米国のITサービス企業Cognizantは8月16日、協和キリンの研究拠点である東京リサーチパークと富士リサーチパークで、研究開発向けのAIプラットフォーム「Benchling」の導入と運用を支援すると発表しました。Benchlingと組み、基盤の設定から稼働後の保守までを引き受けます。契約額や導入を終える時期、利用する研究者の数は公表していません。
実験の計画から記録までを1つの環境に
Benchlingは、構造化した実験データの記録、AIモデルの実行、作業の自動化を1か所で扱う研究向けのソフトウェアです。導入後は、協和キリン研究本部の研究者が、実験の計画と実行、データの収集、AIの活用までを単一の環境で進めます。研究室の装置をBenchlingに直接つなぎ、測定値を手入力なしで、検索できる記録として取り込む構成です。分子設計や過去の実験履歴の参照、報告書の作成もこの上で行うと同社は説明しています。
装置のファイルから測定値を書き写す作業をなくす点が、従来の運用との違いです。転記には誤りの余地があり、集計のたびに人手もかかります。抗体の候補を開発しやすさの評価で絞り込む段階では、多数の配列と測定値を突き合わせます。記録が最初から構造化されていれば、この突き合わせを毎回やり直さずに済みます。
協和キリンは世界に3つの研究拠点を持ち、高度な抗体技術や、造血幹細胞を使う遺伝子治療に取り組んでいます。今回の対象は、そのうち国内の2拠点です。
製品と導入支援を1つの契約で
Cognizantは、データ移行、システムの実装、稼働後の保守までを一貫して担います。製品とサービスを1つの契約にまとめることで、協和キリンは大きな設備投資を避け、費用を運用費として管理できるとしています。研究向けのシステムは、装置の追加や試験系の変更に合わせて手を入れ続けるものです。導入後の運用まで同じ相手に任せる形を選んだことがうかがえます。
協和キリンの研究本部長は、研究現場でワークフローの標準化とデータの構造化を進めると述べています(発言は編集部訳)。Benchlingは7月に、抗体の研究開発を発見から候補選定まで扱う「Benchling Biologics」を発表しました。研究段階の記録がそろっていれば、のちにデータインテグリティが問われる開発段階へ結果を渡すときの手戻りも減らせます。
今回の導入の中心は、装置から実験データを自動で取り込み、構造化して残す仕組みです。国内2拠点の記録をそろえられるかどうかが、協和キリンがうたう分子設計やAI活用の前提です。
※ 本ページは2026年8月16日のCognizantの発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。