核酸医薬応用・分析

残存プラスミドDNAをエキソヌクレアーゼで消す方法

残存プラスミドDNAをエキソヌクレアーゼで消す方法
この記事の要点
  • mRNAや環状DNAの製造では、鋳型に使った直鎖化プラスミドや線状DNAの残りが不純物になります。
  • エキソヌクレアーゼは開いた末端から削るため、開放端の直鎖DNAだけを選択的に分解します。
  • Plasmid-Safeなどは閉環状・環状DNAを残し、鋳型を上流で減らしておく一手になります。

なぜ「線状DNAだけ消したい」場面があるのか

IVT反応が終わった後も、鋳型に使った直鎖化プラスミド環状プラスミドを制限酵素で1か所切断して線状にしたDNAで、主にmRNA合成のための転写鋳型として使用される。は反応液に残り続けます。mRNAや環状DNAの製造で目的物のとなりに現れる開いた末端をもつ直鎖状DNAの残り⁠——これが厄介な不純物です。代表例が、mRNAのIVTで鋳型に使った直鎖化プラスミドの残存分。転写が終わればDNA鋳型は不要ですが、残ると残存DNAとして管理対象になり、さらに余計な転写鋳型として二本鎖RNA(dsRNA)の副生を増やす一因にもなります。

そこで浮かぶのが、⁠目的物は残しつつ、開放端のある直鎖DNAだけを狙って分解するという発想です。これを担うのが、末端から削るタイプの酵素——エキソヌクレアーゼDNAを端から削る分解酵素。閉端DNAは耐性を持つため、開放端の不純物を選択的に除くのに使える。です。

POINT

エキソヌクレアーゼは開いた末端から削るため、「端があるかどうか」で効き方が変わります。開放端の直鎖DNAは分解され、両端が閉じた閉端DNAや、端の無い環状(スーパーコイル)DNAは残る——この選択性こそが精製の手がかりです。

Plasmid-Safe ATP依存性DNaseの選択性

代表的な酵素が、Plasmid-Safe ATP依存性DNaseATPをエネルギー源または補因子として利用し、DNAを分解するヌクレアーゼ酵素。(LGC/Lucigen)です。メーカーの製品情報によれば、この酵素はATP存在下で直鎖状の二本鎖DNAをヌクレオチド核酸を構成する単量体単位で、塩基・糖・リン酸から成り、DNAやRNAの最小構成要素。まで分解する一方、閉環状(ニックDNA鎖に入った切れ目で、多いと不完全な転写産物を生みやすい。入り・スーパーコイルを含む)二本鎖DNAには作用しないとされています。もともとはプラスミド大腸菌の中で複製・増幅させる環状DNA。核酸医薬やベクター製造の伝統的な出発材料。調製液から混入した染色体(直鎖状)DNAを除く用途で使われてきた酵素ですが、その選択性目的物と不純物を、溶出位置をどれだけ離して分けられるかの度合い。分離の分解能を左右する。はmRNA製造にも有効です。

IVT後に残った開放端の直鎖化プラスミド鋳型を選択的に消し、目的のmRNAや環状のバックボーンには手を付けない——この性質は、mRNA製造にもそのまま応用できます。上流でどれだけ鋳型を減らしておけるかが、下流の品質管理遺伝子治療製品の品質・安全性・有効性を保証するために製造・出荷の各段階で実施する試験・管理の総体。の負荷を左右します。

ほかのエキソヌクレアーゼ

線状DNAの選択的除去には、Plasmid-Safe以外の末端依存性ヌクレアーゼ核酸を分解する酵素です。製造では培養由来の残存DNA/RNAを分解・除去して製品の純度を高める目的で使い、ベンゾナーゼが代表例です。詳しく →も選択肢に入ります。

酵素主な基質特徴
Plasmid-Safe ATP依存性DNase試験管内転写(IVT)でmRNAを合成するために使う酵素や試薬類です。T7 RNAポリメラーゼやNTP、鋳型を分解するDNaseなどが含まれます。詳しく →開放端の直鎖dsDNAATP依存、閉環状dsDNAは残す
exonuclease V大腸菌由来の複合型エキソヌクレアーゼで、直鎖状DNAの末端から強力に分解を進める酵素。RecBCD大腸菌由来の複合型エキソヌクレアーゼで、直鎖状DNAの末端から強力に分解を進める酵素。直鎖dsDNA・ssDNA二重らせん構造をとらず一本の鎖で存在するDNAで、AAVベクターのゲノムはこの形態でカプシド内に封入されている。環状DNAは基本的に分解しない
exonuclease III大腸菌由来のExonuclease IIIは、二本鎖DNAの平滑末端または3'陥入(3'recessed)末端から3'→5'方向に一本鎖を段階的に除去するエキソヌクレアーゼである(3'突出末端には作用しにくい)。開放端の直鎖dsDNA平滑・陥入末端の3'側から削る

いずれも共通するのは「⁠開いた末端を分解の入口にする⁠」点です。裏を返せば、両端が閉じた閉端直鎖状DNA(doggybone/ceDNA)は、この処理を通しても分解されにくい。その耐性を逆手に取り、不純物だけを消す設計もとられます。

mRNA製造での位置づけ

mRNA原薬では、鋳型DNAmRNA製造などで生じる二本鎖RNA(dsRNA)や鋳型DNAなど、製造工程に由来する不純物の残存量を調べる試験です。詳しく →の残りは最終的にオリゴdTアフィニティー精製DNase処理残った鋳型DNAを分解酵素DNaseで除く工程。IVT後のmRNAから不要なDNAを取り除くために行います。などで管理します。エキソヌクレアーゼによる直鎖DNAの選択分解は、これらと組み合わせて上流で鋳型を減らしておくための一手です。一方、こうして加えたエキソヌクレアーゼ自体も除去すべき工程由来不純物であり、その残存量の管理は残存ヌクレアーゼのELISA定量と共通の考え方になります。鋳型プラスミドの精製・処理がIVT反応での二本鎖RNAIVTの副生成物などで生じるRNAで、自然免疫を強く刺激するため低減と定量が求められる。生成を抑えるという報告もあり、鋳型側の管理が下流の品質に波及することが示されています。

エキソヌクレアーゼ処理DNAを分解する酵素で残存DNAを短く切る処理。断片サイズを下げて理論的リスクを減らす。はあくまで「開放端の直鎖DNA」に効く手段で、閉環状DNAニックや切断のない共有結合による閉じた環状DNA分子で、スーパーコイルや弛緩型を含む。や目的RNAには効きません。何を消したいのか——直鎖の鋳型か、環状のバックボーンか——を見極めて手段を選ぶことが、この処理を生かす前提です。

参考文献

Newsletter

この分野の新着を、メールで受け取る

こうした製造・分析・品質の解説記事と、装置・試薬の新製品ニュースを月数回お届けします。登録は無料で、いつでも解除できます。

登録によりプライバシーポリシーに同意したものとみなします。

次に読む

目次・関連閉じる
編集メモ:この記事はProglenth編集部が、核酸医薬に関する基礎的な情報を、はじめての方にも分かるように整理したものです。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なります。本記事は一般的な解説であり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断される際は、各極の薬局方・ガイドライン(ICH/GMP等)やメーカーの一次情報を必ずご確認ください。内容に誤りやご指摘があればお問い合わせからお知らせください。