Manufacturing Chemist の報道によれば、Enzene が工場モデル 「NeX」を発表した。同社の連続生産プラットフォーム EnzeneX の上に構築されたもので、従来型のフェドバッチ工場が 3〜4億ドル規模になるのに対し、6,000万〜8,000万ドルでの工場立ち上げを狙う。各国政府や製薬企業に対し、3年未満で商用対応可能なバイオ生産能力を提供するとしている。
建設費が下がる理屈
連続生産で設備投資が下がる根拠は、同じ生産量をより小さい設備で作れるという点にある。
フェドバッチでは、培養を一定期間回して一度に収穫する。生産量は槽の容量に比例するため、量を増やすには槽を大きくするのが基本になる。2,000L、1万L——容器が大きくなれば、建屋も、ユーティリティも、それを支える構造もまとめて大きくなる。
灌流(パーフュージョン)を軸にした連続生産では、細胞を保持したまま培地を入れ替え続ける。細胞密度を高く保てるため、小さい槽で長期間回すことで総生産量を稼げる。連続化・強化(intensification)が設備投資の議論と結びつくのはこのためである。
下流も変わる。バッチごとに大量を一度に処理する設計ではなく、少量を継続的に処理する設計になれば、クロマトグラフィーのカラム径も、タンクの容量も小さくできる。
建設費と製造原価は別の話
一方で、設備投資が下がることと、1グラムあたりの製造原価が下がることは同じではない。
バイオ医薬の製造コスト(COGS)の内訳では、償却費のほかに培地・バッファー・レジンといった消耗品費と人件費が大きな比重を占める。連続生産では培地の消費量が増える傾向があり、稼働を長く続ける分の運転管理の負荷も加わる。
- 効く方向:設備の小型化、建屋面積の縮小、償却費の低下
- 効かない、あるいは逆に働く方向:培地の総使用量、長期運転中の汚染リスク管理、工程内監視の作り込み
したがって評価の際に見るべきは、建設費の数字と、想定している年産量・稼働率がセットで示されているかになる。
「3年未満で立ち上がる」ことの含意
金額と並んで示されている3年未満という期間も、実務的には重い。
新設のバイオ工場は、設計・建設・据付・適格性評価・プロセスバリデーション・査察という段階を踏む。期間が短いということは、標準化された設計を持ち、適格性評価の枠組みまで含めてパッケージ化されていることを示唆する。
供給の安全保障を理由に自国内の生産能力を求める動きが各地で出ている中で、小さく早く立ち上げられる形への需要は理解しやすい。実際に何がどこまで含まれるのかは、個別の条件次第になる。
※ 本ページは公開情報(Manufacturing Chemist の報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。金額・期間の前提条件、対応するモダリティや生産規模の詳細は一次情報および同社の公式発表をご確認ください。