げる)

どちらも微生物を対象にしたろ過ですが、⁠目的が根本的に違います⁠。

  • 無菌ろ過微細な孔のフィルターに液を通し、菌などの微生物を取り除く工程です。加熱できない製品を無菌にする手段で、0.22µm前後の膜が広く使われます。詳しく →(sterilizing-grade filtration)⁠=細菌を除いて無菌のろ液を得ることが目的。最終製剤製剤。原薬を処方・充填して、最終的な投与形態に仕上げた製品。を無菌にする決め手の工程で、細菌を確実に止められることを実証(バリデート)したフィルターを使います。
  • 除菌ろ過孔径・材質・膜面積などを目的(除菌・清澄化・濃縮など)に合わせて選ぶ、フィルター選定の考え方をまとめたものです。詳しく →(bioburden reduction filtration)⁠=無菌化ではなく、⁠微生物の量(バイオバーデン工程中に存在する微生物の量。長時間の連続運転では管理の時間軸がバッチより長くなる。)を下げることが目的。多くは無菌ろ過の前段に置き、下流の負担を減らします。

同じ孔径フィルター膜に存在する細孔の公称上の大きさを示す値で、保持できる粒子・微生物の最小サイズの目安となる指標(ただし実際の保持性能はバクテリアチャレンジ試験で実証される)。(例:0.2µm)のフィルターでも、「無菌のろ液を保証する役割」なのか「量を減らすだけの役割」なのかで、位置づけと求められる実証が変わります。

POINT

無菌ろ過は「ろ液が無菌であることを保証する最終関門」。除菌ろ過は「その前に量を減らしておく準備運転」。孔径が同じでも、無菌を保証する側には細菌保持性の実証が要る——ここが決定的な違いです。

何が違うのか

無菌ろ過除菌ろ過
目的無菌のろ液を得る(無菌化)微生物量(バイオバーデン)を下げる
位置づけ無菌操作外部から微生物を入れずに工程を進める操作。最終滅菌できない細胞治療では全工程で無菌性を維持する。最終ろ過充填直前に薬液を除菌グレードの膜でろ過する工程。高粘度では圧力で押し切れず流れが遅くなる。前段・工程内の負荷低減
求められる実証細菌保持性のバリデーション試験法が目的に合う性能を持つことを立証する妥当性確認。正確さ・精度などを評価する。無菌化の保証は不要
位置充填処方済みの溶液をバイアルやシリンジなどの容器へ無菌的に充填し、封止する製造工程。直前など下流上流・中間

無菌ろ過フィルターは、規定の細菌を高濃度で負荷してもろ液側に通さないことを、バクテリアチャレンジ試験規定の試験菌を高濃度でフィルターに負荷し、細菌保持性を実証するための試験。で実証したものを使います。これに対し除菌ろ過は、あくまで量を下げるための工程で、無菌を保証するものではありません。だから、除菌ろ過を通したからといって「無菌になった」とは言えません。

なぜ2段階にするのか

無菌ろ過の前に除菌ろ過(や前段のろ過)を置くのは、⁠最終の無菌ろ過フィルターに届く前に微生物量を下げておくためです。前段でバイオバーデンを下げておけば、最終フィルターへの負荷が減り、目詰まり微粒子や凝集体、タンパク層が膜の孔を塞いでろ過が落ちる現象。プレフィルターでの前段保護が効く。破過フィルターの保持能力の限界を超え、除去対象の微生物や粒子がろ液側に通り抜けてしまう現象。のリスクを抑えられます。無菌操作では、無菌ろ過の直前のバイオバーデンを低く保つことが安全性の前提になるため、前段の除菌ろ過が効いてきます。

なお、フィルターによる微生物の除去と、ウイルスろ過(もっと小さいウイルスを対象にする別工程)は目的も孔径も別物です。どのフィルターを何のために使うかはフィルター選定の考え方も参照してください。

無菌操作の中での位置づけ

無菌ろ過は、無菌操作(aseptic processing外部から微生物を入れずに工程を進める操作。最終滅菌できない細胞治療では全工程で無菌性を維持する。)で製品を無菌にする決め手の一つです。FDAの無菌操作ガイダンスなどでも、無菌ろ過工程とその管理(フィルターの完全性試験=インテグリティテストろ過フィルターに欠陥や損傷がなく、設計どおりの細菌保持性を保っているかを確認する試験。、前段のバイオバーデン管理など)が重視されます。「無菌にする関門」と「量を減らす準備」を区別して設計することが、無菌保証の出発点になります。

まとめ

  • 無菌ろ過=無菌のろ液を得る最終関門。細菌保持性フィルターが規定の細菌を高濃度で負荷されてもろ液側に通さない能力のこと。を実証したフィルターを使う。
  • 除菌ろ過=微生物量を下げる前段の工程。無菌化は保証しない。
  • 孔径が同じでも役割が違う。前段で量を下げ、最終の無菌ろ過で無菌を保証する二段構え。

参考文献

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編集メモ:この記事はProglenth編集部が、抗体医薬に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。